第29話 手帳の扱い方

 海斗は眠りについて目覚めたのはかなり時間が経ってからだった。


ゲル「目覚めたか」

海斗「済まなかった。会話中に眠るなんて自分でも信じられない」

ギル「危なかったんだぞ」

海斗「何がだ?」

ギル「ゲルが肝心なことを教えていなかったらしい。私は海斗が魂界に頼んでいると

   聞いて安心していたんだが間に合わなかったのか?」

海斗「どういうことだ」

ギル「ゲルのミスだ。同じ式神として謝罪する」

海斗「ゲル?」

ゲル「済まなかった。もう目覚めないのかと心配したよ」

海斗「原因を訪ねている」

ギル「私が話そう。死神手帳の使用上注意だ。この手帳を持った者は七日から十日間

   に使用し、結果を出さなければ睡魔が襲い、最悪、目覚めない場合もある」

海斗「そうだったのか。確認だ。ゲルが言っていたこの手帳の使い方は正しいのか」

ゲル「俺は海斗が気に入っているコミックを真似てみただけだ。信じていたのか?ま

   だまだだなぁ。他人の言葉を鵜呑みにして調べないなんて。洗脳されやすい人

   種の代表みたいだな」

海斗「確かに自分で確認しなかったのは落ち度だった。誤った情報を刷り込まれ洗脳

   された者の愚かさは隣国を見るまでもない。でも、分かったことがある。追い

   込まれれば誤った情報でも出口だと思えば、猜疑心も感じられなくなる、い

   や、感じようとしなくなる。安易な道を選択するものだと」

ゲル「俺のお陰で成長したじゃないか」

海斗「ギル、担当を変わってくれるか」

ゲル「待て、待て。分かった。もう、嘘はつかないから」

ギル「アハハ!ゲルも反省するんだ」

ゲル「反省?退屈な日々が嫌なだけだ。勘違いするな」

海斗「じゃ、この手帳の本当の使い方を教えてくれ。ギル、監視を頼むよ」

ギル「わかった」

ゲル「心配はいらない。じゃ、教えてやるよ。この手帳は海斗が好きなコミックの物

   とは根本的に違う」

海斗「そうだろうな。コミックでは所持者が独裁欲で自滅する。この手帳は、自分の

   意思を容易に叶えられないようにしてあるからな」

ゲル「わかっているじゃないか」

海斗「この手帳の鍵は魂界の存在だな」

ゲル「そうだ。魂界の者と協力して道筋を動かすことによって未来を変えるのさ。以

   前、言ったろ。魂界の者が腐った日本を外から浄化するため米国に渡ったっ

   て」

海斗「良くも悪くもカード前大統領の支援だろ」

ゲル「今は中酷にも出向いている。魂界ではテレパシーと言えば分かりやすいからそ

   うするが言語が異なっても意志が大まかであれ詳細であれ他国の魂界の者と通

   じ合える。中酷ではトップの人間に纏わりつくように不安を擦り付けている。

   その結果、疑心暗鬼になり高官の多くを更迭・処分する嵌めに。神々も大雑把

   になるが大雨を降らし罰を与えている。最も被害を被るのは国民だがな。神々

   からすれば可笑しいことを可笑しいと声を挙げない点で同罪ということだ。日

   本は声を挙げるのは可笑しな輩が多い。その粛清が今回の動きであり、死神・

   疫病神・貧乏神が動員され、人間の劣化を憂いた閻魔大王の進言で警死庁が作

   られたのもそのせいだ」













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