霞草
kanaria
第1話
私はレズビアンだ。
幼馴染の女の子に小学校のころから高校生までずっと片想いをしていた。
その子はアセクシャルだ。
叶うはずのない恋だということは誰の目からも明らかだ。
ただでさえ同性愛が認められないこの国で恋愛志向を持たない人と一緒になるなんて不可能だ。
それなのにこんなにも恋焦がれていたのは。
きっと叶わないと理解していたからなのかもしれない。
香澄という名の女の子。
その名前にぴったりの綺麗な容姿。
美しくしなやかな黒い髪、透き通る様な白い肌。
明るく真っ直ぐな人。
香澄はよく男に告白をされた。
その容姿からよく好意を持たれた。
だが香澄は悉くを断った。
好きだと言われても理解が出来ないと言っていた。
ある日学校一のイケメンだと持て囃された男が告白をした。結果は玉砕だった。
当たり前だと思ったけれど。
それで終わるわけがなかった。
その日の夜に香澄はその男に強姦された。
最悪なことに妊娠していた。
その日を境に香澄はおかしくなった。
乱雑に流された髪、痩せこけ痣をつけた肌。手首にはリストカットの痕が生々しく刻み付けられていた。
変わり果てた姿に誰もが同情をし、誰もが男を罵倒した。
酷い虐めを受けた。
男は自宅で首を吊って死んだらしい。
男の葬式。香澄の両親を視界に入れるなり泣き腫らした顔を地面に擦り付ける男の両親の姿があった。
誰もが自業自得だと嘲笑した。
男の弟は状況を理解できずただ泣き喚いた。
香澄の両親は何も言わなかった。
今日は香澄に会いに行く。
何年ぶりだろうか。4、5年ぶりだろうか。
あの子の大好きだった霞草を携えて。
今。
会いに行くよ。
霞草 kanaria @kanaria_390
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます