遠くへ

「私、神父様にお別れをしなくちゃ、お父様のような方だから。」

「二人で行こうケディー。」

二人はそのまま教会へと向かいました。


教会にはフィリップ神父、そしてマザーグースが居ました。

「どうしたんだい二人共?」

「、、、良かった、マザーグースも居る。」

二人は出会ってから今までの事を話します。そしてミハエルは、

「僕はミハエル・ウィルソン王子です。騙していて済みません。時間がありません、僕達は命を狙われています。」

神父とマザーグースは驚いて顔を見合わせます。

神父はケディーにお金の入った袋を渡します。

「ケディー、僅かだが、持って行きなさい。何時か君が独り立ちする時の為に取っておいたものだ。」

「、、、有難う神父様、体に気をつけて。」

「おお、幸せにおなり。愛しているよ。ミハエル様、ケディーを宜しくお願いします。気が強くて意地っ張りな所もあるものですから。」

「もう神父様!」

「ええ、良く知っています。」

神父にミハエルが答えます。次にマザーグースがケディーに声を掛けます。

「体に気をつけるのよ、ケディー。」

そう言うと、マザーグースはケディーを抱きしめます。

「マザーグース、今までありがとう、、、元気でね。」

「さあ、急ごうケディー。」

「二人共、お元気で!」


「おい二人共!俺に何も言わずに出ていく気か?水臭いじゃねぇか!」

教会を出た所で、誰かが二人に声をかけました。

「へスラー!?どうして此処に?」

へスラーでした。ケディーが驚いて声を掛けます。

「何だか警官が街をウロウロして落ち着かねぇって思って教会に来てみたら、お前らが教会に入って行くのが見えたからな。

マイケル、いや、ミハエルか?王子様だったとはな。ダイヤモンドシティを出るんだろ!表通りにはもう警官がウロウロしてやがる。俺に付いてきな!」

へスラーはそう言って警官が居ない裏路地を案内します。


駅に辿り着きましたが、周りを警官が取り囲み、列車はもう発車するところでした。

「警官は俺が引き付ける!列車に飛び乗れ!メノウ岬に向かってそこからトルコ島に行くんだ!」

へスラーは二人にそう告げると、警官に向かっていきました。

「へスラー!?待って!」

へスラーは警官と大乱闘を始めました。

列車が駅をホームを離れようとしています。

「行こう!ケディー!」

ミハエルはケディーの手を引いて、列車へと走ります。

「へスラー、無事でいて、、、!」

「恩に着る、へスラー、、、!」

二人はへスラーへの感謝を口にしながら列車に飛び付きます。

二人に気付いた何人かの警官も乗って来たようでした。

客車の外側に張り付いた二人、ミハエルがケディーに問いかけます。

「客車に何時までも張り付いていられない、ケディー、リングで中に入れないか?」

「リング?」

「君が牢で使った不思議な力さ。僕が開けた穴の輪郭が光っていて奇麗だったから。」

「その名前、良いわね。やってみるわ。」

客車の中は乗客でいっぱいでした。警官が客を押しのけ迫って来ているようです。

二人も客をかき分けて進みます。客車の終わりまでやって来ました。

「、、、行き止まり?」

「この先は貨物車の筈だ。」

「任せて。」

ケディーは貨物車の中までリングで繋げます。

警官の怒号がすぐ其処まで聞こえ、乗客はそれに気を取られているようでした。


貨物車の中は、様々な木箱に囲まれ、ひんやりとした空気に包まれていました。

「ここまで追ってこないよね?」

「多分ね。来られたらもう、お手上げかな。」

二人は目立たなそうな隅の方に座り込みました。

「ちょっと疲れたね、ケディー。、、、震えているのかい?寒い?それとも怖い?」

「、、、どっちも。」

「大丈夫だ、ケディー。僕が付いてる。」

ミハエルは、震えるケディーの身体を引き寄せます。

二人は疲れからか、そのまま静かな寝息を立てました。

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