第46話 お前には明日は来ない

 ピエロとなった海斗は大池小百合の自宅近くにいた。そこへ大池都知事を載せた車が来た。いつもと変わらず車から降りた大池はピエロに気づいた。怯えから大池はその場から早く立ち去ろうと速足で自宅に向かおうとすると「都知事、応援しています」と声を掛けられ、立ち止まり「ありがとう」と言った瞬間、痛みとともに睡魔が襲ってきた。大池が気づいたのは闇の海の上だった。


大池「ここはどこ、どこなの」

海斗「目覚めたか、海の上だ」

大池「私を誰だとおもっているの」

海斗「金の亡者か反逆者か」

大池「都知事よ、只で済まないわよ」

海斗「お前には明日は来ない」


 海斗の配下が麻酔弾を大池に喰らわした。


ゲル「なぁ、海斗。こいつにはなぜ、明日が来ないって言ったんだ」

海斗「自分の地位を守るため一線を越え、その結果、多くの人の財産・命を危険に晒

   した。そればかりか自然も崩壊させる。悪魔の所業だ。更生の域を逸脱してい

   るからだ」


 大池を乗せたクルーザーは例の島に着いた。海斗は山元・河負の部屋にリモコンキーで鍵を掛けた。山元と河負はその音で彼らからして自分たちを拉致した犯人が来たのを知った。二人は小窓から外の様子を伺っていた。僅かな視界から見えた姿は新入りが女性らしいと言う事だけだった。海斗らは食料を補充し立ち去ろうとしていた。


山元「待て、待ってくれ」

海斗「何だ」

山元「俺たちはどうすればここから脱出できるんだ」

海斗「行いを顧みて判断しろ。判断できれば機会があれば聞いてやる。時間は無駄な

   程あるからじっくり考えろ」

山元「考えろって何をだ」

海斗「この二週間、無駄に過ごしたな」

山元「なぁ、頼む。火が起こせないんだ。ライターを置いて行ってくれ」

海斗「残念。私は煙草を吸わない」

山元「いや、持っているだろ。この前、本を焼いたじゃないか」

海斗「夢を見るのは寝てからにしろ。自給自足が出来なければ成れの果てを見るぜ」


 海斗たちは無駄なあがきと無視して立ち去った。暫くして部屋のロックが外された。山元と河負は直ぐに部屋を飛び出し、新入りの元へと向かい、扉を開けた。


山元「女性か、やっぱり」


 大池はその声に聞き覚えがあった。


大池「あなたは令和腐敗組の山元さんでしょ」

山元「そうだ。あなたは都知事の大池さんですね」

大池「あなたは河負さん、ですね」

河負「そうです」

大池「私たちはなぜ、ここに連れて来られたんですか」

山元「私たちにも分からない。さっき聞いたんだが行いを顧みて判断しろ、とだけ」

大池「何よそれ。それにお前には明日が来ないって、何よ」

河負「明日が来ないって、聞いてないが」

大池「どう言う事よ」

河負「行いを顧みて判断しろ。判断できれば聞いてやる、と」

大池「私だけ違うってこと」

山元「その違いが分かればここを抜け出すヒントになるんじゃないか」


 三人は、協議するが五里霧中。無意味と言う協議に飽きたのか山元がある提案をしてきた。それは、収容施設からすればまだまだ人員は増える可能性がある。新人が運ばれるその瞬間を生かそうとするものだった。






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