22

 「……成程、つまりはその太陽の結晶という物がなければ行く事は難しいのですわね……うーん」神木の根元に張った簡易テントの中でネメシスが唸る。

 「すまないな、役に立てなくて。これで婚約云々は解消してもいいz」

 「それはそれ、これはこれですわ♪今迄道筋すら見えてなかったものが判ったのですし、やはりわたくしの目に狂いはなかったですわ。むしろこれだけでもわたくしの初めてを差し上げても……」

 と食い気味で言ってくるネメシス。それをアテナは強引に割り込みつつ

 「ね、ネメシスはその、太陽の結晶というのに聞き覚えとかないの?」

 「残念ながら自宅の書庫にもそういう記述のある本はなかった気がしますわね。無論全部を調べた訳ではありませんが」

 「まぁ、アレは相当珍しいからな。人間の小娘程度の知識では聞いた事もあるまい」

 「知ってる人とかいないのかしr……ってアルテミス!知ってるの?」

 「ワシが何年生きていると思ってるんじゃ。見た事はないが所有していた者の話も聞いた事があるし、こぶし大程度の光る宝石状の結晶らしいというのも知っている」

 「まぁ、何て賢いワンちゃんなんでしょう~もふもふ~もふもふ~」

 「犬じゃないわ~抱き付くな~もふもふするな~!!」

 「あ、ずる~い!私も~!」


 もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ


 「……じゃあアルテミス、家に帰ったらもう一度紙に特徴とかを描きだしてくれ。ネメシスはそれを元に辺境伯に知ってる人がいないか聞きだすといい」

 「おい、何も無かったかのように話を進めるな!」

 2人の少女にもふもふされつつこっちに突っ込みを入れてくるアルテミス。

 「うーん、お母様ですか……あまり気乗りしませんが……」

 「って、辺境伯は女性なのか?」

 「ええ、父は病弱でして、今は母が辺境伯としてこの一帯を統治しておりますわ」

 ネメシスの話と同時に脳内に説明が浮かぶ。この国では別に王様も男系が望まれるとかそういう事はないらしい。

 「なるほどな。気乗りしない、というのは……親との関係が微妙、とかか?」

 「いえ……親兄弟とは関係良好というか……良過ぎるくらいなのですが、この……エルフの里に訪問し、その防衛の術を知る、というのはわたくしの独断でして……」

 「嗚呼、あまり両親に知られたくないという事だな……まぁそもそも太陽の結晶と言う物を知っているのかも判らないし、その辺は話せる段階になったらでいいと思うぞ」

 「申し訳ございませんわ……」

 「とりあえずフルーツ村には2週間、後10日ほど滞在するのだろう?他の用事を済ませつつ、ゆっくりどうするかを考えるといい」

 「ええ、どうやってこの婚約を両親にサプライズで知らせるか、今から悩ましいですわね♪」

 「え」

 「無論今迄殿方との浮いた噂もなく、冒険者をしていたわたくしですしそのまま知らせても充分吃驚するでしょうが、うふふ、どうしましょうか~今度のわたくしの誕生日にしましょうか、それともさりげなく今度のお茶会とかで」

 「待て待て待て待て、話を進めようとするんじゃない、その話は保留になった筈だぞ」

 「……いけず(ボソッ)……ま、まあそうですわね、もう少し土台を固め堀を埋めて逃げ場を塞ぎませんと……(ボソッ 」

 ……さっきから不穏な独り言が聞こえてる気がするが気のせいかな?


 「ま、色々な件はとりあえず帰ってからだ。さ、ネメシス、次は君の冒険者としての力を披露して欲しい……まぁアルテミスはともかく俺もアテナもついこの間初めての依頼を受けた初心者だし、御教授いただきたい、という方がいいか?」

 「わたくしも冒険者になってまだ2年で、戦果自体パーティーの皆様のお力添えのお陰ですけど……一応銀級の称号は持っておりますし、心構え程度はお教え出来ますが、わたくしは「魔法使い」ですので「狩人」とは役割が違いますわよ」

 「ああ、ネメシスに初めて出会った後この3人でオーク討伐をしてみたが、改めて魔法の有用性を知ったんだ。使い方次第で戦闘の幅も広がるとな。残念ながら記憶喪失のせいか現在使える魔法は風系の初期魔法だけでな」

