第22話 最大のミス

ゲル「で、この手帳で何をするんだ?」

海斗「それなんだが、これを見てくれ」


と海斗はネットニュースをゲルに見せた。そこには肩身が狭くなった親中議員の代表格の煮貝が提唱する案が記載されていた。世の中、いや世界が中酷から距離を取ろうと何かと理由を見つけデカップリングを模索していた。それに危機感を悟った煮貝は中酷との関係で甘い汁を吸う経済界に呼びかけ、一万人で訪中し、関係の深さを世間にアピールする狙いで画策したツアーの記事だった。


海斗「面白いじゃないか。目障りな連中を一網打尽に出来るチャ

   ンスだと思わないか」

ゲル「一万人だぜ。お前、そんな多くの人間を調べるのか?」

海斗「お前、単純だな。鵜呑みは馬鹿な証だと言ったのはお前じ

   ゃないか」

ゲル「こりゃ、一本取られたな。で、どうするんだ?」

海斗「腐っても経済人だ。移動には飛行機を使うよな」

ゲル「うん?待て、待て。飛行機を墜落させるのか」

海斗「それもいいかも」

ゲル「参加者は対象だからいいとして、搭乗員は関係ないだろ

   う。一般人を巻き込むのか」

海斗「運が悪かったとでも思って貰おうか」

ゲル「お前、死神より悪魔だな。そんなのは管理者として絶対、

   認めないぜ!」

海斗「そう怒るな」

ゲル「セキュリティ強化の意味が分かったよ」

海斗「一般人を巻き込む気はない。一般人は洗脳された者を目ざ

   まさせる駒だ。それを自ら減らすほど愚かじゃない。洗脳

   されていた者が洗脳を解く、いや、対応することで、世間

   は大きな関心を得るだろうからな」

ゲル「洗脳はそんなに甘くないぜ。餅は餅屋にとは行かないぜ。

   過去の事例からもな。洗脳された者は解かれた者を誤った

   選択をした落伍者だと思う傾向がある。藁に縋った藁を今

   更、否定できなくなっているからな」

海斗「分かっているじゃないか」

ゲル「洗脳された者同士を闘わせるんじゃないのか」

海斗「そんなことは時間の浪費だ。言ったろ、世間に知らせるこ

   とだと。人は見下げるターゲットを探している。そのター

   ゲットを絞らせることが目的だ」

ゲル「昔で言う村八分ってやつか」

海斗「長く生きてるだけあるな」

ゲル「まぁ、思うようにやってみな」


 そう言って海斗の元を去ってから一週間が過ぎても何もおこらないのにゲルは痺れを切らした。


ゲル「海斗、何も起こらないじゃないか」

海斗「奴ら、動かないんだ、諦めたのか」

ゲル「知らないのかお前」

海斗「何をだ」

ゲル「甲野多郎の親父の号令で経済界から77人が訪中したぜ」

海斗「この俺が見逃した?」

ゲル「大したことないなぁ、お前の自信」

海斗「うぐ・・・」

ゲル「煮貝もからんでるぜ。沖縄の玉置も一緒だ」

海斗「あの訪中がそうだったのか」

ゲル「大丈夫か」


 海斗の大失態だった。海斗が見逃している間に煮貝は秀欣平と若者の交流を通して日本侵略の手立てを進めていた。一方、玉置は尖閣などには触れず沖縄の経済の先行きを中酷依存で行く密約を結んでいた。そこには沖縄を廃県にし、新たに琉球とする約束を中酷と結んだ。中酷ではこれ幸いに琉球と中酷の繋がりを強調したプロパガンダの記事が中酷本土を席捲していた。沖縄は琉球総督によって琉球となった大騒ぎしていた。これで、日本は沖縄を捨て中酷と手を組むという道筋を風潮していた。

 その裏では五月蠅い親中の玉置がいない状態で台湾立法院のトップが与那国島を訪問していた。台湾有事になれば最も近い島、避難所でもある。台湾と中酷がやりあった際、台湾の飛行機が与那国島に避難した際、中酷に引き渡さないようにと日本政府へのアピールだった。お花畑の日本政府は崖っぷちにたたされていた。中酷からの引き渡しに応じれば西側諸国から弾かれると同時に中酷に跪いた事になる。日本がNoを突きつけた瞬間、琉球総督たち琉球人を守るんだと中酷は日本への侵攻を今回の玉置の動きを証拠に国際社会に訴え、正当化する。勿論、ウクライナのようにはならないが、これは経済界、政界に巣食う親中輩の結束を高めるには大いに役立つものだった。

 大阪万博が開かれる。親中党の一新の会はEV送迎バスを中酷から100台購入を決定した。走る時限爆弾と言われているバスだ。何も起きなければ喉元過ぎればだが、気温の高低差が大きい気候の中、トラブルが発生すれば、乗員は全員一瞬にして丸焦げだ。大阪民の目を覚まさせるいい機会になるだろうと、海斗は思っていた。しかし、そこに外国人が混じっていれば、採用責任が日本に夥しい怒りとともに押し付けられる。

 依存し過ぎた結果、離れられなくなる。安易な行動のツケが回ってくるという事だ。


 海斗は自らの落ち度を反省し、今後を思案していた。


ゲル「海斗、言いたくないが、これが本やドラマなら飽きられて

   見向きもされなくなるぜ」

海斗「分かっている」


 海斗の焦りは思考を停止させていた。



 




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