へスラー

翌朝、時期の近くなった花火大会の準備の為、ケディーは子供の家に向かっていました。

すると、へスラーが立ちはだかってきました。

「夕べ誰と会ってた?」

「へスラー?どうしたの?」

「ケディー!俺は、、俺は、初めて会った時から好きだったんだ!」

「そんな!駄目よ!私はもう好きな人が居るの!貴方には何も答えられないわ!」

「ブルースグレイの所に居るマイケルって奴だろう!そいつに会わせろ!」

「止めて!何をしても私の心はマイケルのものよ!」

「そんなにそんなに、あいつが好きなのか、、、!」

ヘスラーは、そのまま農場へと向かって行きました。

子供達やシスターが遠くから不安そうに見ていました。神父はただじっと成り行きを見守っていました。

「へスラー、御免ね、、、」

ケディーはただ心の中で謝るのでした。


子供の家で、シスターの一人が大人達を集めて言います。

「今度の花火大会で何人かへスラーの手伝いをして下さる方はいらっしゃいませんか?」

「それくらいなら、私がやろう。」「ああ、僕も。」

二人のお父さんが手を挙げ、子供の家の食堂は賑やか。

「あー、それでは二人共、こちらでご挨拶を。」

農場から帰って来ていたへスラーに促され、二人が挨拶を言います。

「何かとご面倒おかけすると思いますが、宜しくお願いします。」

「花火大会が成功で終わるよう、頑張っていきます。」

ケディーは先程の事で気まずく、へスラーの事を見る事が出来ませんでした。

「二人共、有難う。本日はこれで解散とします。皆さんで花火大会をより良いものにしていきましょう。」

神父が締めの挨拶をしました。


そこへミハエルが、ワインを届けにやって来ました。へスラーが彼を睨みつけ、ケディーが駄目だ、と思いました。

へスラーを止めようとしましたが、神父が止めました。

(ケディー、多分大丈夫だと思うよ。)

へスラーはミハエルの方へ歩み寄り、

「おい、色男。」

ミハエルもへスラーへ向き直り、睨み返します。

二人は険悪ムード、ケディーは心配そうに、神父はただ黙って見守ります。

と、へスラーが表情を解き、

「へっ、ナヨナヨした奴かと思ったが、中々いい目してんじゃねぇか。俺も男だ、好きな奴が心底惚れたってんなら、仕方ねぇさ。

おい、マイケルって言ったな、ケディーを泣かせてみろ、ただじゃおかねぇからな。」

「、、、ああ。」

そのまま二人共、自分の仕事へと戻っていきました。

ケディーはホッとしつつも、首を傾げ、隣を見ると神父がウインクで

(ほら、大丈夫だっただろう?)

というような表情を浮かべていました。


子供達は花火が楽しみで大はしゃぎ。

そこへマザーグースがやって来ました。

「子供達は元気ねぇ、全く。」

「マザーグース、お疲れ様。」

マザーグースに神父が答えます。

「此処へ来た時は、みんな痩せ細っていたけど、今ではみんな元気になって、良かったです。神父様。」

「いや、私は何も、これは全部ケディーのお陰だよ。ケディーが居なければ、今の私は無かったよ。」

ケディーに神父は答えます。そしてケディーに向き直り、言うのでした。

「、、、ケディー、子供の家の事が広まって、寄付をしてくれる人も増えた。もう子供の家はすっかり軌道に乗ったよ。

もう、怪盗になって盗みをしなくても良いんだ、何時か言っただろう?君ももう、自分の幸せを考えるんだ。」

「、、、神父様、、、」

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