かわいい幼馴染に俺はハートを握られてドキドキが止まりそうにありません。
……忘れるはずはない、あの夏の日の俺は本当に彼女のことを心配してしまったんだ。
あれは
家の裏山は俺たちにとって手つかずの秘密基地みたいな物だったな……。
その日も裏山で俺と真奈美、そして妹の未祐でかくれんぼをして遊んでいたんだ。
『真奈美!! すぐ見つかって鬼の役になるんだから、どうせなら最初からお前が鬼の役をやれよ……」
『お兄ちゃん!! どうしていつも真奈美ちゃんにだけそんなひどい意地悪をするの!? 未祐本当にゆるせないんだから……』
いつものように困った表情を浮かべて真奈美は黙って俺と未祐のやり取りを聞いていた。彼女が怒ったり、取り乱したところを見たことがない、そんなところがまた俺に意地悪をする口実を与えてしまったんだ……。
……いつも自分の想いとは裏腹に、真奈美に対してぶっきらぼうな態度を取ってしまったことを俺は大人になってから後悔した。なぜもっと優しく接することができなかったのだろうか?
透き通るような白い肌、ストレートの長い黒髪、当時流行っていたピンクのクマ、ジェイミーちゃんのキャラクターでお馴染みの可愛いワンピースが良く似合っていた。未祐も真奈美の真似っこをして母親にそのブランドの洋服をおねだりしていたな。色違いのクマちゃんのワンピースで揃えて貰った未祐は、初めてお揃いで出歩いたときに近所のおばさんから真奈美と姉妹に間違われたのがとても満足げだった。
俺の真奈美に対する邪険な態度も大人になった今なら説明が付けられる。
思い返せば初恋の女の子に意地悪をするのは少年の
過去にの自分にもしもタイムスリップして逢いに行けるのなら俺はきっとこう告げるだろう。真っ黒に日焼けした何も悩みのないあのころのクソガキだった自分に。
【気が付かないだろうけどお前の顔には真奈美ちゃんが大好きだって書いてあるぞ!!】
『じゃんけん、ぽん、やった!! 今度はお兄ちゃんが鬼の役ね、きっと意地悪した罰が当たったんだ……』
妹の未祐から腹いせの仕返しをされて俺はとても不機嫌だったに違いなかった、。
どうせすぐに真奈美の奴を見つけて鬼の選手交代だ、ほらいつもの茂みの中に隠れているんだろ? あれっ、いないぞ、真奈美のやつ、俺が意地悪したからムキになって念入りに隠れているのか!? そんなの俺様には通用しないぜ、じゃあこっちだろう、俺がカブトムシの住み家と名付けた大きな樹の下だ、いない、もういい加減にしろよ!!
……いくら探しても真奈美の姿はまるで神隠しに遭ったかのように
『お、お兄ちゃん!! どうすればいいの、真奈美ちゃんがいなくなっちゃったよ』
事の重大さに泣きじゃくる未祐を見て、俺はショックで
その
俺が断片的に覚えているのは真奈美がその日の夜半に無事見つかったことと俺がその後でこっぴどく親から叱られただけだ。
そして行方不明になった飼い主の少女を見つけ出してお手柄だったのは可愛いしっぽを誇らしげにピコピコと振りながら見守る真奈美の
*******
「本当に真奈美の賢いパートナーだったよな、ショコラは……」
「……ありがとう、きっと天国にいるショコラもすごく喜んでくれると思うよ。拓也くんと未祐ちゃんみたいに仲良しな兄妹って素敵!! って一人っ子の私はいつも憧れていたんだ、だから男の子のショコラを無意識に家族に選んだのかもね、ワンちゃんだけどとっても素敵な真奈美のお兄ちゃんだったから!!」
「……真奈美、お前はショコラのことをそこまで」
母親が新調してくれた高級な羽布団は軽い上にしっかりと身体を保温してくれる。
だけどそれ以上に俺と真奈美は同じ温かい多幸感に身を包まれていたんだ……。
俺は真奈美の身体を優しく抱きしめた、彼女が大事そうに握っていてくれた、
しっぽのお礼になればとの想いを込めて……。
その後、深い眠りについた俺は夢を見た。
もふもふな毛の感触が俺の頬に触れる、この感触は!? まさかショコラなのか!! 慌てて目を開けると見慣れたトイプードルが俺の枕もとに佇んでいた。
つぶらな瞳、ふわっふわっの黒い体毛、ピンと立った可愛いしっぽ!!
ショコラだ、間違いない!! やっぱり真奈美をずっと天国から見守ってくれているんだ、本当にありがとう……。
俺は感極まってショコラのピコピコ動く尻尾を身体ごと掴んだ!! 次の瞬間。
俺の身にとんでもないことが起こってしまった……。
「さあ、ショコラ、こっちにおいで、俺に頭を撫でさせてくれないか……」
「がるるるぅ!!」
ガブッ!!
「うぎゃあああああ!?」
俺は思わず絶叫してしまった。
ショコラが俺のしっぽにガブリと噛みついたんだ……。
次回に続く!!
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