♪18

「グッローーーー!」

「うっせぇ。」


今日もまた桜花が俺の隣で、俺が読んでいる漫画を見ている。途中からだから内容はあまり分からないだろうに。


「最初から見た方が分かるだろ。そこの本棚あるから勝手に読んどけ。」

「やーだ!彪河の隣にいたい!」

「隣で読んだらいいだろ。」

「同じの読みたい!」


まったくわがままなお嬢さんなこと。さっきから耳に吐息が当たっているが、どうにか理性を働かせて我慢している。あ〜俺かわいそ〜。


「次の巻取りたいから一旦どいてくれ。」

「ラジャッ!」


一旦離れてくれたが、取ってまた座るとすぐ隣にくっついてきた。


「お前は磁石かなんかか?」

「じゃあ私がS極で、彪河がM極だね。」

「Nじゃねぇのかよ。」


そこの理由は聞かないでおこう。触らぬ神に祟りなし。


 まぁ、「どいてくれ」と言ったらどいてくれるだけマシだろう。トイレとか風呂とかまで一緒に来られたらもう大変だ。そんなことは考えたくないが。


 ここで1曲。『ゼロピコメートル』


『耳に触れる吐息に 鼓動が速くなる

こんなにも単純だなんて 思ってなかった

君のことはどうとも 思ってなかったけど

そんなことされたら ズルいから


好きか嫌いかなら多分好きで

嫌かどうかなら何ともなくて

ただ僕のその1ページに

君のことが当たり前にあって


ちょっと駄々っ子で

ちょっと面倒くさくて

でもそれが全部心地よくて

君の心と 僕の心の隙間

多分ゼロピコメートルだね



腕に触れる温もりに 身体が熱くなる

こんなにも素直だなんて 思ってなかった

君はいつも通りだし 特別な事は無い

当たり前になっていたんだと


青い春なんか顔も見せずに

抗うことさえ忘れていたし

ただ君のその視界に

僕なんかが入っていいの?


ちょっとひねくれてて

ちょっと面倒くさくて

でもそれが全部僕だって

君の言葉が 僕の心の溝を

埋めてくれたみたいで



指の隙間から零れる幸せ

きっと僕は君の足枷

だけど僕のところまで降りてきて

そっと手を差し伸べて

笑って呼びかけてくれて

それだけで世界が明るく見えて


ちょっと我儘で

ちゃんと見えていて

だからこんな僕を見てくれてて

君の掌と 僕の手が目指すの

多分同じとこだね

隙間はゼロピコメートル』

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