第11話 日常と非日常の狭間

 道場での朝稽古を終えた宇月光馬は食卓に着く。

 朝の日差しはだいぶ穏やかになってきている。

 恵は味噌汁をよそい光馬の前に置く。

 中学の頃から朝食の準備は恵の日課だった。

 制服のブラウスの上からつけていたエプロンを外すと恵も食卓に着いた。

 手を合わせ、食事を始める。

 今朝は卵焼きがうまく出来たと自画自賛する。

 JESは一週間もかからずに屋敷の修復を終えていた。宇月家に日常が戻ってきているようにも感じられる。

「今日もアルバイトか?」

「帰り、遅くなるかも」

 光馬は孫が突然、アルバイトをすると言い出し驚いた。

「望遠鏡くらい、わしが買ってやるものを」

「ありがとう、お爺ちゃん。でも自分の力で何とかしたいの」

 我がままや無茶を言う子ではなかった。孫の熱意に折れ、光馬はアルバイトを承諾するが、休みなくバイト先に出入りしていることが気になって仕方がなかった。

「一刀クンもいるから、大丈夫だよ」

「? 朧んところの孫か?」

「そうだよ。四年ぶりかな。会ったのは。同じ高校だなんて知らなかったよ」

「そうだったか。久しく朧のところにも行っていなかったな。調べものがてら寄ってみるか」

「何か分かるといいね」

 恵と光馬は蔵の中にある文書などを調べているが、代々伝わる珠についての記述がある文献や書簡などは見つかっていない。

「珠に関するものが、ここまで無いとはな」

「不思議だね」

 祖先の日記などもあるが、受け継いできたという文言はあるものの、その由来が書かれたものは見つかっていなかった。

 宇月家は勘定方を長きにわたり務めていたせいか、財政のやり繰りなどの苦労話などの方が多かった。

「朧の孫か。あやつが、孫同士許嫁にしようと言い出したことがあったな」

 その話に恵は味噌汁を吹き出しそうになった。

「何それ! 初耳だよ」

「お前のいないところで出た話だからな」

 酒の席だったという。

「向こうは冗談だったかもしれんが、貞義が血相変えて反対しおった」

 光馬は笑いながら言う。

「お父さんが? いつの話?」

「お前たちが五歳の頃かな。実際のところ、朧の孫はどうだった」

「変わってなかったな。相変わらず強いし、なんだかんだ言いながらも面倒見がいいし、格好よかったよ」

「ほう?」

 素直な言葉ににやりと笑う。

「でも、お父さんの方が数百倍、格好いいかな」

「確かに貞義は親の贔屓目を抜きにしても、良い男だったからな」

「そうだよねぇ」

 満面の笑みで頷く恵だった。

「そうか、そうか」

 頷きながらも少し残念そうな光馬であった。

「一緒にいるけど、そういうのは良く分からないし、それに私、宇宙一直線だから」

 実際、再会しても恋愛感情はわかなかった。

 それよりも好きなことをとことん極めたい。

 恵は宇宙研究部門に入り浸るのが楽しくて仕方がなかったのである。


 三行神社は南風市中心部から北東に行った古い家並みの残る守護地区にたたずむ神社である。社の四方は杉の巨木に囲まれていて、市の景観保護区にもなっていた。

 広い境内には拝殿と本殿等が建立され、こちらも南風市の重要文化財に指定されている。

 創建の年代は不明だが、地元の文献には平安時代以前に建てられていたという記述もある。

 龍神が祀られていることでも知られている。

 境内の外、東側には、静龍、守護、翔月、それぞれの地区に三重の塔が南北に控える様に建立されている。これらも三行神社の社であるとされているため、創建当時、守護の一角のみならず静龍、翔月も含めた一帯が三行神社の境内であったのではないかとされる説もある程であった。それを裏付けるように近年、静龍と三摩地を隔てる辺りに鳥居跡と思われる土台が見つかっている。

