第27話 絡み合う事実
週刊潮旬が販売された。ネットでの注目も高く、異例の速さで完売した。それほど国民の関心が高い事を示していた。渦中にいた政治家・森原清二は、急遽、日本記者クラブでの会見を取りやめた。それが何を物語っているかは明らかだった。
この事件を担当していたのは、坂東祐司警部補。坂東警部補が担当を命じられたのは殺人事件だ。自殺ではない。そもそも、自殺と断定するには傷口や拭き取られたナイフに残る血痕の量、とそのナイフが抜かれ机に整然と置かれていた事など無理があった。
坂東祐司警部補は森本の本妻である文代に幾度となく事情聴取を行っている。そして文代が追い込まれると森本から「いつでも首をとばせるぞ」と脅しを掛けられた人物だった。
その頃、森本は自由党の重鎮・煮貝に呼び出され、離婚を迫られていたが森本はそれを拒んだ。森本にとっては苦渋の選択だった。将来を嘱望される家系を持つ政治家の自分が文代と離婚すれば、文代への警察による捜査は遠慮なく行われ事件に絡んでいることが明らかになる。現職の政治家の妻が殺人事件に関与するという前代未聞のスキャンダルは岸部政権をも揺るがしかねない事態を招く恐れがあった。
坂東祐司警部補は森本からの圧力にも屈せず文代への事情聴取を行っていた。捜査が佳境を迎えた時、突然、上司から捜査の終了を告げられた。霜本警視庁長官は事件性がないと発表。これには現場捜査員・関係者は、憤りしか感じず、虚しさと悔しさで煮え湯を飲む思いでいた。現職の立場では逆らえない、それが組織だ。
映像が流れた。
坂東「警察庁長官の発表には頭にきた。何が事件性がないだ。真
面目に事件に取り組んできた私たちを馬鹿にした発言だ。
さらに、適正に捜査、調査が行われた結果、証拠上、事件
性が認められないと警視庁が明かしているだって、現場の
誰がそんな馬鹿げた結論をだすんだ。事件性の判断すら出
来ないのか。明らかにこれは殺人事件だ。中断させておい
て事件性がないだって、どの口が言えるんだ。自殺だと言
い張るならその証拠を持ってこい。これでは被害者も遺族
も報われない」
海斗「ゲルは仕事をしたな」
ギル「俺が仕事をしていないみたいじゃないか」
海斗「分かっている。お前の出番はこれからだよな」
ギル「分かっているじゃないか、で、俺は何をする?」
海斗「繋ぎを取ってくれればいい」
ギル「つまらないなぁ、俺を馬鹿にしてる?」
海斗「してないさ。でも坂東警部補の気持ちは分かるんじゃない
か」
ギル「ああ」
ゲル「海斗、ギルにはギルの役割があるんだ」
ギル「やっぱり、俺、馬鹿にされてる?」
ゲル「してない。そうだコールドケースの女捜査官も無念だった
ろうな」
ギル「確か、魂界の者が憑依した奴だな」
ゲル「刑事組織犯罪対策課強行犯捜査係長だ」
ギル「奴らが憑依して動いたのに失敗したのか」
ゲル「そうみたいだ」
ギル「奴らも大したものじゃねぇな」
海斗「やつら、も」
ギル「やっぱり馬鹿にされている~」
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