第7節
ある程度の扱いができるようになってから、気になってみんなに声をかけた。
「おーい。少し情報交換と行かねーか?」
「あぁ。いいぜ」「りょうかーい」「わかった」
とそれぞれが返事をしてくれた。
「まずは俺からでいいか?」
と、うずうずと落ち着けない様子でストラーフが言う。かなり自信があるらしく自慢したがっている。
「俺はな!この武器を選んだんだ!」
拳にはめたメリケンサックを頭上に掲げて言うストラーフ。
「これ普通のメリケンサックに見えるけど、はめると威力上がるんだぜ!すごくね!見てろよ!」
早口でまくし立てるストラーフは天井につり下がっているサンドバックを前に大きく振りかぶる。そして繰り出される拳。天井にチェーンで固定されているはずなのに、ものの見事にひしゃげてサンドバック本体は後方へと飛ばされている。
「どうだ!!」
確かにこれはやばい。本人の馬鹿力があってこそだがこの威力はすさまじい。
「スゲーけどなんでこれを選んだんだ?」
「一番上にあったから」
「「「・・・」」」
単純。それ故に馬鹿。馬鹿力で本当に馬鹿。結果的にストラーフにはいい武器だったかもしれないけども!
「じゃ、じゃあ……私」
気まずい空気を振り払うようにアメリカ。
「私はこれ」
そういうとアメリカは手にのっけたナイフを見せてくる。
「…………小さいな」
「アメリカはなんでこれを?」
と会長が問うと。
「私、力あまりない、から。小さくて扱いやすいものにしたくて」
「「あー」」
納得する俺と会長。
「なんでだ?武器は火力だろ?」
何言ってるんだこいつは。案の定ストラーフはアメリカに顔面パンチをくらった。力はないといっても怒ると力は出るんだなと言おうとしたら、すごい目で見られた。こわぁ。
何とかその視線から逃れるために次は俺が言うことにした。
「お、俺はこのマスケット銃にしたよ。二丁持ちでね」
二丁のマスケット銃を構えてみる俺。我ながらかなり恥ずかしいことに気づいた。恥ずかしい。
「難点は銃を撃った時の反動が大きいのとまだ命中率が低いことだな」
気を紛らわすために俺がぼやくと
「君の腕は大丈夫なのかい?見た目はかなり重そうだけど?」
会長が心配してくれたようだ。
「ん?ああ。俺は戦闘能力は高くないのは自分でもわかってるけど筋力がないわけではないからな」
「いい筋肉だ!!!!!」
「うわ!やめ、お前!」
急にストラーフが俺の腕をつかんで叫んできやがった。「いい肌肉だ!!!!!」じゃねぇよ。そこじゃないだろ。
「なんで君はこれに?」
と会長に聞かれたので、ストラーフを無理やり腕から引っぺがし答える。
「俺の魔術って後方支援型っぽいし、遠距離で味方のサポートができるものがいいかなって」
「ふぅん」
「自分から聞いといてなんだよ……」
「いやなに、私も理由がかぶってしまったと思って」
「会長の武器は何……?」
とアメリカ。会長はピアノ線を手に持って
「私も全部は把握しきれていないんだが、これは発声魔術を使うことで操ることができるらしい。思ったより扱いが簡単で汎用性も高いよ」
と語ってくれた。簡単だと思うのあんただけだよ会長。俺も1回手に持ってみたが、まるで反応しなかった。
「理由は明智君と一緒で中遠距離でサポート系の方がいいかなと」
そこまで会長が語り終えたところで再びホログラムが表示される。
「ん~。そろそろいいかな。皆さん、武器は決まりましたか?それでは次に行きましょう。次は皆さんの魔術属性を測りますよ」
マークロー先生がそう言うと4枚の紙が落ちてきた。
「1人1枚皆さんにお配りした紙は魔術属性を測るために使うもので、皆さんにはそれを使って測ってもらおうと思いまーす」
おお!魔術属性!ついさっき授業で習ったばかりの単語だ。たしか火、水、土、空、闇、光の6つに分かれる魔術の性質のことだったよな。
「やり方はまず紙を両手で強く挟んで、合掌するときみたいな感じに。そしたら気合を入れて何か叫ぶ。と何かしらの反応が見れる、と思う。ま、とりあえずやってみて」
言われるがまま両手で紙をはさみ叫ぶ!