 五年に一度の大祭は地域を挙げて盛大にとり行われていた。

 その時に、三重塔も敷地の中に拝礼が許されるが、内部は今も非公開となっている。


 放課後、恵は番場に送られて三行神社を訪れる。

 事前に電話で連絡をとり約束を取り付けていた恵は社務所裏にある宮司のお宅へと招かれた。

 巫女に社務所から中へと案内されると、宮司の住まいであろう一室に通され待つことになる。

「私に訊ねたいことがあるとか」

 三行宮司の和住完江は用意してきたお茶を出すと、テーブルをはさみ恵の向かい側に正座する。

 白い着物に紫色に薄く紫の文が入った袴、足袋を履いている。

 七十を超えていると聞くが、白髪が目立つだけで背筋もしっかりと伸び、高齢とは思えないほど健勝に見えた。

「はい」恵は頷く。「私たちは郷土の歴史を調べています」

 彼女は明朗快活に答えた。

 制服姿のまま恵は三行神社を訪れていた。

 番場は前回のこともあり、車の中で待機中である。中での会話は恵に持たせている機材でモニターしていた。

「三行神社は古くから守護にある神社ですので、その成り立ちを知りたいと思いまして、うかがいました」

「そうですか。学業の一環で? 偉いですね」

 孫でも見るように、宮司は笑顔で頷く。

「いろいろと教えて頂ければと思います」

 恵は頭を下げ、傍らに置いていた背負い鞄から小型のボイスレコーダーとメモ帳を取り出して準備を始める。

「私はこの地に来てまだ日が浅く、ご期待に添えますかな」

 番場から聞いていた通りの答えが返って来た。

「でも十年くらいは三行神社にいらっしゃいますよね?」

 恵の言葉に目を見張る宮司。

「なるほど覚えのあるお名前だと思ったら、宇月さんのところのお孫さんですか。見違えましたよ」

 電話で名前は告げられていたが、声だけでは分からなかった。

 身長は伸びて髪も長くなっている。元気に境内を駆け回っていた時のような幼さはなくなっていた。

「そんなに変わりましたか?」

「お子さんの成長は早い。以前のイメージが強く、気が付きませんでした」

「私、宮司さんに何か覚えられるようなことをしていましたか?」

「五年前の大祭では、司に選ばれていたお父さんと一緒になって駆けまわろうとしていらした」

 目を細め宮司は言う。

「あ~、そうでしたね」

 一気に汗が噴き出してきた。

「飛び入りの助っ人参加でしたね」宮司は笑う。

 恵はその言葉に顔をさらに真っ赤にしていた。

 彼女は沿道の中から司として参加していた父の前に飛び出し一緒にやると言い出したのである。

 なぜそのようなことをしでかしたのか、思い出すことはできない。ただ父と一緒に祭りに出たいと思ったのだろうか。むろん止められ、宮司に連れ出された。祭りが終わった後に神聖な儀式を一時中断させたことで母や祖父に散々叱られたが、大祭で一番司となった父は恵のおかげで勝てたと頭を撫でてくれた。

