第28話 手帳に隠された制裁発動

海斗「ゲル知っているんだろ、奴らが失敗した原因を」

ギル「ああ聞いた話だがな」

海斗「聞かせてくれ」

ギル「簡単に言えば、権力に胡坐をかぐ高官の自尊心を掻き立て危機感を煽った。高

   官ははキャリアに傷をつけたくない。それを利用したのだと」

ゲル「何かを成し遂げたければ偉く成れって誰かが言ってたな。結局は、正義などそ

   の組織を牛耳る者たちによって白にも黒にも出来る。いや、なかったことにす

   ら出来る。魂界の者が正義感とやらを信じたお蔭で水の泡になったんだ」

海斗「それが民主主義の欠点だ。それを動かすのは評判を気にする奴らに民衆の声が

   襲い掛かるしかない」

ギル「それでどうするんだ?」

海斗「餓鬼に喰われた高官の弱点は国民の声だ」

ギル「国民の声か」

ゲル「どういうことだ。お前たちだけで分かり合うな」

海斗「高官と言えど税金で生きている。その税金を貢いでいるのは国民だ。その国民

   に見放されれば失墜して只の人か高慢さが災いしてそれ以下に成り兼ねないっ

   てことだ」

ゲル「国民の声を煽ろうとしているのか」

海斗「そうだ。魂界の者にSNSの政治系インフルエンサーを探らせ、今回の事案を世

   間に知らしめるように頼んだ」

ゲル「腰巾着のマスゴミは扱わないからな。本来なら現政権を奈落の底に落とし込め

   る大チャンスだが政府を怒らせれば、電波オークションが待っているからな」

海斗「本来はNHKが取り上げるべきだが、利権が剥奪される危険性が大きく、見て

   見ぬ振り。闇を暴けるのは一人では非力でも集結すれば制度を変える力を持

   つ。それには国民の関心を引き寄せなければいけないがな」

ゲル「とは言ってもまだまだSNSの影響力はないだろう」

海斗「ああ、でも口コミが広がれば地雷の山に登るようなもの」

ゲル「ミスを恐れて動けないからな」

海斗「普通はな。でも奴らは目立ちたい。だから、危険を冒しても動く。動けば地雷

   を踏む。踏めばバッシングか炎上だ」

ギル「隣国では自ら命を絶つ者も出ている」

ゲル「そんなの見なければいいじゃないか」

海斗「そうはいかない。SNSってやつは他人が自分をどう見ているか、どう見られて

   いるかが気になるものさ。存在感を得る唯一の手段になっているからな」

ゲル「面倒くさいなぁ。見なけりゃいいだけなのに~」

ギル「一度褒められたりすると媚薬のように支配される。それだけ普段の生活でのコ

   ミュニケーションが脆弱になっているってことさ」

海斗「眠気が襲ってきた。ここ数日、寝てないんだ。死神手帳に書かれているものが

   何なのか探るためにな」

ゲル「それ、不味いんじゃないか」

海斗「なぜだ?」

ギル「教えてないのか?」

海斗「何をだ?」


 その言葉を最後に海斗はその場で眠り込んでしまった。










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