第2話 夢と想いの始まり

「きれい♪」

 少女は青く澄みわたる空に珠をかざしながら瞳を輝かす。

 直径は二センチほどで、少し青みのかかった小さな珠である。

「お星さまがうかんでいるみたい」

「そうか、お星さまか」

 父親は膝の上に抱えた少女の頭を撫でながら微笑む。

「お星さまにいきたい♪」

「好きだものな。大人になったら行けるようになっているかもな」

「ねぇ、おとうさん。なにかいる?」

 少女はなおも覗き込みながら父に訊ねる。

「見えるのかい?」

「ちいさな……りゅう?」

「龍が分かるのか?」

 驚きながらも父親は優しく問いかける。

「そういっているような……わかんない」

 首を傾げる少女だった。本人もよく分からないらしい。

「どういう風に見えたかな?」

「さびしそうだった。おそらにかえりたいのかな?」

「空か……そうか……」父親は空を見上げ少女に訊ねた。「その珠が気に入ったかい?」

「うん。すき♪」

 笑顔で頷くのだった。

 父親は少女から珠を受け取ると首にかけていた古い小袋に戻す。

 そして少女の首にそれをかけてあげるのだった。

「今日から、これはお前の守り神だ」

「まもり……?」

「いつか知る時が来るのかもしれないな」

 父は娘の頭をなで続けた。

 少女は嬉しそうに胸の袋を握りしめるのだった。

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