「フン!!!」
シュル
手を開けると真っ二つに切れた紙。しかし手のひらに怪我はしていない。奇妙だ。どうやらこれが俺の属性らしい。
「そろそろ結果が出た頃でしょうか?魔術属性は大きく分けて6種類。火、水、土、空、闇、光です。紙が燃えれば火、濡れれば水、萎れれば土、切れれば空、なくなれば闇、発光すれば光になるよ」
と先生からの説明が入る。つまり俺は「空」属性ってことか。
「おーい」
何ができるかまだ分からないがこの武器と魔術を合わせてどんな戦い方ができるのか考えるだけで楽しい。
「聞こえますかー。おーーい」
空だから空間を操るだったかな。それだったらなんか変則的な動きとかできるんじゃないか?応用も聞きやすそうだ。
「おーーーい!」
「っるさい。なんだよストラーフ」
「お前なんだった?」
「空」
「あー。そんな感じするわ」
「何がだよ……。お前は?」
「火」
「あー。なんかそんな感じしてるわ」
「だろ?」
「あー……。うんそうだね」
「なんだよ」
「いや面倒だなぁと」
「普通に失礼じゃねぇか」
「ハハッすまん。ちょっと紙見せてくれないか?」
「これか?」
ストラーフの手に握られている紙は見事に焼けており、黒ずんでいる。
「これ、熱くなかったのか?」
「いや全然」
これまた奇妙。面白いもんだな。会長とアメリカにも聞いてみるか。2人は話し合っているようだ。
「ふたりともー、紙どうなってるー?」
すると会長が
「ん?私は消えたぞ?」
アメリカが
「私は……濡れて、破れた」
と。会長は闇でアメリカは水らしい。詳細を聞いてみるとやはり奇妙で、会長は気付いたらなくなっていたと。アメリカも濡れてる感覚はあまりなかったと。魔術そのものには水だとか火だとかを生み出す力はないらしい。あくまでそれによる結果が残るだけってことか?
「この魔術属性がどのように役に立つかというと」
唐突に先生が話を再開した。
「端的に言えば武器の出力、攻撃の手数が増えます。稀に支援魔術が得意な人もいますがそれは今回省きますね。例えば」
そういって先生は懐から小型のガンブレードを取り出して顔の前に構えて言う。
「流れよ」
するとガンブレードの刃の部分に意志を持ったかのように水がまとわりつく。
「このように武器に魔術を付与することができるわけ。これ以外にも」
今度は手を突き出して手に水球を作る。それをさらにさまざまな形に変えて、飛ばす。速度も変幻自在に操っている。
「このように攻撃の手数としても加えることができるってこと。えーまことに恥ずかしながら、ポーズと口上は自分の趣味です。気にしないでくださいね。はい。そして、魔術は戦闘において重用な要素の1つであることは間違いないです。最大の努力をつぎ込んでください」
と締めくくる。
「それでは実際にやってみましょうか。水球を作るなどの実体を操るのは難しいですが、事象による結果を操るのはそこまで難しくありません。魔術元素を動かす感覚をつかむことさえできれば簡単に操ることができるでしょう」
と軽~い感じでやってみろと言われてそんなすぐ出来たら苦労はし……
「おりゃぁ!」
ボワッ
お、おう。前言撤回するわ。ストラーフの拳に火がついてる。比喩ではなくガチで。マジでできるのかよ。いやマジかよ。マジかよ。
「漆黒の風を持って目標を捕縛し、消し去れ!!!」
「いや何やってんだよ会長。ってあぶなぁ!」
やばそうなオーラを漂わせながらこちらに近づいてくるくるピアノ線。突っ込んでる場合ではなかった。何とか振り切ると会長が
「ふふん。どうだ?」
みたいな顔して立っている。腹立つ。
てかクソダs……じゃない、口上はいいとして普通になんでできるんだよ!
「……切って」
そっと近くでアメリカの声がする。後ろを振り向くと小型ナイフを握りしめ、人形を切らんとするまさにその瞬間のアメリカがいた。小型ナイフは水をまとっていて……。あわわ。みんな普通にできてらっしゃる。
パシュンっといい音が鳴り左側から斜めに真っ二つにされる人形。絶対はわたり足りてないだろ……。もういいや、俺だってやってやらぁ!
「風よ!」
やけくそでマスケット銃を構えてぶっ放す。周りの空気が少し動いたのがわかる。銃口に引き寄せられるように動く空気はやがて爆発音とともに弾丸の加速を補助する。
ありえないほどの爆音と瞬足でトレーニングルームを駆ける弾丸は的を突き抜け壁にそれなりのクレーターを作って着弾。あ、あれ?こんなはずじゃあ……
「君が一番やばいだろ!!」
「お前が一番ダメだろ!!」
トレーニングルーム全体に大音量の突っ込みが響き渡った。
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