 「判りました、ではアヤカート様の魔力量とかを知りたいので、とりあえず服を脱いでくださいな」

 といいつついそいそと服を脱ぎだすネメシス。

 「ああ……(いそいそ……)……ってちょ~~~っと待てっ!!何故服を脱ぐ必要があるんだ?しかもネメシス迄っ!」

 「そっ、そうよ……あまりに自然で見逃す所だったわっ!」

 「ただいま説明しましたわよね?魔力を測定する為には全裸で抱き合いながら目を閉じ額をくっつける必要があるのです、我がエロエロフ流の方式ですが」

 「何となくだが……その開祖は金髪ツインテールのエロエロロリBBAなんじゃないのか?」

 「開祖様の御姿の文献はあまり残されてませんが、確か女性のエルフですたわね……ほらほらっ、婚約者同士恥ずかしがってどうなさるんですか?諦めてお脱ぎなさりませっ!」

 「きゃーおかされる~えっち~!」


 すぽぽぽ~ん


 ……ネメシスは魔法使いなのにほとんど抵抗も出来ず、アテナが止める間もなくあえなく俺は生まれたままの姿にされてしまった……。

 「なるほど、これがアヤカート様の……これがわたくしの中へ…じゅるり」

 「お、おいっ、ふざけて脱がせた訳じゃあるまいな?」

 「いえ、本当にこれが我が流派の方式ですわよ……下着までは脱ぐ必要はないのですが(ボソッ)」

 「おい、まさか」

 「では始めますわよ、さ、わたくしの前にお座りなさいませ」

 体よくごまかされた気がするが、とりあえず言われたままにネメシスの前に座り、顔を向き合う。無論ネメシスも全裸だ。って勢いでされたものだが目の前に実るたわわな双丘に思わず喉が鳴ってしまう。俺のアヤカート君も……いくら俺がロリコンとはいえこれは生理現象だしねシカタナイネ。

 「……アヤカート、後で説教だからねっ!」

 アテナが鬼の形相で睨んでくるがネメシスは涼しげな顔で

 「あ、アテナ様もこの後図りましょうか、ご準備を宜しくお願い致しますわ」

 「って、わ、私もっ!?」

 「わんちゃ……アルテミス様は人間体に戻ってからにしましょうか。ちょっとそのままではあまりにもニッチですし」

 「必要ないわっ!それにニッチとはなんじゃっ!」


 ……色々ごたごたしていたが、やっと魔力の測定が開始される。

 「では目を瞑ってくださいませ……ご安心を、いきなり唇を奪うとかは今回はしませんわ♪」

 「今回はって……まあいい、よろしく頼む……」

 言われるがままに目を瞑ると、おでこにネメシスの額の感触を感じる。アテナとまた違う香水のいい匂いと共に熱を感じ、吐息が顔にかかる。

 「ではいきますわよ」

 ネメシスの言葉とともに、瞑った目にも感じるほどの光がおでこの辺りから感じる。

 「……ふむふむ、流石はエルフですわね。並の人間の魔導師……魔法使いの上位職でもここまでの魔力量の方は滅多にいませんわ。使われていらっしゃる風の魔法の他にも精霊魔法、いえ全ての魔法を習得出来るのでしょうね」

 「そ、それはありがたいな……だが今の所は魔法使いになる気はないよ。生活や狩猟に必要な魔法、それでとりあえずは充分だ。まだ銀級狩猟免許を取り立てだしな、しばらくはそちらに専念したい」

 「そうですわね、同じエルフ同士の方に教わる方が魔法収得もスムーズでしょうし……ではとりあえず、使われてらっしゃる風系の魔法の回路を強化しておきましょう。本来は炎魔法が主のわたくしより風魔法の使い手であるセレネに任せる方がいいのでしょうが」

「これ以上火種を持ちこもうとしないでくれないか……ネメシスが出来る範囲で宜しく頼む」


 とりあえず20分ほどで、儀式の方は終わった。俺もネメシスも一戦終わったが如く汗だくだくだ。

 「これで、風魔法の回路の強化が終わったんだな?」

 とりあえずウインドの魔法を唱えようとするが

 「ああ、テントの外へ出て放った方がいいですわよ。同じれ別の魔法を放とうとしても回路の増強後は感覚が違ってきますし」

 「ああ、判った」

 とりあえず俺のアヤカート君も収まったようなので、いそいそと下着をつけ、外へ出てみる。下着をつけてる間もネメシスの好色の視線が注がれたが気にしない事にした。

 とりあえずウィンドの魔法を放つが……確かに全然違うな。ステータスによるとLVが上がった訳ではないが、以前よりもスムーズに、力の脈動を感じる。風の強弱も例えるなら扇風機のスイッチを切り替えていたのが、エアコンのリモコンで自在に切り替えられるようなスム-ズさだ。例えるなら目に見えないバフ……強化魔法を常時かけられているようなものか。

 「なるほど、感覚的にも判るな。格段に使いやすくなったようだ、ありがとう」

 「いえいえ、わたくしも目の保よu……エルフの方の指南をするというのは有意義な体験でしたわ」

 邪な意思も見えたが、本当に感謝だな。因みに魔法自体も帰宅後ヘレネに教えて貰えるらしい。今回のような役得だったら……じゅるり

 「また邪な視線を感じるわよっ!」

 アテナに見破られた……危ない危ない。

 「では引き続き、アテナ様の開放をいたしましょうか……」

 「え?本当にやるのっ?」

 「もちろんですわ……ささっ、アヤカート様もテントにお戻りください……」

 「えっ、さっきみたいなのをアヤカートの前でするの……恥ずかしいわ……」

 「え?でも普段はもっと激しいプレイをベッドの上でなされてるじゃありませんか。この間は服を着たままなされ」

 「さー、さっさと済ませましょうかっ!」

  ネメシスの言葉に食い気味でアテナが叫び、テントに入っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る