♪43
キィィと音が鳴って開いた扉の先は、久しぶりに見る光景だった。電気はついていないが、窓から差し込む日差しで廊下が照らされている。ご飯を取るときにしか見なかった光景は、立って見ればまた違う世界だった。
1階からはテレビの音が聞こえてきて、いい匂いがしている。おそらく母さんが昼ご飯を作っているんだろう。
階段を1段下りると、改めて自分の運動不足を思い知らされることになる。下りる度に筋肉が悲鳴を上げている。それでも、この1歩を踏み出さないといけない。この先にあるのは、きっとこんなもんじゃないはずだ。だから、
「母さん、久しぶり。」
「久しぶりね。彪河。」
俺はこの世界にいなければならない。いつまでも檻の中なんてゴメンだ。俺は、自分で籠った殻を破らないといけない。それでやっと自分を許せる気がする。
「昼、こっちで食べる。」
そう言って椅子に腰掛ける。母さんは1度驚いた顔をしたが、すぐに柔らかな笑みに変わって、
「分かったわ。」
そうとだけ言った。
『何も知らない 世界に堕とされた僕たちは
何を辿って ここまでやってきたんだろう
誰も知らない 世界に近づく僕たちは
誰を信じてそのエスカレーターに乗ったんだろう
地獄の閻魔様が待ってる分岐点に
僕らはなんで喜んで進んでるのだろう?
未来も過去も見渡せば間違いだらけさ
あのときの選択を後悔する
夢のカケラにはいくつもの色が宿って
君と僕の道 交わる点を指すよ
夢に見たあの希望の空に
偽りの僕の手を差し伸べて
何も見えない 世界の中の僕たちは
何を辿って レールを見つけたんだろう
誰のものか そこに置かれた松明は
そんな疑問もとっくの昔になくなっていたんだ
天国の白いゲートがそびえる所まで
僕らはなんでそこだけを夢見ているんだろう?
未来も過去も見渡せばバラバラなピースさ
正解のルートなんか書いちゃいない
地図の指し示すいくつものチェックポイントって
君と僕の道 踏み外してでも探すの?
正解はその場所で合ってるの?
ひねくれた僕の心の声がする
君と見た空の色を思い出せそうになくて
君と見た星の数を思い出せそうになくて
君と歩いたあの道を辿りたくて
僕はここを出なくちゃいけない
夢のカケラにはいくつもの色が宿って
君と僕の道 交わる点を指すよ
黄昏たあの夕焼けの空に
陰りのない本当を探しに行こう
終わりのない本物を見つけよう』
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