第49話
昼食を挟んでアフェクトさんは仲間になることを決めた。
今持っている彼女のポーチはこのあと買ってくるバッグに収納魔術を付与をしたあとでオークションに出品する予定となった。
「その資金を元に拠点を手に入れたいね」とエイシャ達女性陣は話し合った。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
今日は残りの二軒の内覧に向かう約束の日。
雨はまだ降り続いていて、どんよりと暗い空を見る限り多分このあとも降り止むことは無いかなぁ。
アンディグ管理組合・キーソンさんの案内で約束の二軒を内覧していく。
最初に向かった物件は利便性は良さそうだったけどエイシャとアフェクトさんが嫌がった。
次の物件は利便性と降雨期の水害がネックとなりそうだった。
家の作りだけ考えると俺としてはあとから行った方が良さそうに感じた。
管理組合に戻ってからキーソンさんを含めた会話中にエイシャとアフェクトさんが最初の物件を嫌がった理由を話してくれた。
「キーソンさん、最初の物件。過去に事件が起きてない?」
「私もそれは思ったな。上手くは言えないが敷地に入った時から背筋にゾクゾクくるものがあった」
「私は頭痛がした。敷地を出たら治ったから、何かあると思う」
「ああ、霊的ななにか?」
「ちょっと、やめてよ」
「そういう実態がないものはちょっと……」(聖女がそれでいいのか……)
「私も、です」
「聞いたことはないですね。でも、ありがとうございます。こちらでも調べてみるようにします」
「それで、皆んなは二件目をどう思った?」
「利便性が悪いと思ったかな」
「そうだね、今の(エイシャの)家より町はずれになるからね」
「あと、降雨期の水害。実際どうなんですか?」
「そうですね。この前の雨の時には水車小屋が浸かりましたけど住居には影響がありませんでした。ただ、過去には床下浸水がありますね」
「そういった被害のでてないところの物件はありますか?」
「その条件の物件となりますと随分金額が上がりますよ。今住まわれているところを買取って建て替えることも考慮なされて宜しいのでは無いでしょうか?」
「ふむん、でも、あそこってそんなに広かったっけ?」
「ん、裏の空き地も込み」
「ということは結構広いなあ」
それからあとは新しい拠点に対して希望する内容を詰めて、大まかに必要な金額を教えてもらったあとでもう少し正確な概算を出してもらえるようにキーソンさんにお願いして管理組合をあとにした。
この頃には雨も上がって夕陽がのぞいていた。
「帰ろうか?」
「ん」
「「うん」」
「「はい」」
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
家に帰る途中に市場によってバックを購入した。
これはアフェクト(仲間になったからと『さん』付けはなしになった)用に収納魔術を付与するために購入したバッグ。基本的には
「前のポーチって今ひとつ服装に合わなかったんだよね」
そう言ったアフェクトは家に入るなり本来の姿になっていて長い髪の毛を纏め、特徴的な長い耳をピコピコと上機嫌に動かしている。
「そうだよね、遺跡や迷宮で手に入れた価値のある装備品ってやっぱり(デザインが)古いんだよね」
「それはそうだよ。何時のものとも知れないような遺物だよ」
「こんなのもある」
そう言ってエイシャは右手の薬指に嵌めた指輪を見せて「解放」と呟く。
その芝居じみた言葉にあわせて彼女の右手に銀の短杖が現れる。ホントは声に出す必要はない。この演出は
それでエイシャが身につけているこの指輪はあの擬態魔術を付与しようと思っていて忘れていたもの。どうせならと他の利用方法を考えていたんだよね。
装備品をすぐに取り出せるようにできたら便利だよねというエイシャの一言で収納魔術を付与することにしたんだけど。
余談だけど解放というのはこの短杖の名称。ミドヴィスの奴隷契約を解除するために色々付与した短杖がこれ。
実際にミドヴィスの契約解除は
俺とエイシャだとできなくて
できたあとで「さすが聖女様!」って言ったらポカポカと叩かれた。その時の
これをエイシャが持っている理由は単に
「その指輪も収納魔術なの?」
「ん、そう。装備品はこっちが便利」
「エイシャの希望で付与してみたんだ」
「「私も」欲しい」
「あ、宜しければアタシも欲しいです」
「えっ、え〜〜、あんたら、順応しすぎ……」
「ん、アフェクトもすぐに慣れる」
「もう、なんでもありなんだね……」
呆れたようなアフェクトの言葉に皆んなが笑いを溢した。
「人前で使えないのが玉に瑕と思ってたけど迷宮や遺跡でドロップしたって言ったら大丈夫かな」
「ん、バッグがあるくらいだから」
「そこは大丈夫じゃない?」
「装備品くらいなら大丈夫なんじゃない。アフェクトが持ってたバッグより容量としては少ないし」
「そうかぁ、じゃあ、皆んなのも作ろうか」
「「やった」」
「ありがとうございます」
「えっ!? 皆んなって、私も?」
「そうだよ。アフェクトだけ除け者になんてしないよ」
「ありがとう……」
やっぱり、嬉しいとピコピコと長い耳が動いて可愛い。
その光景を見た俺達(ミドヴィスを除く)はニヨニヨとした笑みをアフェクトに向けていた。
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