可愛い妹は俺のアレをくんかくんかしてぐっすりと眠りたいそうです。
「……ああっ、駄目だ!? 森田、急に手を離すんじゃない!!」
千穂ちゃんがわんこの着ぐるみを支えている手が滑り、せっかく中に半分ほど入っていたお兄ちゃんの身体が広瀬部長にむかって倒れ込む。このままでは頭を激しく床にぶつけちゃうよ!?
「うわうわっ!? お兄さんの身体が前に倒れちゃうよぉ!!」
「くっ、まだ間に合うか!!」
広瀬先輩が柔道の受け身のような姿勢を取りながらフローリングの床に横っ飛びする。自分の視界が急にスローモーションのようにゆっくりになるのが感じられた。
……これは走馬灯のようなものなの!?
前にラノベの小説で読んだことがある。自分の死に直結した出来事でなくとも人の脳には自己防衛本能をつかさどる部位があり、強烈なショックを和らげるために目の前の光景をすべて脳に認識させないという働きをするそうだ。まさに今の私はのその
「た、拓也お兄ちゃん……!!」
四十八手の練習のために森田千穂ちゃんが敷いたヨガマットからは外れている固い箇所だ、眠剤を服用して熟睡している拓也お兄ちゃんの身体はまるで糸の切れたマリオネット人形のように脱力している状態だ、人体の中で一番重い頭部が最初に固い床に激突するのは火を見るよりも明らかだ……。
お、お兄ちゃんが死んじゃうよぉ!?
ガタガタッ!!
鈍い音と共に着ぐるみが床に倒れた。六畳間の部屋に残酷ともいえる静寂が流れる。
未祐の位置からでは、一緒にもつれ合いながら床に倒れこんだお兄ちゃんと広瀬部長の姿が、大きなわんこの着ぐるみの胴体部分で陰になってまったく確認できない……。
「きゃああああっ!?」
千穂ちゃんの悲鳴が部屋に響きわたる。
拓也お兄ちゃんと広瀬部長の安否は……!?
「広瀬部長!! 拓也お兄ちゃん!! 嫌だよぉ……。誰も傷つかないで」
この胸にこみ上げてくる形容し難い固まりのような不安に押しつぶされそうになる。良く映画やドラマで大切な人の亡くなる場面で泣き叫ぶヒロインの描写があるが、あれは嘘だと今回のことではっきりと分った。人間は本当に悲しみの淵に身を沈めると泣き叫ぶ気力などまったく残っていないからだ。全身から力が抜け手足がぶらりと垂れ下がった。血の気が引いていくのが自分でも分かる。急に視界が暗転して、私はそのまま固いフローリングの床に力なくへたり込んでしまった……。
「未祐ちゃん!? しっかりして、気を確かに持って!!」
この声は千穂ちゃん? 目の前が真っ暗になって何も見えない。私はショックのあまり精神のバランスが崩れてどこかおかしくなったのだろうか……。
でも不思議なことがあるものだ、どこか懐かしい匂いを嗅いだ気分になった。
あれっ、もしかしてこの匂いは……。
「あああっ!? 未祐ちゃんがお兄ちゃんのぱんつを自分の顔に載せてくんかくんかしているよぉ!! せ、
……えっ、もしかして未祐の目の前が真っ暗なのって!?
自分の顔を覆う布状なモノを手に取った。
「きゃあああああっ、な、何コレぇ!?」
今度は私が悲鳴を上げる番だった……。
わなわなと震える手に握りしめたモノの正体は。
「……た、拓也お兄ちゃんのぱ、ぱんつ」
私はやっと現状を理解した。
可愛いわんこの着ぐるみの胴体の中から、にゅるんとウナギみたいにお兄ちゃんの身体が倒れこんだ衝撃で飛び出してしまったんだ。
なぜなら着ぐるみに入る時のセオリーはあせも防止のために身体にベビーパウダーを塗りこむと千穂ちゃんが教えてくれたことを思い出した。身体の滑りが良いのはそのせいだ。そして中途半端に履いていたボクサータイプのぱんつが何かの拍子で脱げ、そして飛ばされたモノが未祐の顔にホールインワンしたに違いない!!
「ち、違うよ!! 千穂ちゃんはとんでもない誤解をしているんだ、未祐は大好きなお兄ちゃんのおぱんつをくんかくんか嗅いだりしないからぁ!! はっ、大好きな拓也お兄ちゃんのぱ、ぱんつ!?」
ぷしゅううううっ!!
頭の中で水を一杯に入れたやかん……(以下略)
今回ばかりは取り乱しては駄目!!
私は気を取り直して手にしたお
後でしっかりと洗濯をしておこう……♡
次回に続く。
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