第52話 裁きに憂慮なし

 海斗はゲルの苛立ちを無視して、大型の中古船舶をレンタルさせ、甲板に簡単な工夫を凝らして完了したのを確認して出港した。


ゲル「どこに向かっているんだ、いつもの島の方向じゃないが」

海斗「沖縄だ」

ゲル「沖縄?」

海斗「米軍の戦略は日本の防衛戦略でもある。それを邪魔し、独立するなどとふざけ

   た奴を始末する。国・裁判所の決定にも逆らう奴だ。適任者だろう」


 海斗たちを乗せた改造船は夜の沖縄に着いた。既に前乗りの調査班が沖縄の知事・玉置デーブを行動パターンを調べ上げていた。港を車で後にし、玉置デーブの元に向かった。玉置デーブは酒が入り上機嫌で踊りながら帰宅時についていた。黒服の男たちは暗視カメラで確認し、素早く拉致した。拉致された玉置デーブは麻酔薬をかがされ眠りについた。


ゲル「今回は手荒だなぁ、まぁいいけど」

海斗「洗脳された者に厚生はない。関わるのも時間の無駄だからな」


 玉置デーブはそのまま改造船に乗せられた。甲板に設置された十字架に貼り付けられた。目を覚ましたの玉置デーブは美しい青空以外視界に入らなかった。周りには人気が全くなかった。船が緩やかに停泊した。そこは日本の排他的経済水域(EEZ)内に中酷が大型の観測ブイを設置している問題の場所だった。

 暫くして中酷の海警局の船が近づいてきた。「ここは中酷の領海だ、出ていけ」と決まり文句を言ってきた。それを確認して海斗は玉置デーブに「お前には明日は来ない」と言い「やれ」と指示をだした。甲板に玉置デーブが貼り付けたれた十字架が立ち上がった。海警局には来るなというポーズにしか見えなかった。十字架は手品のタネのように双眼鏡では見えないでいた。そこに拡声器が玉置デーブの口元に充てられると「出ていくのはそっちだ」と中酷語で流された。玉置デーブは首を左右に振りながら「私は、あなたたちの味方だ」と必死で訴えるが波音と距離で打ち消されていた。

 「生意気な奴だ。いつものやつ食らわしてやれ」と海警局はいつもの放水を始めた。固定されたは玉置デーブは怯まない。しこたま海水を飲む羽目になった玉置デーブは藻掻き苦しむがその姿が必死さに映り、海警局の甚振る気持ちに火を点けた。海警局は更に水圧を上げて玉置デーブに浴びせかけた。

 操舵室のガラスを割るだけの威力の水圧を長時間受けた玉置デーブは、水と頑強な十字架に挟まれ、全身が複雑骨折し、息も吸えず船上で溺れる事態となり、全身打撲に溺死となった。

 海斗の「もういいだろう」の合図とともに十字架は水圧に従うように倒れた。同時に海斗が用意した船はその場から遠ざかった。放水された水は甲板に細工された傾斜で海に流れ落ち船には影響はなかった。

 しばらく走行して海斗は「この辺りでいいだろう」と玉置デーブを十字架とともにクレーンで吊るしあげ、海に放りだした。

 玉置デーブは沈みに連れ水圧に呆気なく揉みくちゃにされ、膨張し破裂した後、魚の餌となった。


ゲル「今回は大胆だな」

海斗「大好きな中酷に始末されたのが責めての救いだろう」

ゲル「お前、死神になるつもりか」

海斗「大王と死神の真似をしただけだ」

ゲル「なぜ、島に連れて行かなかった」

海斗「一刻を争う。島を行き来する時間と費用が勿体ないからな」

ゲル「そうだな。でもこれでお前も一人前の殺人者だ。まぁ、自己利益じゃないか

   ら俺の采配の範疇だ、安心しろ」

海斗「裁きは受けるさ、お前じゃなく大王のな」

ゲル「強がっても何の得もないぜ。まぁいい。じゃぁ、次だな」

海斗「ああ」


 海斗とゲルは鮮やかな沖縄の風景を堪能し、指定の港へと急いでいた。



























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