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 さ、魔力測定の方は滞りなく?終了した。アテナとネメシスのくんずほぐれt……ゲフン、魔力測定の方は、いや中々……いいもんでした、ありがとうございます!

 

 で、アテナの魔力の方は……

 「光属性とは珍しいですわね。司祭の家系とか信仰心の高い御方に多いのですが、ご両親はそのような地位のお方でしたの?」

 「……うーん、普通に父は木こり、母は私と同じ様に門兵をしていたらしいわ。どちらも村の教会の手伝いはすれど、特に信心深いという事もなかったわね。私は生まれも育ちもフルーツ村だけど、2人ともこちらの出身ではないと聞いた事はあるわ」

 「もしかすると祖先の方が聖職者だったのかもしれませんわね。もし魔法を覚えるのでしたら回復や解毒等の魔法に適性があると思いますわ」

 「狩人で光属性か。遠距離支援タイプだな。剣も使えるし聖騎士としての素質もあるかもしれないな」

 「うーん、いまいち実感がわかないわね……司祭様とか勉強とか難しいのでしょう?あの分厚い経典を読んだりするのは無理よ」

 「魔法適性はあくまでも適正というだけで、それが全てでもございませんわ。でも、いざという時に怪我の治療が出来るのは助かると思いますわよ」

 「……まあこんな旅先で決める事でもあるまい。これからゆっくりと考えるといいさ」

 とはいえ回復魔法を使えると生存率はぐんと増し、スローライフにもうってつけだろうな。


 その後ネメシスの戦闘能力を見る為に適当な魔物を狩る事となった。これは半分は俺の我儘だ。俺の魔法は風魔法という目には見えにくいものという事もあり、火属性であるネメシスの本格的な?魔法という物を見てみたいという事もあった。

 「アヤカート様には説明不要ですが、魔力はイメージでございます。その為……」

 といいつつネメシスは右掌の上に火の玉を出す。イメージ通りの10センチ前後の炎が出た。

 「この様に害意を持たない限りは手の上に出現させても熱さを感じる事はございませんし……アテナ様、それっ!」

 「えっ?わっ、ちょっと待っ」

 ネメシスはボールをパスするように、アテナに向けて火の玉を投げつけた。アテナは無意識に受け止め、慌てて手を放そうとするが

 「……あれ?熱く……ない?」

 「この様に、仲間に向けて放っても同じく熱さは感じませんし、わたくしの目線と魔力の届く範囲ならばこの様にパスする事も出来ます。ではアテナ様、その火の玉をそちらの地面の方へお投げください」

 言われた通りアテナが火を投げると、地面の草が燃え出した。近寄ると焚火のような熱さを感じる。

 「成程、不思議なものだな」

 「無意識に仲間に向けて放っても同じ様に火傷をさせる事はございません。敵と認識したものや、今の様に燃やそうと思ったものに当てた後は別ですけどね」

 ネメシスはくるりと手を返すと、燃えていた地面の草が消火された。そしてまた新しい炎を出す。

 「この「ファイヤーボール」の魔法はその名の通りボールの様に投げつけたり、地面の穴に向かって落としたりも出来ますわ。自然の洞窟は有毒なガスが溜まっていたりしますが、これによって事前に調べる事も出来ます」

 「有用な魔法だな、是非覚えたいものだ」

 「火魔法の素質が無くてもマッチ程度の炎はおこせますわよ。旅先での火おこしにも使えますしアテナ様もアルテミス様も是非」

 「ワシは特に必要ないな。炎をおこすと狼たちが怖がってしまう」

 「あら、今は私たちが仲間だしいいじゃない。そのうち私の出来る範囲で料理も教えてあげるわよ♪」

 「いらんわー抱き着くなーモフモフするなー!」

 「あら、わたくしも」


 もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ


 「さ、そろそろモンスターを見つけるか。アルテミス、近くに何か気配を感じるか?」

 「だから何も無かったかのように話を進めるな!……そうだな、ここから300mほど先にグリズリーがいるな。熊がモンスター化したもので凶暴性が増し、この間のボスオークよりも危険じゃぞ」

 「わたくしの力を見せるのにちょうどいいですわね。ではそちらへ」

 ネメシスは特に動ずる事もなく、ゆっくりと進みだした。

  「今回はわたくし一人で充分ですわ。皆様は少し離れてついてきてくださいませ。」

 「ちょ、ちょっと待ってよ。作戦とかは立てなくていいの?」

 「ええ、グリズリーでしたら何度か戦った事はありますわ」

 ほどなくグリズリーが見えてきた。遠めだが俺の世界のヒグマよりも一回り位大きく、仕留めたイノシシらしき獣を貪るように食べている。その姿にアテナが顔をしかめる。

 「こちらには気付いていないようですが、不意打ちでは力を見せる事にはなりませんわね。皆様、少し耳を塞いでいてくださいませ」

 不意打ちでもそれはそれで戦いではあるが、ネメシスは手から炎を出し、

 「ほらほら、こちらにもっと美味しそうな獲物がいますわよっ!」

 何とわざと挑発するようにその炎を爆発させ、大きな音を出した!