 彼女が十歳の時のことだった。

「あ、あの……宮司さんはここのご出身ではないのですか?」

 話題を変えるように質問を始めるのだった。

「私は海嶺村の出身です。雇われ宮司なのですよ」

「誰にですか?」不思議に感じてしまう。「宮司は神社の代表ですよね?」

「長らく管理されていた方に乞われました」

「雲乃都さん?」

 ふと思いつき、その名を出してみる。

「よくその名前をご存じですね」

 宮司は改めて恵を見る。

「う、雲乃都先生の著書『風上町の伝承と文化』を読みました。それで話をうかがいたくて調べてみたらこちらの方だと知りましたので」

「そうだったのですね。ですが」

 宮司は笑顔で頷いていたが、目が笑っていないように恵には思えた。

 話を打ち切られる前に続けて訊ねる。

「こちらは先生のご実家だったのでしょうか?」

「ご実家ではないと伺っています。さる筋から場所を提供していただいたと聞きました」

「さる筋とは?」

「私もそれは存じ上げません」

「ですが、ここにいらしたのですよね。本の資料とかは残されていないのですか?」

「興味がおありですか?」

「はい。個人的にも」

「興味を持たれるのは良いことです。ですが資料は雲乃様がご自身で処分なされたと聞きました」

「それは残念です」恵は肩を落とし、吐息をつく。「では、神社の事なのですが……」

 三行神社の成り立ちや祀られている神様のことなど、用意していた基本的な質問を恵は訊ねていく。

 返ってきた答えは、JESで知りえたことと大差ない。

 宮司の所見ではない。用意された言葉をそのまま伝えているにすぎないように恵には思えてくるのだった。

「神社に祀られている龍神とこの辺りに伝わるダイケンの伝承に出てくる龍は同一のものでしょうか?」

 恵は伝承についても訊ねてみた。

「龍神様はこの神社の起源にも関わっているといいます」

「そういった文書は神社に残されていますか?」

「残念ながら、そう伝えられているだけです。個人的な見解でよろしければ、龍神とダイケンの伝承は時代が違うようにも感じられます」

「そうですか」恵は息を吐く。「では龍神そのものに関する言い伝えや伝承は他に神社には伝わっていないのでしょうか?」

「特にこれといった言い伝えがあるようには聞いていません」

「文献や文書はないのですか?」

「私の勉強不足でしょう。そういったものはあるのかもしれませんが、私は存じあげません」

「誰か調べた方はいないのですか?」

「本をご覧になっているのでしたら、もしかすると過去にいらしたのかもしれません」宮司はいったん言葉を切る。「当神社では多少の文献や書物も伝えられておりますが、それらの公開は行っていません」

「なぜですか?」恵は首を傾げる。

 歴史的にも重要なものもあるのではと思ってしまう。

「そういった習わしなのです。取材の申し出もございますが、神聖なものですので丁重にお断りしています。それに最近は物騒でございます」

「国坂美術館の事ですか?」

「そうですね。いろいろとございます」

 恵の問いに曖昧に宮司は答えている。

 キロウとのかかわりもあるのかもしれないが、それを直接聞くわけにはいかなかった。

「大祭では一番司が大剣を得ることになりますが、大剣にはどのようないわれがあるのでしょう?」

「大剣は龍神から得た力の象徴。または鍵とされているのではないでしょうか」

「力の象徴? 鍵ですか?」

「ダイケンの伝承はそういった絡みもあるのかもしれません」

「そうなのでしょうか。そもそもなぜ三人の司が選ばれ、競い合うことになるのでしょう?」

「三は、そうですね。三摩の地の池や石塚、三つの三重塔とかかわりがあるのかもしれません」

「言われてみれば、池も三つ。石塚も三つですね」

 舟石の溝も三つあり、珠も三つあるという。すべてが三に行きついていた。

「三行神社の名前の由来である三つの行とは、仁と徳、そして力とされています。それらすべてを兼ね備えた人物が龍神に選ばれたとされています」

「三つの行? それぞれの行を持った人が選ばれ、国のために合議するか、地域のまとめ役となるのでしょうか?」

「古代ローマではそういった政治形態もあったようですが、龍の試しは強い意志を持った方を選ぶためのもので、選ばれた長が龍とともにこの地に豊穣をもたらす導き手となるためのものです。そのための神事なのだとされています」

「豊穣に感謝するためのものだと思っていました」

「秋ということで、良い実りを得たことを神に報告する意味合いが強くなったためでしょうか」

「龍の力とはどのようなものなのでしょう?」

「それは私も知りたいですね。神宿る力を得るということはどのようなものだったのか」

「考えてみると不思議な神事ですね」

 何を得るのか、昔の人々は何を思い祭りを続けてきたのだろうか。

 質問を続けるが、それ以上の答えは得られない。

 番場の言った通り、詳しく迫ろうとするとかわされてしまう。そんな会話が続いてしまうのだった。

「神事に使われる塔も神社が管理されているのですよね?」

「そうなっております」

「塔の中は非公開ですよね。ご神体があるのでしょうか?」

「詳しくは私も存じません」

「宮司さんも見たことがないのですか? 管理し鍵も持っているのですよね?」

 掃除すらしないということなのだろうか?

