第91話
お披露目会は昼前くらいから集まってきた知人を
いつもお世話になってる人達とその家族と考えれば本当に少数の来客だけど。
集まった人達に向けて
露店で食べ物を提供していた者から特に好評だったのは揚げ物だった。
どうにか露店で提供できないかと考えて
ミドヴィスと
アフェクトはガンド夫妻とデュータを含むそのパーティメンバーと隅の方で談笑していた。探索者組合職員夫妻とアンディグでもトップクラスのパーティがのんびりしていられるのはいいことだ。
セリシェールはというと豊富な知識から薬師の知人と一緒に料理に舌鼓を打っていた。肉料理を口にしたことで故郷に帰ることができなくなったんだけどいまでは肉料理も気にせず口にしている。本人曰く『レオの料理を食べてたら元の食生活に戻れなくなった。私にも料理を教えて』こう言って時々、調理に加わっている。
棟梁や家具職人をはじめとしたこの家の建築に関わった職人もお披露目会には参加していて「これでこの料理ともお別れかぁ」と溢していた。
こんな感じで個人の家のお披露目会としては盛況のうちに終了となったんだけど、その終了間際になって訪れた者がいた。
「すまない。こちらにレオという者はおられるか?」
「えっと、
「っ!? お母様!」
「「「「えっ!?」」」」
来訪者はセリシェールの母親だった。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
真新しいリビングに集まった
優雅にお茶を飲むセラシュヴェールはいま擬態を解いて
音もさせずに置かれたカップから
「貴方が私の娘に不浄なものを食べさせたのですか?」
この場にいないミドヴィスと
それでも乾いた喉をゴクリと鳴らして
「娘さんのことは、知らなかったとはいえ、本当に申し訳ありませんでした。ですが、彼女も知らなかったことですから、許してもらえないでしょうか?」
詰まりながら謝罪とセリシェールの帰属を願ってみた
その沈黙を打ち破るように口を開いたのはセリシェールだった。
「お、お母様、如何様な理由があってここにきたのですか?」
どこまでも優しそうな表情なのに、それを聞くこの場にいた誰もが声を出すことができないでいる。
それを打ち破ったのは扉をノックする音に続いて告げられた
「お客様のお部屋の用意ができました」
「あ、ああ、わかった。ありがとう、あと、お茶のおかわり貰えるかな」
「はい、お待ちください」
部屋の中の緊張感が解けて皆んなが息を吐いているそんな状況の中、セラシュヴェールは愛しむような表情を浮かべてセリシェールの頭を撫でていた。
「母が娘の様子を見に来ることがいけないのですか? 私の愛しいセリシェール」
その言葉は
それを察したのか再び
「そうですね。私がここに来た理由は明日、ゆっくりとお話ししましょう。今日はこちらに泊めて頂けるということでよろしいか?」
「はい。お部屋の方は用意していますがセリシェールとご一緒の方がよければそうして頂いても構いませんけど」
「そうですね。では、娘の部屋で今晩は過ごさせて頂くことにします」
すっかり弛緩した空気の中、
「はぁ、まいったなぁ…… まさかセリシェールのお母さんが来るとは想像してなかったよ……」
「ん、そうだね」
「どうするの責任とれって言われたら」
「責任って、やっぱりセリシェールを嫁にしろとか?」
「いやいや、そんなドラマの台詞みたいなこと言わんでしょ」
「どらま? 何だそれは」
「演劇とか、そんなやつ」
「嫁にってことはなくても何かの代償を求められるかもしれないよね」
考えても仕方のないことを考えていた
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