♪42
やっと現実が見えてきた気がする。
桜花と俺の生きる世界が完全に分かつまであと1週間。桜花が死んだ日から数えると明日で6週間になってやっとだ。桜花がいつも座っていたベッドからも桜花の匂いが消えていき、俺の匂いが染み付いてきた。桜花の匂いの安心感が少しずつなくなっていっているのが悲しくなってくる。
素直に考えたら、俺は桜花に依存していたのかもしれない。そうでなかったら、学校を辞めるのも簡単じゃなかっただろう。なぜなら、辞めたとて桜花との繋がりは切れないと信じていたからだ。現にそうだったし。いつまでも桜花は俺に優しくて、俺はその優しさに甘えていたんだろう。何かあっても桜花がいる。そんな単純な考えで動いていたんだろう。
「情けな…」
引きこもりの俺がそんなことを信じていたなんて、そんなに桜花に甘えていたなんて…
桜花のためなら変われるのか…
もしそうなら…
いや、1回だけ…
あと1回でいい。あの青空の下へ。
俺は部屋のドアノブに手をかけた。
『夕暮れの街の 空を見上げて遠く叫ぶよ
「変わりたい」と
僕はいつまでも殻にこもったまんまだったから
少し踏み出せればいいんだと
僕の初めの1歩はみんなのずっとずっと下の方で
足掻いた希望のその先に見たいものがあるから
キラキラ光る毎日を 眺めていたんだ
虹がかかった毎日を 夢に見てたんだ
僕の心の厚い殻を 破れたら
きっと君に向き合える
終わらない旅の 空を見上げて遠く叫ぶよ
「変わりたい」と
仕組まれた世界の闇しか見てこなかったから
少し光を見てみようと
僕の初めの1歩はみんなのマイナス100歩目で
光の届かぬ階段を踏みしめて行くんだよ
ダラダラ過ぎた毎日を 嘆いていたんだ
雲におおわれた毎日を 過ごしてきたんだ
小さくなった瞳孔を 開いたら
きっと君に向き合える
そのドアノブを 強く捻れば
真っ直ぐ続く 晴れ渡る空
君がいるから 強くなれたんだ
地平線の向こう側まで 続く光の道
真っ暗になった毎日を 灯してみたんだ
バラバラになった毎日を 集めたかったんだ
365個あるピースを 繋いだら
夜の帳が壊れる
キラキラ光る毎日を 過ごしてみたいよ
虹がかかった青空を 駆け抜けてみたいよ
光り輝いた毎日を 夢に見て
きっと君に伝えられる』
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