第25話 大物政治家の本妻が関わる事件?

 正雄が目にしたのは、足元に転がる忠雄だった。血だまりが出来ていた。この惨事に家の者が誰もこの場にいない。正雄は只ならない状況に最悪な状況を考えていた。「警察、警察に連絡をしないと」。でも、住所が分からなかった。文代を探し、聞き出せばいいだけだが、もしかしたら、文代も孫も…。そう考えると探すことが恐ろしくなり、外に出て電柱にある住所を探し、警察に連絡をいれた。正雄は警察が来るのを家の外で待っていた。少し落ち着きを取り戻した正雄は、住所のある電柱を探している時、不審な男を目撃していた事を思い出していた。その男の足取りは覚束ず、手には棒状のモノを持っていた気がした。追いかけたが角を曲がった所で男を見失った。錯覚か…。正雄には分からなかった。警察が来た。状況を説明し、警察が行動を起こすと一気に騒々しくなった。正雄は慌ただしく動き、家から出てきた警官に「文代と子供たちは無事か」と聞いた。警官は小さく頷いて「無事だ」と答えた。

 

 ギルが海斗の額から指を離すと映像は途絶えた。


海斗「どうした、もう終わりなのか」

ギル「まだある。が、一旦CMだ。トイレに行ったり、簡易な用

   事を済ませる時間だ」

海斗「待て待て待て。CMがあるからタダ見られるんだぜ。ちゃ

   んと見て貰いたいものだ」


 海斗は広告制作会社に勤めていた。今は独立して細々ながら、生きていた。会社を辞めた理由は自分の時間が欲しかったから。甘い考えで独立したが人間関係に恵まれ食ってはいけていた。仕事に追われ自分の時間が取れず、将来を考え、遊びより投資に金を注ぎ込んでいた。


ギル「そうなのかぁ。トイレタイムだと思ってた。そうなんだ。

   あっ、続きはあるが不確かだからダイジェストのダイジェ

   ストで見せるぜ」

海斗「今観た映像はなぜあるんだ?」

ギル「魂界の者からの提供だっていっただろ」

海斗「じゃなくて、なぜ、その魂界の者が現場で見たようなもの

   を所持してるのかということだ」

ギル「魂界の者は未来に影響を与える者、駒として使えるものを

   日々探して見つければ農耕よろしく、長い時間をかけて育

   てる。桃栗三年柿八年ではないが、三年・五年・七年・十

   二年単位で継続か否かを決めるらしい。文代もその一人だ

   ったらしい。女性の場合特に社会的地位や影響力を持った

   者と接触する独特な臭いっていうか感覚を受け、憑依する

   らしい。同意のない憑依は簡単に言えばお試し期間ってや

   つらしい」

海斗「単なる殺人事件が関わる人間によって複雑化するってわけ

   か。文代の仕事柄、社会的地位や影響力を持った者と接触

   する可能性が高い、いや、奴らが導くんだな」


 奴らとは魂界の者や貶めるのに旨味のある人間に無断で憑依し、引き摺り落とす邪鬼、それを束ねる餓鬼だ。魂界の者が後先考え選択肢を選ぶのに対し、餓鬼たちはその場凌ぎの悩める者が受け入れやすい選択肢を後先考えず、用立てていた。


ギル「分かって来たみたいだな」

海斗「ギルが言う不確かというのは文代が直接関わっていない人

   間関係が生じたってわけか」

ギル「よくわかったな。その通りだ。魂界の者が関心を持ったと

   いう事は反対勢力の餓鬼や邪鬼も同じだ。文代は魂界の者

   が躊躇っている間に憑りついて文代の運命を奈落の底へと

   導こうとしていた」

海斗「それは少し違うんじゃないか」

ギル「何がだ」

海斗「その餓鬼や邪鬼は文代を使ってより大きな不幸を喰らいた

   がっているのが本筋だな」

ギル「そ・そうなのか?だから不確かなんだな。餓鬼や邪鬼が運

   命を変える。それを見守るしかない魂界の者って図式か」

海斗「そう思う。餓鬼や邪鬼は人生を壊すか、壊したくない気持

   ちを逆手に取り更なる悪匠で悪の沼に引き込み、怯えを喰

   らうか。奴らがどう舵をとるかだな」

ギル「じゃ、それらを踏まえて観て見るか」

海斗「頼むよ」

ギル「分かっているみたいだから口を挟んで構わないぜ」

海斗「それでいい」

ギル「忠雄と文代との出会いは…いいか割愛して」

海斗「ああ、どうせいい女が不良に誑し込まれるお決まりパター

   ンだろ。その時点で魂界の者が関わってはいないのであれ

   ばよくある話だからな」

ギル「あいよ」


 映像が淡々と流れ始めた。その補足をギルが行った。


ギル「餓鬼が関わり単なる殺人事件は怪しさに包まれる。首に刺

   した刃物を抜き取る。それも刃の部分の血を拭き取って。

   文代の父は警察関係者が関係したのか、別れ話に絶望した

   薬物で錯乱した忠雄が発作的に自殺を図ったと結論づけさ

   れた。これを良しとしない魂界の者が警察関係者に憑依し

   人間関係を辿り、事件を動かした」

海斗「やるじゃないか」

ギル「魂界の者が警察の善意の上層部に接触し、未解決事件を担

   当する警視庁特命捜査対策室で取り扱うことになった。コ

   ールドケースを担当する女性捜査官は魂界の者が既に同意

   して憑依し、有能さを周囲に認めさせていた者だ」

海斗「待て」

ギル「何だ」

海斗「警察として解決した事件なのになぜ、コールドケースが扱

   うんだ」

ギル「いい所に気が付くじゃないか。警察内部にもこの事件に不

   審を抱く者がいたってことだ。何らかの圧力を受けたが善

   意の意地が不思議な記録として残ったんじゃないか」

















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