第22話 報告
転移直後のあたい達の出現ポイントは予定通り、ウェインが嵌った転移罠の場所だったよ。事前の情報通り洞窟型ダンジョン。付近の魔物を倒してみたところやはりかなりの頑丈さを見せたが強さ的には【よろず堂(仮)】の共通ランクに当てはめると二か三の初心者用ランクだったな。
ただゴブリン系統の魔物もただ硬いだけでかなりやっかいになるから、他世界から来た場合は一ランクプラスしてもいいな。
「武器とかは大丈夫でしたか?」
武器? ああ、確かに他の世界の安物だと危なかっただろうが、あたいが持っている装備はどれも【よろず堂(仮)】の物だからな、どれを使っても問題はなかったと思う。ま、今回はいつもの大剣は洞窟内では使い勝手が悪いし、硬さに対応するために久しぶりに大斧を使ったんだが、あれはあれでなかなか爽快だったぜ。
ダンジョン自体は出口を示す魔道具とマッピングの魔道具があったから一日程度で脱出できた。あっさり脱出できたことにウェインが驚いていたが、あたいはもう少し強い魔物と遭遇したかったと言ったら冗談じゃないと慌てていたのがおかしかったね。その後はウェインの村に行くまでに二日、合間に寄った街では持ち込んだポーションがその世界でも適応できそうだったからそれらを売って得た金でいろいろ買い込んでおいた。ダンジョンなんかで手に入れた素材やアイテムなんかとまとめて地下に出して置いたから後で確認しておいてくれ。
「それはありがとうございます」
「もう! そんなことより、ウェインさんのプロポーズはどうなったんですか!」
おいおいそんなにせかすなよ。ウェインの村に着いてからは、まずは一日ゆっくり自宅で休ませて身だしなみを整えさせた。あ、トモ。勘違いしないように言っておくが、あたいは村に宿がなかったから例の拡張型結界テントに泊まったからな。お、おう、そうか、そこまで信用してくれているのはちょっと嬉しいな。
んんっ、で、だな。翌日ウェインとダンジョンフラワーを持って村長の家に行ったんだ。
「「ダンジョンフラワー?」」
ははっ! まあそうなるよな。けどよ、ダンジョン脱出の途中で本来ウェインが見つけようとしていたダンジョンだけに咲く花を見つけちまったんだ。せっかくだってんで、念のため持っていった時間の遅延効果がある植木鉢に植え替えて持って帰ったんだ。ぶっちゃけあの胡蝶蘭はあの世界じゃ価値があり過ぎそうな気がして周囲にばれたらろくでもない結果を招きそうだったからな。それなら、ダンジョンフラワーを渡しても駄目だった時に出せばいい。だろ?
さすがはトモだ。トモならあたいの判断を支持してくれると思ったぜ。え、ダンジョンフラワーか? あれはあれでなかなか綺麗な花だったぜ。どうも陽の光ではなく魔力を糧にするらしくて、茎、葉、花とほとんど全てが白い花でな、花の中央付近だけが淡いピンクに光るんだ。そいつを持って行ったらさすがに村長も結婚を認めざるを得なかった。すぐに許可が出たよ。といっても、根本には当人同士の気持ちがあったんだろうし、正式なプロポーズはその後が本番だったけどな。
「ウェインさんの好きな人はどんな人だったんですか?」
あの娘か……可愛い娘だったよ。なんだかちんまりしてて、小動物みたいな愛嬌があって、でもあの娘の一番の魅力は、ウェインがダンジョンまで花を取りに行っていたと知って泣きながら怒っていたことだな。自分のために危険を冒したウェインを嬉しく思ってはいても真剣に怒りながら、無事に帰ってきてくれたことに安堵して涙が止まらない。それを素直に表現できるところが可愛くて仕方なかった。あたいが男だったら口説き落としたかったね。
そのあとこっそりウェインの自宅にあの娘を呼んで、本当のプロポーズをした時に例の胡蝶蘭を渡していたよ。胡蝶蘭の美しさと教えてもらった花言葉に今度は感激して泣いていたね。胡蝶蘭については落ち着いてから二人で話し合って、結局二人でいるときにだけこっそり眺めるということにしたらしいけど、それが正解さ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます