♪17

「なぁ桜花、暑いんだが。」

「知らんし。私のあったか毛布がそんなわけないでしょ。」

「いや、暑いから。」


桜花は俺の上に寝転んで、ぐぐぐっと腹筋を伸ばしている。そんなに運動もしてないだろうに。あと、成長したんだからその体勢はやめて欲しい。


「彪河、肩押してぇ。」

「はぁ?それくらい頑張れよ。」

「お・し・て!」

「はいはい。」


少し肩を押すと、桜花は「んんっ」と声を漏らしたが、その後すぐに「んあ〜」に変わってなんだか面白かった。


「どこのおじいちゃんやねん。」

「まだピチピチの14歳でーす!」


イェーイとピースする桜花をテキトーにあしらって、俺は本棚のラノベを手に取る。今日は間違えまくるラブコメだ。


「おぉ!ひねくれてるね、こいつ。」

「たしかにな。」


俺も似てるようなところがあるから少し複雑だけど。実際今も友達の基準とか考えてたりするし。


「それに対してこっちは…あぁ、いかにも清楚系美少女の言動だわ。私には絶対無理。」

「当たり前だろ。何夢見てんだ?」

「ブッコロスゾ♡」


これ以上イジるとえげつない仕打ちが待っていそうなので、流石にやめとこう。


『夢物語はいつまでも

続くものだと思ってた

こんな寂しい夜も

渇いた望みにキスして

あからさまな気持ち隠して

訳も分からず泣いた


冷たい日差しと 冷たい水で

顔を洗って目を覚まそう

逃げたい気持ちと 行きたい心

僕のことを押し潰していきそうなんだ


小説は小説の中の物語にすぎないし

妄想は妄想の中の結末にすぎないし

知りたかった理想と現実の狭間で

僕は僕を殺した



空に描いたような記憶の

返信を間違えて落ち込む

こんな寂しいのにさ

言葉じゃ伝わらないからさ

この想い全部のせて

なんて甘かったから


冷たい視線には もう慣れたから

目を逸らして見ないフリした

見てみたい気持ちと 閉ざじた心

僕のことを押し潰していきそうなんだ


空想は空想の中の物語にすぎないし

エピローグはエピローグの中の結末にすぎないし

知ればよかったと後悔する毎日の時間が

僕のことを壊した



時には素直になればよかったって

今になってそう思うこともある

だけど僕なんかがどう足掻いてみても

煌めきには届かないから


ありふれた言葉の中の1つにすぎないし

バカはバカのままでしか真っ直ぐに言えないし

少し視線を上げたら君の顔が映る

瞳に僕も映る』

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