第6話 査定
ウェインが浴室で未知の体験をしているころ和室では店主とシファが脱衣所から転送されてきたウェインの持ち物を点検していた。ウェインの荷物にはすでに洗浄する魔法がかけられていて汚れなどは綺麗になっているが、ほつれや傷などのダメージはそのままのため、ダンジョンで遭難していたウェインの所持品は全体的にくたびれたイメージを纏っている。
「トモさん、どうです? どうやらウェインさんの世界は初めてのところみたいですけど、面白いものはありそうですか」
それらをひとつひとつ手に取って楽しそうに作業をしている店主のすぐ隣に張り付くようにして寄ってきたシファが店主の顔を下から覗き込むようにして目線を合わせてくると、傾けた顔の脇から綺麗な金色の髪がさらりと流れて店主の視界を半分ほど埋めていく。
「まずは全部登録してからですよ。それと、シファ……少し、近いです」
「ふふ、でしたね」
動揺する店主を見て満足したのか、嬉しそうに微笑んで少しだけ離れたシファは乱れた髪をほんの少しだけ尖った耳にかけて大人しく作業を見守る。とは言っても図鑑のような本の上に手袋をした店主がウェインの持ち物をひとつずつ乗せていくだけなのだが。
「よし、終わりました。シファ、お預かりした荷物で修理(リペア)できそうなものがあればそれは別にして整理をお願いします。でも、修理するかどうかはウェインさんに確認してからですよ」
「わかってます。思い出の鎧傷とかがあったりすると怒られちゃいますから」
「はい、こちらは親切のつもりでも相手が不快に思うなら、それはしてはいけないことです」
シファはうんうんと頷きながら手際よく荷物を整理していく。もちろん衣服や下着などに関しては同性である店主が担当である。
「で、どうでした?」
そう多くない荷物の整理を終えたシファが、図鑑のページをめくっている店主に改めて先ほどと同じ主旨の質問を投げかける。
「そうですね……どうやらウェインさんの世界では全体的に生物の外皮が硬いみたいです。ウェインさんが所持している革製の装備や金属武器はおそらくですが彼の世界では安物と呼ばれるような品だと思います。それでも防具としての性能は他の世界の中級クラスの装備と比べてもさほど見劣りしません。そして、そんな外皮を持つ相手を斬るための武器ですからこのナイフや長剣も性能は決して悪くないものです」
「そうなんですね、じゃあ彼の世界での一級品も見てみたいですね」
「一級品クラスだと、もしかしたら他の世界で伝説の武器と呼ばれる可能性はあります。彼を送り返すときはメイラに護衛を頼むつもりなので、いくつか確保をお願いしてもいいかも知れませんね」
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