「私も中を見たことはないのです。建立以来、非公開であるという説もあります」

 信じがたいことを宮司は笑みを漏らし恵に言うのだった。

 さらに珠のことも訊いてみたが、やはり知らないという。

 用意した質問事項すべて訊いてみるが、謎が深まるだけのような気がしてきた。

 その後、和住宮司は恵を拝殿や本殿に案内してくれる。

 JESから借りてきた高性能のカメラで許される限りの場所を撮影していく。平田特製のカメラは柱の傷など微細なものまで映し出し記録する。さらには熱源探知や簡易のX撮影も同時にしているらしい。

 性能に関して恵はよく理解していなかったが、諜報員になった気分だった。

 彼女は撮影しながらも、周囲をうかがい写真の女性がいないか探すことも忘れていなかった。


「彩様、これでよろしかったでしょうか?」

 宮司は一礼し、巫女装束の女性に声をかける。

 恵を見送った後、二人が話をしていた部屋には女性が正座してお茶を飲んでいる。

 その優雅さは日本画でも見ているようだ。

「かまいません」口調は厳かなものだった。「いずれ顔を合わせることになるやもしれません」

 あの写真と彼女は瓜二つの顔立ちだった。

「左様にございますか」

「そういうことです」

 一人納得するように小さく首を縦に振る。

「多いですな」顔色を窺うように宮司は彩を見る。「神社のことを知りたがる輩が」

「いろいろと起こっていますからね」

「大丈夫でしょうか」

「仁左様が施してくれたものです。そう簡単にはいかないでしょうね」

 楽しそうでもあった。

「来たる大祭ですが、司はお決まりですか?」

「すでに決まっています」

 彩は懐から名前の書かれた札が入った封を三つ、テーブルの上に並べる。

「今がその時なのでしょうね」彼女は呟きを漏らす。

 宮司は恭しく封を預かると、立ち上がりそれらを本殿へと運ぶ。

 今回の司たちのもとへと届ける前の祭事をおこなうためだった。

 茜色に染まる空を眺め、彩はひとり物思いに耽る。

「七百年も前から、決まっていたことなのかもしれません」


 神社の駐車場にとめてある車のところへ戻ってみると、車内に番場の姿はなかった。

 エンジンは切られていたが、ロックは外れている。

 何かあったのだろうか?