 グ……グガアアアアアアアアアアアッッッ!! 


 食事をしていたグリズリーはこちらに気付き、口から血を垂れ流しつつ獲物を横取りさせまいが為か牙を剥いて襲い掛かってくる!

 その姿に俺も、多分アテナも恐怖で足が竦んでしまっているが、ネメシスは普段とさほど変わらないが如く落ち着いた様子で

 「さ、どうしましょう?森林ですしあまり強い炎で焙るのもよろしくありませんわね?」

 ……何と、ノープランらしい。

 「お、おい……本当に大丈夫か?」

 「お任せ下さい、この程度の危機は妻であるわたくしにお任せをっ!」

 婚約者を飛び越え妻とか言いだしたが、俺もアテナもその事に突っ込む精神的な余裕はなかった。グリズリーは森の中とは思えぬスピードでネメシスに近付き、ネメシスの身体に覆い被さった……

 「ほらほら、こちらですわよっ♪」

 と思いきや、ネメシスはそのローブ姿に似合わぬスピードで攻撃をかわし、5mほど後方でグリズリーを挑発する。

 「見ててくださいませ旦那様、この様に森林で火をおこしたくない場合ですが……」

 ネメシスはいつの間にか拾っていた樹の小枝を持ち、呪文を唱える。その小枝は炎を纏い、まるで矢の様になった。

 「その場合はっ、この様にっ!」

 解説の最中も半狂乱で襲い掛かってくるグリズリーを軽くかわしつつ

 「それっ!」

 先ほどの炎を纏った小枝を、手の先からグリズリーに向けて発射した。その炎の矢はグリズリーの右目に当たった。一見そこまでダメージはなさそうだが……


 グ、グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!

 

 グリスリーは突如、目に刺さった炎の矢を抑え苦しがるっ!そのまま倒れ込んで断末魔の悲鳴を上げ、やがてピクリとも動かなくなった。ネメシスはその姿を確認してとどめを刺し、

 「終わりましたわ。皆様もう出てきて大丈夫ですわよ」

 と、こともなげに言う。


 その様子を見つつ俺もアテナもゆっくりと木陰からゆっくり出てくる。

 「ど、どういう事?」

 アテナが質問をする。あまりにあっさりと済んだ為目の前で横たわるグリズリーを見ても何が起こったか信じられないようだ。

 「森の中ですし、小枝に炎を纏わせ、グリズリーの目に撃ち込んだのですわ。魔法による炎はそう簡単には消えませんので……目の奥から頭を燃やしたのです。枝を抜く事の出来ないグリズリー等獣タイプのモンスターにはよく効く方法ですわ」

 確かにグリスリーの目や口から、炎による煙が立ち上っている。

 「少し残酷な方法ですが……モンスターの前でいざという時に躊躇っていてはこちらが殺されてしまいますわ。そして環境をなるべく破壊しない方法で討伐すべし、森の中で火災を起こしたら元も子もありませんですしね」

 「いや、勉強になったよ。確かに銀級の冒険者の腕、見せて貰った」

 「う、うん、凄いわ……私は最初の咆哮で足が竦んじゃったもの……」

 「それは誰も一緒ですわ。わたくしも最初の討伐の時、覚悟はしていたつもりでも身体が震えて危ない目に合いましたわ。こればかりは経験を積むしかありませんわね」

 「そうじゃな、いざという時に身体が動かなくなる事は避けなければいかん。貴族ならば群れのリーダーと同じく、冷静な判断力が求められるであろう。○○も最初は竦んでいたが、そのうちワシも目を見張るほどの動きが出来ていたな」

 またネメシスの先祖の名前を出すアルテミス。

 「そのネメシスの先祖という人とパーティを組んでいたのか?」

 「……ま、色々複雑でな。小娘、貴様の祖母とやらと話す事があれば追々語ってやろう」

 「ええ、楽しみにしていますわ。おばあさまはまだお元気ですがわたくしの夫の事を早々に紹介したいですしね♪」

 「ああっ……っていつの間に婚約者すら飛び越えてるじゃないか!」

 「そうですわねー早くひ孫も見せたいですわね、少なくとも3,4人は頑張りませんと……」

 「わ、私だってまだ産んでないのにいいいいいい!!あ、アヤカ-ト!こ、今夜は寝かせないんだからっ!」


 ……何かいつものノリになってきた……ま、いいか。

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