第40話 忖度知事

ゲル「こいつ、元総理を葬った奴じゃないか」

ギル「魂界の者が苦慮してるのが単なるテロじゃないとして探っている」

ゲル「どういうことだ」

ギル「超簡単なダイジェストだ、まぁ、見ろ」


 ギルがゲルに見せた映像は…


 元総理を葬った事件のニュース報道映像が流れ、コメントが被せられたものだった。実行犯・川下軟也。宗教団体・豚頓協会に親が侵透し、献金に邁進し狂った。

川下は宗教団体の主催者を恨んだが異国におり、復讐を行えでいた。その苛立ちに光明が差す。ある中酷人に会い、親身に悩みを聞かれ心の内を打ち明ける仲に。その中酷人は、強酸党が送り込んだスパイ・鄭だった。鄭は日本のあり方に不満を持つ者を探していた。その網に掛かったのが川下軟也だった。川下は豚頓協会の主催者に恨みを抱き動向を探るが目途が立たず苛立っていた。そこでスパイはこんな奴が味方するから拡散するんだ。こいつも同じだよな、と川下に刷り込んだ。川下は手の届かない主催者より襲撃機会のある人物にターゲットを絞った。川下は怒りの噴出先を得た。

急がば回れの意味を見失い、摩り替えることで心の安定を得ていた。目標が定まれば何も考えない。実行することが生き甲斐になった。そして事件を起こした。


ゲル「とばっちりもいいとこだな。孤立した妄想か。怖いねぇ~」

ギル「妄想も繰り返せば事実に思える。それが洗脳だ」

海斗「洗脳された者は理解者が限定される。その限定が知の孤立・確執を強め、現実

   が見えなくなる」

ギル「人間は安易な考えに浸透する、迎合しやすいからな」

ゲル「閻魔大王が激怒するのも分かるな」

海斗「分かった所で次へ向かうぞ」

ゲル「おお、洗い浚い捕獲だ」


 海斗一行はある自宅付近で待機していた。そこへ公用車で帰宅した人物がいた。車を降りると似つかわしくないピエロが立っていた。手にはスマホの明かりで照らされた本が浮き上がっていた。その本は事前に調べ上げた河負知事が持つ愛読書「毛沢東選集」だった。最初、不信感に包まれていた河負知事は、極々少ない共感者を見つけ一挙に警戒心より好奇心が上回った。


河負 「君、その書物は」

ピエロ「あっ、これは私のお守りです。進む道に迷った際、読めばおのずと道が開か

    れる手放せない本です。著名人では河負知事がおられたと思います。お会い

    したことがないですが一度、話してみたい人物です」


 ピエロが自分に気づいておらず話したいと思っている人物だと聞き、微笑ましく感じていた。


河負 「君はそんな場所で何をしてるのか」

ピエロ「この付近でイベントがあり迎車を待ってるんですが来なくて」

河負 「そうか、私もその本と同じ物を持っている」


 実はピエロが持っていた本は、事前に河負宅から盗んだものだった。


河負 「君が話してみたい人物は目の前にいるよ」

ピエロ「えっ、河負知事ですか」


 河負知事は誇らしげにニヤッとして「そうだ」と答えた。その瞬間、どこからかプシュッと音がした後、河負知事はその場に倒れこんだ。どこからか黒装束の男が二人現れ、河負知事を黒布で覆い抱え上げ、車に押し込んだ。


 























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