第34話 秘密の繋がり
彼女の思う利益とは一体なんであろうか?
デュラディス家にとっての利益か、それとも彼女個人にとっての利益かで変わってくるような気がする。
それにヴィルヘルミーナ嬢が一つ懸念している事はエリアーナの事だろう。特にマヒューズ子爵家は貴族派閥に属する家でデュラディス家といえば一応、王侯派閥に属している。まぁ、旧王家の復権を願う派閥なので、正しく王侯派閥とは言えないが――ま、なんにせよ、特に下位貴族と上位貴族が仲良くするというのは下位貴族の後ろ盾になったと等しい話なのだ。
これによって様々な問題が生まれる可能性がある。いや、確実に問題になるだろう。特に下位貴族は貴族派閥に属する家が多いのだ、それを王侯派閥が切り崩したように見えるのは上位貴族に目を付けられる可能性が高い――まぁ、デュラディス家という触れにくい家に対してと考えると、そこまで大きな問題になるかは分かりかねる部分ではあるが。
結局のところ、私が彼女に提供出来る利益というモノがあるかどうか……と、いう部分においてはなんとも言えない話である。父に確認しなければならないところもあるわけで、独断で決めて良いところでは無い気がする。
そして、私がチラリと姉に視線を向けると、とても良い笑顔で返されて思わず苦笑してしまう。
「さて、お姫様。我が家と仲良くすれば最高の武を手に入れる事が出来ます。ここだけの話をしても良いですか?」
と、姉が悪だくみをしてます。と、いう瞳の色で、とても貴族らしい笑みを浮かべる。我が姉言葉にエヴィリーナ嬢は特に気にした様子が無いのは既に二人の間では話が纏まっている事を示している。まぁ、それはそうだろう。
「――ここだけの話ね」
そう言いながらヴィルヘルミーナ嬢はチラリと自身の姉を見て溜息を吐き「仕方ありませんわね。いいでしょう」と、我が姉に向かってそう言うのだった。
「流石はデュラディス家の至宝。話が早いですわ」
「どうせお姉様と既に話が付いているのでしょう? 瞬撃の乙女」
ヴィルヘルミーナ嬢は可愛らしく頬を膨らませつつそう言った。なんとも本当に可愛らしい姿だ。まぁ、我が家の天使には勝てませんけどね。
「私がリーナやこの自治組織にいる意味もご存じだとは思いますが、我が妹は私にも匹敵する力を持っています。それに貴女が欲する技術を持っているので、十二分な利になると思いますわ」
と、我が姉はとても良い笑顔でそう言った。それ以上にヴィルヘルミーナ嬢が欲する技術というのがとても気になる言葉があったわけだが――まぁ、我が姉が私にとって困るようなことはしないと思うが、各家を巻き込んだ面倒は御免だ。
「どうやら、
「特別な場合のみですよ。貴女に不利益になるような事を
姉と言う存在にそう言われると中々に返答し辛い。ヴィルヘルミーナ嬢も平然とした顔をしているが、口角が微妙に力が入っているように見え、苦々しく思っているだろう。
「――はぁ。で? 瞬撃の乙女の話は本当ですか?」
「さぁ? どうなんですのアンネ?」
なんとも喰えないタイプの方だ。にこやかにすっとぼけて本当に良い笑顔で我が姉に視線を向ける。こちらも良い笑顔でグッと親指を立てる。なんだか、腹立たしい感もあるがここは我慢しておこう。
「因みに、詳しくはここでは話さないのはエリアーナ嬢がいるから。と、言っておくわね」
「……や、やはり私が問題となっているのでしょうか?」
「んー、まぁ、現状エリアーナ嬢が知る事は問題かな。情報が洩れた場合、多くの血が流れる可能性があるから」
と、姉がさらりと言うとエリアーナはあからさまにシュンと俯く。そして、私はヴィルヘルミーナ嬢が欲しているモノや事情が予測出来、思わず溜息を吐いてしまう。そして、全員の視線が私に向くのを感じてからしくじったと心の中で呟いた。
「すいません。他意はありません――色々と考えていた事が繋がっただけなので、気になさらず」
そうは言ったが皆も気になる様子で、それは仕方ない。と、思いつつも本当に思わず出てしまっただけなのだから、見逃して頂きたい。
「私は帰った方が良いようですね……」
シュンとしてしまっているエリアーナが立ち上がるのを私は即座に腕を掴んで止める。
「お待ちなさい。いいのではありませんか、お姉様。私は――彼女には話しておくべきだと思います。それにヴィルヘルミーナ様も知るべきで、協力者は大いに越したことはありません。例え、彼女の家が貴族派閥だとしても――です」
そう言うと、我が姉はあっさりと「そうだね」と、笑顔で答える。ん? これは謀られたか。と、思いつつ私は小さく息を吐く。
「いいのですか? 私なんかが……」
「良いのです。この縁は一生といってもよいくらいのモノにならざる得ません。もし、いまここで貴女を巻き込む選択をしなかった場合、近しい未来に貴女の信頼を失う事になるでしょう。そうすれば、きっと、貴女にとって良くない未来になると私は考えています」
と、私が言うとエリアーナはジワリと涙を零しゆっくりと座り直した。
「では、まず私から話をしましょう」
私はそう言ってにこやかに微笑んだ。
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