第89話
アンディグに戻ってきた
一応ね、暫くの間アンディグから離れていた訳で、町を出る時も慌てていた様子を見ていた人もいたし、それに
そんな訳で探索者組合の組合長に経緯を話したら「信じ難い話だ。それが事実として混乱を防ぐため発表は時期を見てこちらで行う」というお言葉を頂いた。
「まあ、俺が言うより組合からの発表ということにしてもらった方が信じるだろうから、その方が面倒がなくていいけどね」
「ん、それには同意」
「信じたいことだけ信じるからな」
と、まあ、組合長の前だというのに随分な発言をしている
探索者組合への挨拶のあと、今度は鍛治師組合のグランさんのところにやって来ていた。
他の人の耳に入れるとマズい話もあったのでそのことを伝えると、あまり使われてないと想像ができる会議室のような雰囲気の部屋に通された。
円卓を囲むように並んだところで三人が頭を下げた。
「グランさんすいません」
「なんだ。久しぶりに来ていきなり」
「その…… 作って頂いた装備を壊してしまって……」
グランさんはゴトっと音を立てて前に並べられた装備品を見て「何とやった?」と問いかけてきた。
「えっと、ルゥビスで大型の獣と戦うことがあったので……」
「ふむ…… それでこれか」
べコリと曲がった盾をコンコンと叩いていたグランさんだったが、その横に並んだ激しく刃が欠けた三振りの剣に視線を向ける。
「こっちは何とやった?」
「そっちは……」
言い淀んだ三人の代わりに
「探索者組合からは口外を禁止されている話なんですけど……」
そう前置きをしてグランさんの表情を窺うと「誰にも言わんから話せ」と先を促してきた。
「信じられないと思いますけど動く石像と戦ってたんですよ。それも増援が増えるたびに回復するっていう厄介なのと」
「回復ってのはどこまでなんだ?」
「全快ですね」
「ぬぅ、そりゃぁ……」
グランさんが顔を顰めて呻くように漏らした声を遮るように
「それで、武器も無くなってしまったのでアンクロで武器を作ってもらったんですけど……」
「ん、ああそんなことか。気にするな、探索者が丸腰って訳にゃいかんだろ」
「ありがとうございます。それでメンテとかはお願いしてもいいんですか?」
「かまわんが…… どんなヤツだ」
「えっと、コレです」
「こりゃぁ…… 工房の髭だるま、いややつの弟子のか」
「髭だるま? なんですそれ」
「ん、ああ、気にすんな。それより、さっきの話を信じるならこれでも役不足かもな」
「うわぁ…… そんな事態は遠慮してほしいなぁ……」
「全くだな。まぁ、なんかあったら言ってこい」
「わかりました」
それで建築中の家の方なんだけど。
結構長い間離れているうちに外観はほぼ出来上がっていていまは内装に取り掛かっているところだった。
他の皆んなはというとアフェクトと
それでも一番のんびり過ごしているのはセリシェールだった。
それから何日かあとの夜。
入浴を済ませたあとでまったりとした時間を過ごす
「できた!!」
勢いよく入ってきたセリシェールの手には希少なガラス瓶にはうっすらと輝く
爛々と輝く瞳で(ない)胸をドヤッと張って
「ん、それで。コレは何?」
「本当に何これ。甘い匂いがする」
「これはね、子供でも薬を飲みやすくするものよ。それも薬効は損なわないものよ!」
薬草を原料に使っている薬が苦いのは仕方がないことだと言ってしまえばそれまでなんだけど。これは無事帰還した祝いだと称して行われた酒宴のあとで『お腹が痛い』と
「これならお子様のレオでも大丈夫でしょ。さあ飲んでみて!」
「害はないんだよな?」
「それは大丈夫。私も飲んだから!」
「そ、そうか」
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