第37話 おから工事

海斗「命綱を断ち切る。いい例が中酷だ。俺は調べた。日本を蹴落とすために奴らは

   受注金額だけでなく、速さを誇っていた。そこが狙い目だった。金額は個人の

   懐に入るから暴いたところで個人攻撃で終わる。そこで安さと速さの自尊心を

   破壊する。奴らが誇る命綱は不動産だ。自転車操業で行えるものでない。完成

   を待たず次から次に。この方法では完成はしない。苺の載らない苺ショートケ

   ーキが次から次へと作られ放置される。放置されれば腐る。セメントの固まる

   のは待たず次の作業に。骨組みなど建材を安価なものの採用、抜粋。地震大国

   の日本ではいつ崩れるか分からない品物。完成間近な建物に購入者を確認に行

   かせる。引き渡されていない物件でも金を払えば自分の物という中酷人の気質

   を駆り立てる。目立てる・欠点を見つけて勝ち誇れるってやつだ。違和感のあ

   る壁を削らせる」

ゲル「自ら傷つけるのか、どうかしているぜ」

海斗「彼らにその行為の後先を考える力はない」

ゲル「行き当たりばったりってやつか」

海斗「論語を忘れた国だからな」

ゲル「それからどうなった」

海斗「壁はおから建築であることが判明。鉄骨がすかすかの空間で曲がっている。引

   き抜いて力を込めると太く見えた鉄骨が飴のように曲がる」

ゲル「ちょっと待て。鉄骨が引き抜けるのか。どうかしてるぜ」

海斗「それが中酷品質だ。見掛けだけは立派でも中身がない。安全より早さだ」

ゲル「高速鉄道も速さに重きを置き直線重視で、振動・騒音が凄いらしいな」

海斗「よく知っているじゃないか」

ゲル「馬鹿にしてる」

海斗「いや、感心しただけだ」

ゲル「まぁ、いい、続けろ」

海斗「奴らを動かすために動機を植え付ける必要があった。ほら、処理水騒ぎでガイ


   ガーカウンターが売れたような」

ゲル「点に唾を吐く行為となったやつか」

海斗「その天に協力を願い出た。脆弱な地域に大雨を降らせ、次いで日照りだ。天は

   ピンポイントで手を下せないが広範囲に脆弱があるから問題なかった。道路の

   陥没、大規模な水漏れ、壁面の剥がれ落ちや看板落下を見せていた。その結果

   おから工事に不安を感じた人の不安を煽ってみせた」

ゲル「そりゃ、怒るわな」

海斗「更に政府を追い込んだ。完成しない建物を完成させろとね」

ゲル「骨組みが脆弱って、基礎工事も危ねーんじゃないか」

海斗「そこがポイントだ。ゲルならどうする」

ゲル「無駄なことはしたくない。金はもう受け取っているから。興味ないな」

海斗「ゼネコンも同じ思いだ。そんな金があるなら、次の物件を作りたい、その方が

   儲かるからな」

ゲル「職人気質だけでなく、商魂もないな。魂がない。だから、奴らが積極的に動い

   ているのか」

海斗「中酷ではおから工事のネタには困らない。体育館の屋根の崩落。その屋根は落

   下の風でフワッと曲がる。舞台の背景が振動で崩れるってね」

ゲル「日常のアトラクションが半端じゃないな」

海斗「政府の指示で完成・引き渡しをしたら最後、大問題が露呈する。後戻りも前に

   も進めない。そんな物件に金など払いたくない。投資物件の価値が下がる。不

   動産が売れない。ローンの支払いが業者・個人ともできない。銀行が潰れる。

   資産が大きく目減りする悪循環を仕掛けている」

ゲル「凄いじゃないか」

海斗「日本ではそうはいかないから根回しが大変だ」

ゲル「わかった、それで次のターゲットは」

海斗「じゃ、行くか」

ゲル「俺様もついていくぜ」

海斗「邪魔はするなよ」

ゲル「あいよ」

   
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る