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 ……一陣の風が吹き抜け、空気が凍り付いた気がする。一拍置いて無茶苦茶恥ずかしくなってきたが……

 パッ、っと目の前に半透明のボードが浮かび上がる……良かった。

 って確認してみると……

 アヤカート=オータス

 年齢150歳

 男

 無職

 LV15(30)

 HP15+100

 MP20+100

 攻撃力5+100

 防御力3+100

 ……

 技能 剣術LV1 弓術LV1 風魔法LV1 精霊交渉LV1 事前予測LV1(緊急回避LV99) ※言語理解 ※言語筆読

 

 と色々な数値が浮かび上がる。 一応女神の説明を思い出すと……

 

 エルフの年齢は人間×10歳くらいになるそうだ。イメージ通り高校生程度って事か。


 LVは全ての能力を判断してつけられる、その生物の「格」の様なもの。

 緊急回避がLV99になって上位スキルに進化しているのだが、それはLVには影響してないようだ。

 異世界転生人というだけでLVは高くなるそうだが、総じて高くなりすぎ問題が生じた事もあり年齢・種族の平均位に擬装されるらしい。


 HPは何らかの生命の危険に曝された時消費される。多いほど無意識にその危険への回避行動を取り、生命を守る。

 ……つまりHPが15だろうが最高15発しか攻撃に耐えられない訳じゃなく、10000だろうがガチガチに縛られた状態で首を刎ねられれば一撃死、という事の様だ。

 無論ゲームでもHP1と10000で、いくらLVが高くなっても今まで1発しか耐えれなかった攻撃を1万回耐えられる様になるのはおかしいだろ?と思っていたので納得出来る。

 ジャイアントキリングの夢はあるが、成長しても常にクリティカルヒットに怯えないといけないのは辛いな。でも少なくとも元の7,8倍もあれば、突き飛ばされただけで死ぬ様な事はあるまい。緊急回避……今は事前予測か?もあるしな。


 付随して攻撃力も、ただ筋力が増すとかじゃなく、要はその時の装備状態で物理的に相手のHPを削れるかどうかの指標らしい。

 例えば剣使いが慣れない弓矢を使っても矢を飛ばす事での攻撃力は増えない、むしろ減る。だが弓を打撃武器、矢を刺突武器として考えると増える、みたいな感じだ。

 女神曰くマニア向け?に全ての項目を詳細に説明出来るモードもあるようだが、まあ今の判りやすい方が楽だ。繰り替えすが積極的に戦闘をするつもりもないし。


 MPはHPよりはイメージ通りだ。多いほど使える魔法の数が増え、無くなると使えなくなる。使えば使うほど増え、休めば元に戻る。

 この世界の生物は多かれ少なかれMPを持つが、魔法を覚えていなかったり、使う知能がなかったりで使えないものも多いらしい。

 この世界のものが魔法を使うには呪文の詠唱が必要だが、俺の様な転生者は別にしなくても明確なイメージと集中力等があれば似たようなものが使えるらしい。いわゆる無詠唱魔法だな。

 とりあえずLV1風魔法を使ってみたが、今の段階では手の先からはハンディ扇風機程度の風が出るだけだった。ま、暑さ対策にはなるかな?


 まぁこれらステータスの効果はおいおい調べる事にして……

 まずは技能欄に並ぶ事前予測LV1の検証からだな。

その項目をクリックすると説明が出た。10m以内の危険に対し無意識に回避出来る確率が1%上昇する、とある。1%とはいえ全くないよりはましであり、先ほどのカンカンと一緒でLVも上がるのだろう。

 カーンカーンの音は消音出来るらしい。メモリを動かし五月蠅くない程度に調整する。


 そして上位スキルという事で、緊急回避LV99の能力も備わっている。10m以内で10分という事だがいまいち実感が沸かない。

 とはいえ上空を徘徊しているドラゴンだかワイバーンにわざわざ襲って貰い、また上空に連れ去られ落下したいほどマゾではない。


 考えたがとりあえず近くにある低木に登り、わざと落下してみる事にした。……流石エルフ、無意識にどこの枝を掴めばいいのか、どう体重をかけていいのか判る。5mほどの木をするっと登れた。

 さて、効果範囲が10m、この木が5mという事は即発動する筈だ。とりあえず飛び降りようとする……

 カーンカーン、事前予測LV1……失敗。まぁ1/100だし想定通りだ。続いて緊急回避が発動し……

 待てよ?先ほどのLV1の段階では地面まで1mだったので落ちても耐えられる程度の衝撃に収まった。

 それがLV99だと10mに……これ、長いと却って危険じゃないのか?地上から10m上空で態勢を整えても無事着地出来ると思えない。

 とりあえず焦る頭で、緊急回避LV99の説明を見る。

 自分の現在位置を元に半径10mの安全な位置に移動・姿勢制御出来るとある。どうするんだ?と思って集中すると……。

 周りの空間が光り出し、そこに意識をやると身体が一瞬でそこに移動した。何というか説明し辛いが、シミュレーションゲームで味方ユニットをドラッグして移動範囲内の別の位置にドロップするような感じだ。ポリゴンをぐりぐり動かすように姿勢制御で足から落ちる事も出来るらしい。さっき知っていれば……。

 とりあえず10mの範囲内なら地面に降り立つ事が出来そうだ。地面近くにドロップして、確認表示にはい、とする。先ほどの落下状態から姿勢を変えつつドロップした位置に移動・着地出来た。

 何度かやってみたがテレポートではなくあくまで移動みたいだ。検証が必要だが多分に壁の向こうに移動等は出来ないだろう。

 上に移動したら飛べるのでは?と思いやってみたが、10mまではあがれるがまた10m落下し先ほどのアナウンスに戻った。2段ジャンプみたいな感じには出来そうか?

 何度か落下しては、移動を繰り返してみた。そのうち……。

 事前予測LV1が発動しました。このまま前方に移動すると落下による負傷が予測されます。自動回避……失敗。手動による回避に切り替えます。手を伸ばして他の枝に掴まって下さい。

 ……と言われ、掴める丈夫そうな枝が光り出した。成程、この様に危険を事前に察知するのか。ここで枝に掴まれば落下は免れるという訳だ。

 んー、微妙。緊急回避で事足りる気がするし、今の発動率だと役に立たない。

 オフにする事も出来ます。しますか?

 というアナウンスが聞こえた。いや、まぁオフにする事もない、そのうちこれが必要な時も来るのだろうし。


 ……それよりも、便利な使い方を見つけてしまった。

 落下を始めてから回避位置を真横10mに設定にすると、重力関係なく横方向に移動出来る!

 つまりは落下→緊急回避で横に移動→落下……と繰り返す事で、理論上高さ10mの範囲だが空を飛べちまうんだ!

 実際に使ってみると、ちと面倒だがある程度は自由に浮遊出来た。技能なので回数制限もない。oioiまたオレ何かやっちゃいました?

 ……といってもまず最初に危険ありきなので任意に地上から浮かびあがる事は出来ない。思ったよりは万能ではなさそうだが、それでも生まれて初めての浮遊体験に俺は興奮していた。


 ……気が付くと、くるくる飛んでいる俺の真下に狼の様なモンスターが10数匹忍び寄っていた……。

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