第60話 安心は現状維持

 拘束島から解放された大池は、公職選挙法違反や朝鮮学校無料化に援助と的外れに大暴れする露連峰を見下し、嘲笑い再選の意欲を高めていた。そこに逆風となるかも知れない東京都が行うパチンコ屋の新装開店のようなプロジェクションマッピングが話題に上がってきた。炊き出しなどで飢えに耐えている人たちをお気楽に見下ろす費用は既に48億円を費やしている。完成度はお世辞にも高いとは思えない。費用内容も理解不能な大池お得意の横文字だらけ誤魔化している感が拭えない。問題にしなければならないのはオリンピックの談合問題などの不祥事で入札禁止にされている大手広告代理店の系列会社が担っている点だ。関連会社だから関係ないとの言い分は、大谷選手問題で出禁を喰らった日テレや富士テレビが懲りずに共同購入した映像だからと使いまくり言い訳しているのに酷似している。隣国と関わるとモラルが理解できなくるらしい。それが今回の入札に現れている。実行委員会と入札業者が同じ人物が仕切っているので入札の意味をなさないでいる。プロジェクションマッピングなどパッと移してパッと終わるものに多額の金が費やされている。これは正に公金チューチューの疑いが持たれても仕方がない。都民のチャックが行き届かない所で大胆に公金が蝕まれている。金に目のない露連峰がゴキブリホイホイのように吸い寄せられるのは至極当然だった。公金チューチューを行いやすくしているのが実行委員会に関しては開示請求が及ばないブラックボックスとして存在する。言い換えれば、開示請求に応えられる議事録やその他資料の記録がなく、やりたい放題の搾取方法だと言う事だ。

 大池は、ブラックボックスを排除と言いつつやっていることは露骨にブラックボックスを活用している。都民が悩むように海斗も何とも情けない都知事選に嫌気が刺していた。目を背ければ、好き勝手に生活保護に群がる隣国人を見逃しているのと変わりない。無駄だと叫ぶより、無駄だとわかっていても一票を投じるしかない。海斗は露連峰当選の最悪のシナリオを回避できた時点で、再び大池を拘束島に送る決意を高めていた。そのためには、大池に代わる人物を探さなければならないという大きな壁が立ち塞がっていた。


ゲル「元の木阿弥か、醜いなぁ人間は…いや、卑しい奴は」

海斗「99の悪は1の正義に勝つ」

ゲル「そうなのか、正義は勝って聞いたことがあるぜ」

海斗「何度倒されても立ち上がった結果だ。正義が常に勝つならばそんな文言は生

   まれない。勝たないからその言葉に希望を込めたのさ」

ゲル「だから可笑しな奴らが選ばれるのか。馬鹿げてるよな投票って」

海斗「まぁ、そう言うな。民主主義の欠陥だが、民の意志が反映される唯一の一矢な

   んだから。有権者は何かのきっかけで一人に投票すると致命的な汚点を犯さな

   い限り慣習のように投票する傾向があるのは残念なことだがな」

ゲル「切っ掛けは何だ」

海斗「日本人は他人に迷惑を掛けないという慣習がある。諸外国が自己主張を行うこ

   とが自己の存在を自他ともに示すと考えられるが、日本は自己主張は自己中と

   言われ、協調性に欠けると煙たがられる。他人に任せられるものは任せる。子

   供の時から自立させられるのもそのせいだ。学校にも一人で行く。転んで泣い

   ても直ぐに助けてはくれない。酷くないものなら親は笑って見守る。親が笑っ

   ているから大したことがないんだと学ぶ。外国から見た酷い親に見えるだろう

   な。人は失敗する。大きな失敗をしない限り、一度選んだ者を支持する。やり

   たいと声を上げた者を信じる傾向は、必要以上に直接自分に関係ない事に関わ

   りたくない。関わらなければトラブルに巻き込まれないと考えているからだ」

ゲル「その考えが自己主張に慣れている外国人からは、何を考えているのかわからな

   いと思われるんだな。他人に任せられることは任せる。その考えが外国に比べ

   て選挙に関心がない要因なのか」

海斗「それで国が動いている。大半の国民は争いや暴動に晒されず平和に暮らしてい

   る。一度与党が駄目だとなったとき、政権交代させた。リーダーシップを学ん

   でこなかった政党はやり方が分からず、批判を恐れて動くしかなかった。それ

   が悪夢の民主党時代を産んだ。短期政権だ。今の立件民衆党だ」

臭ゲル「立嫌民臭党・露連峰か」

海斗「日本国民が選挙に興味が持てないのは、組織票の存在だ。一票を投じても焼け

   石に水の思いが強い。今回の選挙も最終的には組織票で決まる。大池の圧勝

   に終わるだろう」

ゲル「大池に代わる強敵がいない現状では解放は致し方なしってことか。万が一、露

   連峰や議会の支持を得られない者が知事になれば、それこそ、悪意あるものが

   数に物を言わせて好き勝手にしかねないってわけか」

海斗「分かってきたか、ゲル」

ゲル「あいよ」




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