可愛い女の子たちは俺のアレを握らないと安心して眠れないそうです。

 翌朝、俺が目が覚ますと真奈美の姿はすでにロフトベッドにはなかった。


 昨夜の出来事が夢ではないかと思って、しばらくベッドから出られなかった。


「それにしても最後に見た夢はひどすぎるな、よりによって真奈美の愛犬だった、

 ショコラに噛みつかれるなんて……。 それもをガブリとだ」


『がるるるぅ!!』


 ガブッ!!


『うぎゃあああああ!?』


 鋭い牙で噛みつかれた感触がまだ身体に残っているみたいにリアルな夢だったな……。


 そういえば真奈美に連れられて、この部屋を初めて訪れたときにも俺がショコラに触ろうとすると結構激しく威嚇いかくされたんだよな……。


 荒ぶったショコラが真奈美に良くたしなめられていたことを俺は懐かしく思い出した。


「……ふうっ、俺のアレはどうやら無事だ、あれっ、もしかして真奈美とのやり取りも全部夢だったのか!?」


 俺は羽根布団をめくって自分の相棒の無事を確認した。彼女と昨夜交わしたしっぽの約束まで俺のみた夢なんじゃないかと本気まじで不安になってしまった。


 幼馴染みの二宮真奈美にのみやまなみ、家が隣同士の関係で子供のころから妹の未祐みゆう以外では俺のすぐ近くにいてくれた女の子、中学まではいつも一緒だった……。


 だけど真奈美が俺とは別の名門女子校に進学してから妙な距離が出来ていた。


 真奈美にニギニギしてもらった俺のしっぽ、あれは全部思春期特有の幻で、

 俺の勝手な願望が淫夢化しただけなんじゃないのか!?


「……変なお漏らしはしてないよな!?」


 俺は急に自信が無くなって、自分の寝間着の裾をめくって確認しかけたその時、

 ベッドサイトに置かれたメモ用紙に気が付いた。


「これは真奈美の字だ。あれは夢じゃなかったんだ、ああ、良かったぁ……!!」


 俺は胸を撫で下ろすと同時に、真奈美からのメモに残された幸せの残り香を

 じみじみと噛みしめてしまった。



 ******* 



 拓也くんのさんへ。


 昨日は、わがままなことばかりしてごめんなさい、

 おかげさまでかなり元気になることが出来ました!!


 これからも末永く真奈美のことをよろしくお願いします。


 二宮真奈美


 追伸


 今晩もお部屋にお邪魔してしまうかもしれません……。

 その時は真奈美と夜のお散歩に付き合ってくれますか。



 ******* 



「えっ、今夜もお散歩って!? 真奈美とまた布団の中でするのぉ!?」


 俺は嬉しい反面、もの凄い不安が頭をもたげてきた。可愛いトイプードルの尻尾サイズをいつまで維持出来るのだろうか!?


 ドーベルマンまでは凶悪化しなくても、スタンダードプードルになっちゃったら……。


 よし、気になったときはガーゴイル先生ですぐに検索だ!!


 ロフトベッドから飛び起きて俺はデスクに向かい、ノートパソコンの電源を入れる。


「スタンダードプードル、身体のサイズ、っと……」


 いつもの検索サイトで調べてみる、検索といえば未祐にはひどい目にあわされたな。あいつの所属するアニメ同好会の為に茶番劇につき合わされ、そのあとも勝手に妹フォルダなんて物を、俺のパソコンのデスクトップに作成して貼り付けてやがるし。それを問いただしたら、


【お兄ちゃんの歪んだ性癖を未祐が叩き直すんだ♡】


 とか妙に張り切って言ってたな……。


 未祐が許可するまでクリックしちゃ駄目とか、一体フォルダの中身は何が入ってるんだ!?


「おっ、出た出た!! スタンダードプードル、画像は!? げえっ!! 人間の子供より大きいサイズなのか!! おわっ、俺より顔がデカいかもしれない、し、しっぽはどうなんだ!? な、何だこりゃ、かなり長過ぎんだろ……」


 ドーベルマン刑〇が裸足でハーレーに飛び乗って全開で逃げ出すレベルだ。

 先が太く長いうえにギンギンに反り返っているぅ!!


 ピコピコと動くショコラの可愛いしっぽを想像していた俺が間違いだった。

 う~ん、スタンダードプードル侮りがたし……。


「……拓也おにい、何を一人でブツブツ言ってんの?」


「お、おわっ、未祐っ!? 人の部屋に入るときはノックしろって言ってんだろ!!」


「何をそんなに慌ててんの、風邪を引かなかったのか心配だから見に来て上げたのに……」


「……おう、そうか!? わざわざゴメンな、あ、あっ!! 喉は大丈夫みたいだ」


 昨晩、真奈美がベットに居ることを隠す為に風邪気味のフリをしたんだよな。

 わざと未祐の前でせき払いをして話を合わせてみる。


「それなら良かった、お兄は昔から風邪を引くと長引いて大変なんだから」


 わがままなところもあるけど根は本当に優しいヤツなんだよな、妹の未祐は……。


「未祐、心配してくれてありがとうな……」


「う、うん、それとね、今日はお願いがあって部屋に来たんだ……」


 珍しく未祐がモジモジとしてはっきりしない態度だ、いったいどうしたんだ!?

 他に何か用件があるんだろうか、また変なアフレコとかやらされるんじゃないのか……。


「未祐、もしかしてまた女子高のアニメ同好会の手伝いか?」


 未祐が首を横に振った。


「じゃあ俺のお宝コレクションを自分の部屋にかくまってくれたお礼か、もしかしてお金の工面か!? 金なら自慢じゃないがお兄ちゃんも全然持ってないぞ!!」


 なかば呆れた表情を浮かべ、また首を横に振る未祐。


「じゃあ、いったいお願いって何なんだ!!」


「拓也お兄、いや拓也お兄ちゃん、お願いはそんなことじゃないよ、未祐のお願いはたった一つだけしかないんだ……」


「……み、未祐」


 いつになく真剣な眼差しに俺は未祐の本気を感じた。


「今夜、お兄ちゃんと一緒の布団で寝させて、昔みたいにお兄ちゃんの手を握らせて欲しいんだ……」


 今夜だって!? 真奈美も布団に入ってくる約束をしているじゃないか!!



 次回に続くってばよ!!



 ─────────────────────── 


 ☆★★お礼と作者からのお願い☆★☆


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