第47話 同類
どれくらい歩いただろうか。
目隠しをされ暗闇を数分歩かされた後、扉が開く音。
何処かの部屋に入ったのが分かった。
「――着いたよ」
「……」
目隠しと拘束が解かれ、俺は目を開ける。
……眩しい。
光を目で遮りながら見上げると大きなシャンデリアがぶら下がっていた。
数年前に閉館した廃墟の一室とは思えない、豪華な内装に俺は驚愕する。
まるで礼拝堂や教会とでもいうべき厳かな内装だ。
部屋の中心に敷かれた特徴的な赤いカーペットはその先を指し示すように真っ直ぐ伸びている。
俺はその線を目で追う。そして気付く。
「御子柴……?」
そこには磔になっている御子柴の姿があった。彼女は頭を垂らし、気を失っているようにも見える。
そして、そんな彼女の顔に手を伸ばす謎の人物。
赤いワイシャツに、灰色の髪。
「総長、命令通り連れてきましたよ」
総長と呼ばれた男はこちらを向いた。
だらしなく開かれたシャツの襟元から金色のネックレスが輝いている。
彼の表情には自信が満ち溢れていた。
「護衛の連中は?」
「対応中ですのでご心配なく。万が一が起きたとしてもこの場所には辿り着けないでしょう」
総長と呼ばれた男は手で合図を送る。それを見て俺を拘束していた男は部屋を出ていった。
去り際、
「変な気は起こさない方が良い。死にたくなかったらね」
そんな言葉を残して。
「…………」
総長と呼ばれた男は俺を一瞥した。俺もその視線に答えて睨み返す。
しかし、彼はすぐには言葉を発さなかった。俺を値踏みするように見下ろして、再度磔になっている御子柴へと視線を戻す。
「…………ぅ」
顎を持ち上げられた御子柴から声が漏れる。
「――おい!」
俺の反応は反射だった。
訳の分からない状況ではあるが、動かなければならない状況であることも確かだ。
男は一瞬驚いたような顔をして、こちらに向き直った。
その顔には依然として不遜なる笑みを浮かべている。
「あーごめんごめん。歓迎するよ、"抜け殻"くん」
「……は?」
これまた反射で、呆れたような声が出てしまう。
歓迎という表現は勿論、"抜け殻"という言葉が引っかかる。
「キミもコレに用があってきたんだろ?」
言って、少し強めに御子柴の顎を持ち上げる男。
御子柴の綺麗な顔に傷は無いが、ぐったりとしている様子が見える。
俺は御子柴に用があって此処に来たわけではなかった。
そもそも彼女がこんな所で囚われているなど思いもしなかったのだから。
だが奴の言葉通り俺の探し物は――間違いなく御子柴の中に存在している。
「羅刹。それがキミの探している魂の真名。違う?」
「…………」
「黙秘かい? 別に隠すこと無いじゃないか。ボクらは似た者同士だ」
「似た者同士……?」
「あー。言葉で説明するより見せた方が早い?」
男は右手を掲げた。熱烈な支持に応える政治家のように。
そして、あの言葉を唱えた。
「荒魂装纏・万霊」
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