第12話 死神手帳02-やばいよ、やばいよ。
黙秘するのは悪い奴。
正義論など馬耳東風。
馬脚を現すのは絵踏み。
悪い奴なりのプライド?
腹を括らずあっちにこっち。
風見鶏に理念なし。
保身第一、逃亡第一。
強風、脅威に晒されれば
すたこらサッサ。
逃げ足だけは、速いようで御座います。
送り主不明の木箱に入っていたのは、死神手帳だった。ただ、見たことがない表紙の色だった。一枚のメモが添えられていた。そこには、新人の死神に与えるものだったが適正に問題が生じ暫く預かるようにと記されていた。
仁と龍厳は「これはひょっとして…」と顔を見合わせた。仁は死神のメフィを呼んだ。メフィも初めて見る死神手帳に興味を示した。表紙が黄色であり、初歩的な扱い方も添えられていた。メフィが気になったのはこの手帳の所有者だった。死神は手帳と共に存在する。失えばゾフィのように粉塵と化す。この手帳は真新しく所有者がいない。死神手帳は伝承するのが通例だ。所有者の死神が昇格や不祥事を犯した場合に名義が神界によって書き換えられる。メフィは真っ白な手帳を手に取った。その瞬間、メフィの手に電流が流れ手放した。落とされた手帳は黄色に染まった。そこで龍厳が気づいた。これは色の三原色ではないか。だとすれば…。仁は厄病神のフキ、貧乏神のビンドゥを招聘した。それぞれが手帳に触れた。フキが触れると赤紫色に、ビンドゥが触れると青緑に変わった。そして放電した後、表紙は黒光りした。
龍厳は鴉に関する逸話を思い出していた。色鮮やかなものを鴉は欲張った結果、黒光りになったことを。通常の死神手帳は、色んな思いが滲んだ黒光りだった。
添付されていたメモの文字が消え、初期設定完了と浮かび上がった。そして新たなメッセージが浮かび上がった。この手帳は混雑したパラレルワールドを見せるものである。目指す世界を描くがいい、と。
冥界の仁と義、三厄神のメフィ・フキ・ビンドゥ、魂界の龍厳はこの手帳が神界の何者かが届けてくれたものだと確信した。全員が手帳に触れた。すると新たなメッセージが浮かんだ。ここで行われた粛清は偶像である。しかし、見えなくとも導きの道を築くだろう、と。
警死庁死霊課粛清係の面々は、方向性を見出すため、この手帳を活用することにした。そこには問題があった。死神はリストに上がった者を霊界に導くだけで自ら死者を選択できない。
龍厳が今回の現象を解いて見せた。
龍厳「本来の所有者の死神に渡さず我らに齎した。それはこの手
帳が人間に渡った今回の事案を考慮しての事かと」
義 「では、魂界でこの手帳を渡す人選を任せましょう」
龍厳「承知」
奇しくも日本では組長戦が行われていた。あぶく銭に目が眩み沼から抜け出せなくなった大阪。そこで勢力を根付かせた一新の会は、安倍川元総理が命を落とし、自由民党の選挙本部が混乱する奈良にターゲットを絞った。強酸党は関連する企業を使い引退を決意していた老体に組長への執着心を掻き立てた。長年、組長に居座った老体は自由民党の意志に逆らい、古参の議員を用いて強引に出馬。重大な事件の影響で選挙に出遅れた自由民党は、実績と危機感の狭間で候補者を一本に絞る英断を下せないでいた。
更にこの選挙区の責任者に無理から就かせた高倉大臣の追い落としに自由民党の内部の悪代官である毛木幹事長に同じく親中議員の煮貝も加わる最悪な状態となった。
高倉の応援を立憲強酸党の大東に国会で邪魔をさせ行動を制限させ、セキュリティクリアランスの成立をも阻止しようと動いていた。それにもめげず新人の平紀省吾は無所属で出馬し大健闘を見せた。それに焦った毛木と煮貝は平紀省吾事務所に送り込んだ衆議院議員・田別細道と細野不四夫を使い、選挙事務所からの企業へのお願いに老体への支援をお願いしていた。
そのような工作がバレないはずがない。有権者からの疑問・不信感を受け調査して田別と細野議員が浮かび上がる。それを悟った両名は自宅に帰らず行へを眩ます。
仁 「何だこれは!」
龍厳「これが現実ですよ」
義 「腐っている」
厄病神のフキ、貧乏神のビンドゥはニヤッと笑っていた。彼らは憑りつく相手を見つけ喜んでいるようだった。フキとビンドゥは姿を消した。
死神「あいつら、早速動いたな。今回は協力し合って吸い尽くす
つもりだな。でなければ同時に消えないだろうからな」
龍厳「ならば、私も動きますか。魂徒を彼らに仕向け、保身の種
を撒くとしますか」
義 「仲間に追い詰めさせて被害者意識を芽生えさせるのか」
仁 「魂界は怖いぞ。追い込み方が無情だから」
龍厳「ふん、情を掛ける価値などありますかな」
義 「ないな」
仁 「龍厳、手帳を人間に使わせればその者はどうなる?」
龍厳「無の世界送りでしょうな、普通なら。でも、そうはならな
いでしょう。でなければこんな方法で通常じゃない手帳を
新規で設け届けないでしょう」
義 「手帳の効力は変わらないが使った者にはお咎めなし、か」
龍厳「私はそう読んでいます。仮にそうでなければ私が引き受け
ますよ」
仁 「それは霊界入りではないか」
龍厳「使う者には承諾は取りますよ」
義 「割り切り方が尋常ではないな」
龍厳「お褒めに預かりまして」
義 「怖いだけよ」
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