第35話 ノートと手帳の違い

 山元は置かれた立場を受け入れるしかないと思い、朝を待って島を探索することにした。まず、自分に与えられた居住地には三十程の住居があり、食糧庫があるのみだった。居住地の周りは高い木々に囲まれており上空はネットで覆われ、人工物か分からないが葉っぱが散りばめられていた。ポツンと一軒家ではないが衛星写真から見つけ出すには注意力が必要だった。住居施設の外装は迷彩色であり、発見しにくい状態だった。

 部屋番号が十あるということは十人がここに連れて来られるということか、その一番目が自分だったのか。なぜ、自分が選ばれたのか、これからどうするなど考える時間は余りあるほどあることを再認識していた。先だって緊急を要するのは、真水と食料の心配だった。知らされている食料は一ヶ月分。その後は自給自足。拘束期間は知らされていない。楽して他人を食い物にして生きてきた自分にとって一人生きていく術など考えも学ぶことさへしてこなかった就けが今、現実の問題として重くのしかかっていた。

 日数は、食糧の減り具合で今は知ることができた。火がおこせず海水にふやけた麺を頬張るしかなかった。獣の痕跡や目撃どころか鳥さへも見ることがなかった。食べれる木の実があるのかなど分かるはずもなかった。魚を採るにしても釣具店などない。採っても調理ができない。どんな方法でも火をおこすのが何よりの課題だった。


 海斗は次のターゲット確保に動いていた。


ゲル「海斗、残念だったな。お前が愛読していたノートは気に入らない奴を次から次

   へと粛清できたのにこの手帳ではそれが出来ないからな」

海斗「ゲル、まだ気づいていないのか。もう十分、役立っているぜ」

ゲル「ああん。あの山元もピンピンしてるじゃないか」

海斗「この手帳は前にも言ったが魂界の者への指示書のようなものだ。魂界の者は常

   に私の考えを達成できる者に接近し、動かせるように動いているんだ。今回の

   ことを見ても分かるだろ」

ゲル「?」

海斗「こうしたいと思った時から猛スピード実現したじゃないか。無人島、資金、プ

   レハブもね。あんなに離れた島にあれだけの機材を極秘に運び込むのは至難の

   業だ。まぁ、当初の百人収容は予算と現実的な問題から十と縮小されたが計画

   が現実に則して変更にされるのもだ。取り敢えず動かすことが大事だ」

ゲル「確かに当たり前のように動いたな」

海斗「魂界の者がストックしていた賛同者の思いをこの手帳が繋げ後押しする。この

   手帳は私の思いを汲み取る。だから何もできないのではなく応えてくれている

   ってことだ」

ゲル「それなら、海斗の思うままじゃねぇか」



















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