第42話 不適な仲間
海斗たちが立ち去った後、扉が解錠された。山元と河負は扉を蹴り破るように飛び出した。山元は海斗が燃やした本の燃えカスに顔を地面に這いつくばるように近づけ必死で息を吹きかけ種火に一部の望みを託したがその望みは儚く燃えカスとともに飛び散った。「くそっ」と山元は本の燃えカスを腹だしさまぎれに蹴り散らかした。河負はその燃えカスを素手で搔き集め泣きさけんでいた。山元は河負を哀れな奴だと蔑んでいた。苛立ちを隠せない山元の姿を見て河負は冷静さを取り戻してきた。
河負「これはどういうことだ、ここは何処だ」
山元「知るかそんなこと。ただ奴らは本気だ」
河負「あ・あなた…はもしかして」
山元は髭が伸び人相が変わっていたがその趣はそのままだった。山元もまた河負の正体を認識した。
河負「私たちはなぜここに連れて来られたのか、彼らは私たちをどうしたいのか」
山元「更生を促しているみたいだ。三食と水が用意されている。インスタントだが
な。今以上の危害は加えることはないみたいだ。それより、行くへ不明になっ
ている私を探していないのか」
河負「あなたは療養中となっています」
山元「そうか、捜索とかは」
河負「内々で処理されているのか表には出ていません。私ですらこうしてあなたに会
うまでそれを信じていましたから」
山元「あんたも私と同じになるってことですよ。特にあなたが居なくなって喜ぶ者は
多いでしょう。居ないのをいいことに代理人を立てられ、あなたが反対するリ
ニアに賛同するでしょうね」
河負「そんな簡単に代理人など立てられない」
山元「鬼の居ぬ間にってあるじゃないですか」
河負は普段の動向を自覚しているのか反論できず、顔を紅潮させ憤りを隠せないでいた。山元はそれを見て大笑いしていた。気まずい時間が過ぎた後、山元が口を開いた。
山元「あなたは火のおこし方を知っているか。食料は用意されているがすべてがイン
スタントで湯が必要なんだ」
河負「今までどうしていたんですか」
山元「水で対応してるんだ。時間は掛かるが食べられる」
河負「美味しくはなさそうだ」
山元「背に腹は代えられない。あなたにもすぐに分かる」
河負「それにしても奴らの狙いは何なんだ。私たちは解放されるのか」
山元「それが分かれば嘘でも奴らに歩調を合わせてやるさ」
河負「脱出方法は」
山元「ここが何処かも分からないし、船を造る術など知らない。ここを通る船も目に
してない、飛行機もな」
河負「本土からかなり時間が掛かっているから船を作れても脱出は無理だ」
山元「分かっているなら聞くな。絶望だけが大きくなる」
河負「悪かった。所であなたは何日位ここにいるんです」
山元「食料の減りから九日程かな」
河負「で、この島の様子は」
山元「野生動物とは出会ってない。鳥もあまり見かけない。完全孤立の無人島だ。た
だ奴らが用意した宿泊施設と食糧庫があるだけだ」
河負「無人島から脱出…か、無理だ」
河負は改めて自分の置かれている立場に絶望した。
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