 周囲をうかがいながら、制服のポケットから小型通信機を取り出そうとする。

 視界の隅に駐車場の入り口からスーツ姿の男が入ってくるのが見えた。

 番場の車以外、止められている車はない。

 心臓が高鳴り、鼓動が早くなる。

 土塀に囲まれた駐車場の中は通りからは見えない。夕方ではあるが、幸か不幸か、参拝する人や散歩やジョギングする人の姿もない。

 男は恵を見ていた。

 恵は生つばを飲み込む。

 背負っていた鞄を肩から下ろし、中に入れてきたものを素早く取り出した。

 男も手にしていた細長い袋から打刀を取り出す。しかも二本だ。

 鞄を足元に置く。

 恵自身も含めすべてがゆっくりとスローモーションで動いていくように感じられた。

 鞘はその場に捨てられ、男は恵に近づいてきた。

 小走りだったのが加速してくる。

 恵は三つに折りたたまれていた棍を一本にする。百八十センチほどの金属製の棍棒になった。

 刃先はない。

 棍棒の先を男に向け恵はかまえた。

 男の顔は目しか見えないが殺意がむき出しだった。

 呼吸が落ち着いてくるのが感覚的にも分かった。冷静に相手が見えるようになってくる。

 踏み込んだ。

 長さを活かし迫る男の胸元を突く。

 それは読まれていた。うまくかわされると両手に持った打刀が首筋を狙う。

 素早く棍を引き、受けに回る。

 静まりかえる駐車場に鋭い金属音が響き渡る。

 血走った目が見え、相手の息遣いが荒くなる。

 二刀とはいえ、右が利き腕なのだろう左側からの攻撃が力強く感じられ斬撃も多い。

 次第に攻撃が単調になり、右手からの攻撃が続いたとき、恵は反撃に出る。

 祖父の剣技の方が早い。

 恵は振り下ろされてきた刀を払うのではなく棍棒の先で巻き込むように受けながら、右手に一撃を加える。

 打撃を受け指から手の甲の骨が砕けたか、男はうめき声を上げた。手から刀が落ちる。

 続けて棍の先を使い左手の攻撃が来る前に鎖骨を砕き、さらにもう一撃、強く心臓のあたりに突きを入れる。

 肋骨は完全に砕けたのだろう。男はその場に崩れ落ちた。

 気が付くと恵も息が上がっている。

 ほんの数分だったはずだが、汗が噴き出してくる。

 それでも冷静に周りを見ることができた。

 番場が駆け寄ってくるのが分かった。

 不審な動きをする者たちの姿を見て彼は車を離れていた。それが陽動と気づき、急ぎ駐車場に戻ってみると、棍を手に倒れた男を見下ろす恵の姿を見ることになるのだった。


「……あ……き゛……」

 大男は苦しそうな息でそう言った。

「聞き取れん」

 大場は膝をつき大男の口元に耳を近づけるが、肺が破れているのだろう風のような音が聞こえるだけだった。

 血が流れ、大男の回りを赤く染めていく。

 何度も声をかけるが、こと切れた。

 開いていた男の眼を大場は閉じてやる。

「容赦ないな」

 彼は悪態をつく。

「ただ雇われたのか、鉄の掟でもあったということなのかな」

 出雲は大男の亡骸を前に呟く。

 大男は釈放されていた。

 身元を示すものを彼は持っていなかった。

 犯罪歴もなく聴取にも何を聞かれても黙秘を通した。手掛かりを求め番場は彼を留置場から釈放し、大場らに追跡を命じた。

 服には男に悟られぬように発信機をつけ、開放する。

 それを頼りに大場と出雲は大男を追跡した。

 希望的観測ではあるが、アジトまで案内してくれることを願っていたが、大男は殺された。

「連絡を取っていた様子はない。ここが非常時の集合場所であったのかもしれない」

「都合よく待ち伏せできるわけがない」

「だとしたら、おれ達と同様に釈放を待っていたのだろう」

 出雲は言う。

「口封じかよ。キロウのやつら!」

 発信源の動きが止まったところで、大場と出雲は現場に急行する。

 今は使われていない空きビルの二階だった。

 彼らが駆け付けた時には大男は血を流し倒れていた。正面から一刀のもとに切り伏せられている。

 どのような方法で逃走したか分からないが、二人は殺害者の姿を見ることはなかった。

 刀はその場に投げ捨てられていた。争ったような形跡はない。

「なぜ刀を捨てた?」刀を見つめ出雲は呟く。

「逃走に邪魔だったか? 血の付いた刀を持っていれば犯人だとすぐに分かるからかもしれない」

「だが刀から来歴が分かるとは思わないか?」

「業物ならそうかもしれないが……、調べられるなら調べてみろって感じだな」

「不敵な奴らだな。この太刀筋、国坂邸襲撃犯と同一とみるべきだろうな」

 切り筋が同じだった。

「ここが待ち合わせ場所だとしたら、この付近にアジトがある可能性もあるか?」

「捜査を混乱させる目的かもしれん」出雲は考える。「あきか……」

「何かの名称か名前か」

「調べてみる必要はあるが……」

 正確に聞き取っていたか、本当に伝えようとしていたことなのか分からない。

「返り血を浴びているはずだ。それに足跡だって見つかるかもしれん」

 JESの鑑識は優秀だ。何かしら手掛かりを見つけてくれる可能性はある。

「まずはこのビルから出ていった者はいないか、聞き込みだな」

「了解した」

 到着したJES研究班にあとのことを任せると街へと大場と出雲は飛び出していく。

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