第23話 魂界が撒いていた種

 ギルに言われるまでもなく、海斗は焦りを感じていた。今更ながら名前を書けば実行されるシステムが如何に使いやすいのかを実感していた。その時、人の善悪を監視する和御魂・ゲルが現れた。


ゲル「教えておきたいことがある」

海斗「何だ」

ゲル「魂界の者が面白い事を言っていた。岸部政権の副幹事長の

   森原清二という奴の妻が殺人事件を犯しているのではない

   か、とね」

海斗「それが私とどう関係する?」

ゲル「事件をもみ消したかも知れない大物政治家がお前が狙って

   いる煮貝ならどうする」

海斗「面白いじゃないか。詳しく聞かせてくれないか」

ゲル「魂界の者が見せてくれた映像を覚えている範囲で良けれ

   ば」

海斗「ゲルが見た映像を私にも見せて貰えないか」

ゲル「私もそう思い聞いたが、波長が合わないとの事だ」

海斗「その者と直接話せもしないのか」

ゲル「残念だったな」

海斗「面倒だな」

ゲル「誰でもいいわけじゃないってことだ」

海斗「じゃ、ゲル聞かせてくれ」

ゲル「行動を同じくするお前には話すより、私の記憶に入ればい

   い」

海斗「そんなことが出来るのか」

ゲル「お前が愚痴ったような機能が使えない代わりに、魂界の者

   を使える。そのお蔭だ」

海斗「…。ゲルは私が考えたことが分かるのか」

ゲル「済まない。聞くつもりはなかったがお前の興奮度合いが気

   になりシールドを外した瞬間に聞こえてきたものだ。普段

   は聞こえないから安心してくれ」

海斗「シールドやらを外せばいつでも心を読めるってことだな」

ゲル「裏読みするな!」

海斗「怒ったのか、済まない。気を直して見せてくれ」

ゲル「ああ。注意点は映像が終わるまで一切、遮ったり、ちゃち

   ゃを入れるな。人間の息が掛かれば記憶は消えるからな」

海斗「わかった」

ゲル「じゃ始めるぞ」


 ゲルは海斗の額に右手の人差し指を押し当てた。その瞬間、海斗の脳裏に映像が流れ始めた。

 

 ホステスをやっていた藤原文代は、安田忠雄と同居していた。忠雄は薬物の常習犯だった。文代は将来を考え、忠雄と別れる機会を伺っていた。そんな時に客として訪れた好みの森原清二に出会う。文代は積極的に森原に接した。森原の家系は大手銀行の幹部であり、彼自身も政治家として将来を期待されていた。文代には圭祐という子供がいた。

 夜の社交場デビューして間もない森原は文代の色香に翻弄された。文代にとって忠雄は今まで以上に邪魔な存在な存在となった。忠雄も夜の世界の人間。文代の新たな男に気づいていた。自分と比較して別世界の男、勝負にならない。嫉妬心がなかったわけではない。忠雄は嫉妬心を紛らわすようにより薬物に嵌った。文代は事件当日、別れ話から重大な事件を巻き起こす。


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