第81話
「今日はもう宿に泊まって装備を見に行くのは明日でいいよね」
「ん」
「それでいいんじゃない」
「ご飯食べたい」
「久しぶりに酒飲みたいしな」
というわけで装備品を見に行くのは明日ということになった。
宿の方はお風呂があるところがいいという女性陣の要望から結構いい宿の四人部屋を二部屋借りた。食堂は併設されているけど食事は別料金という油断するとお金がどんどん減っていく恐ろしい宿だった。
ホントはもっと安い宿もあったんだけど空きがなかったのでこの宿になったというわけ。
昼間は酒類を提供していない(この世界では珍しい)らしいこの宿の食堂も夜には酔客の姿がちらほら。
この宿に泊まれる客だけあってテーブルやカウンターで知人や恋人、家族で語らいながら過ごしている者の姿が見えた。
「受付の娘にが話しているのを聞いたが、ここは果実酒がおすすめだそうじゃ」
「え〜〜、絵面が……」
「ん、幼児が飲酒駄目」
「むぅ、どこが幼女じゃ! この中で一番年長ぞ!」
「しぃ、駄目だよ騒いだら」
「ん、めっ!」
さて、いま食堂には
そこはエイシャも感じているのかと思ったんだけど言動から察するにどうも親子ごっこをしているみたいでセリシェールが不満そうに睨んでくる。うん、こっちを睨んでも無駄だからな。
結局、機嫌をとるために果実酒を二人分とミルク、それとサラダを頼んで皆んなを待つことにした。
ミルク?
「なんで
ごもっともな
「飲み物とサラダだけ頼んでる。皆んなも好きなものを頼む」
「ええ、そうね。では
「私も、あと肉!」
食事のあとは疲れもあって今日は早く寝ようということになった。
部屋割りはいつものように
そう思っていた時がありました。
「うおっ、柔らかっ、それでいて身体をしっかり支えてくれる。これは駄目になるやつだぁ……」
「えっ、うそっ、ヤバっ! めっちゃ肌触りがいい、癒されるぅ……」
「もう、二人ともだらしないよぉ……」
「ん、三人がソファーに籠絡された」
「エイシャもこっち来てみ。これクセになるぞ」
「ん、じゃあ、お邪魔して。ふわぁ……」
このあと暫く四人でソファーに駄目にされていました。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
翌朝、目を覚ました
ロスター商会に入ると前回の納品物を覚えていた店員さんがネザニクスさんを呼びに行ってくれた。
そして現在。豪華な調度品に彩られた応接室で対面に座るネザニクスさんの前にひとつの指輪を置いた。その指輪は少しばかりの彫刻が入っているだけで宝石もない簡素なもの。
「この指輪は……」
あまり高価そうでもない指輪に訝しげな表情を浮かべたネザニクスさんに向けて「見ていてください」と言って実演する。
「えっと、これでいいか」
「おおっ! それは収納魔術の効果がある指輪ですか!」
「ええ、収納したいものに触れて『収納』と唱えることでものが収納できて取り出したいものを思い浮かべて『取り出し』と唱えると中身を取り出せる指輪です。これなら盗難に遭う恐れも減るでしょう」
「素晴らしい!」
「どうぞ、試してみてください」
おっと、試してもらう前にさっきのカップを取り出しておかないとな。
今回のこの指輪にも収納物をリスト化する機能はついている。流石に状態変化無しまでは付与してないけど収納量はそれなりに多い。とはいっても前回納入した背嚢よりは少ないから高額商品の取引に役立てて欲しいところだ。
ネザニクスさんはまるで新しいおもちゃを与えられた子供のようにはしゃいでいるけど、この商会の店主でいい歳のおじさんなんだけどなぁ。
「これでどうでしょう?」
すっかり興奮しているネザニクスさんが提示してきた金額は前回の
「では、これでどうでしょう?」
うん、金額が増した。
「ありがとうございました。良い取引ができました」
ホクホク顔のネザニクスさんにちょっと相談を持ちかける。
「実は、装備の新調を考えているんですけど、どこかいいお店を紹介していただけませんか?」
「装備ですか? そうなると……」
手を叩いて扉の外に控えていた人にナニやら耳打ちをするネザニクスさん。一度出て行ったその人が戻って来てまたもゴニョゴニョ。
「大丈夫とのことですので、よろしければこれからご案内いたしますが、どうなさいますか?」
「是非お願いします」
店の前まで出て来てくれたネザニクスさんとはここでお別れ。
「では、店の者に案内させますので、またのご利用をお待ちしております」
ロスター商会の紋様が彫られた馬車に揺られて装備を扱っているところに案内されているんだけど場違い感が半端ない。この中で浮いてないのは
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