第10話 地獄のようで(妹視点)
「何でこんな生活をしなければならないの!私がどうして働かなくてはいけないのですっ!?」
「シファナ……もう私達は貴族ではないの。自分で働かないと、生きていけないのよ。」
伯爵家を追い出されてから数日。
お母様からとある店で働くようにと言われたわ。
意味が分からない。
何故私が働かなければならないの?
いつも勝手に食事が出てきて、欲しいものは全て手に入っていたじゃない!
さらにムカつく噂を耳にしたの。
「ねぇ、お母様。お姉様が当主となっている侯爵領の話、聞きましたか?」
「え、ええ。サリーエは当主の務めをしっかりと果たしているようね。ディラシファル侯爵領の評判は、今や知らぬ者がいないほどに上がっているそうよ。」
「そんな事を言いたいのではありませんわ!邪魔をして、またいつものように奪いませんか?お姉様が持っているもの全てを……ふふふっ。」
「もうやめなさい。今度こそ殺されるわ。」
「何故弱気なのですか!?お母様がそのような態度では……」
「お黙りなさい!」
「っ…!」
生まれて初めてお母様に叱られた。
大きな声は、私の耳をギンギンさせる。
こんなお母様は見たことがないわ。
「私達は、殿下の意思により生かされていると、何時になったら気付くの!?本当ならあなたの父と同じ運命を辿るはずだったのよ!?」
「同じ…?終身刑って…こと…?」
「ええ、そうよ!爵位剥奪で済んだだけ良かったと思いなさい!貴女がサリーエに今までしていた事の返しが来たの!親である私達も悪かったの。貴女を肯定し続けた。その結果が今なのよ……っ…。」
初めてお母様に叱られたのよ。
泣いているお母様。
私も違う意味で泣きそうになる。
私の今までの行いを否定された。
それ以降、お母様とあまり話さなくなったわ。
誰もが私のことを知っているらしく、働いた場所では奴隷のように扱われた。
文句を言えば痛めつけられた後に、クビにされる。
食べ物は少なくなっていき、私はふらつきながら仕事をするの。
地獄よ、地獄!
過去を思い出せば思い出すほど、最悪な気分になる。
毎日あびせられる罵声。
けれど耐えるしかない。
私は妹ですもの。
私はお姉様のものを奪った事、今でも後悔なんてしていませんわ──
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