第23話
午後からの採取は三種類。それぞれについて説明をしていく。
「それじゃあ、説明していくよ。まずシェリディア。四つの花弁を持つ黄色い花を咲かせる植物なんだけど、群生することから採取は容易だけど傷をつけると黄から橙色の乳汁を分泌して皮膚に付着したら炎症を起こす。だから見つけたら俺を呼んで。次にジャオジュオン。三から七枚の小さな葉を鳥足状複葉につける蔓性の植物で木に巻きついてることが多い。繁茂力が高くて定期的に除去推奨かな。採取対象部位は葉の部分。蔓は籠を編む素材として使用されるから蔓ごと採ってきて。最後にプファンゲ。
「プファンゲは私が行く」
「そうだね、エイシャが適役かな。じゃあ、
「あっ……」
組分けをしていると
「あっ、
「ん、約束だからね」
「ありがとうエイシャ」
「ん、ユイナ。レオのこと、守って」
「任せて!」
こうして俺達は午後の採取に向けて動き始めた。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
夕方、陽が傾き始めた頃に皆んなは野営地に戻ってきた。
採取状況としては明日、もう一日あれば余裕を持って採取完了出来そうだった。ジャオジュオンの採取量が思いのほか少なかった。
「木の皮も齧られた痕跡が多く見られたので食べられていると思います」
「明日は別のところに行ってみる?」
「ん、その方がいいと思う」
「エイシャの方はどうだった?」
「ん、必要分は集まったと思う。ユイナはどうだった?」
「こっちはサングニエルがいたけどそれ以外には何もなかったよ」
「………………」
エイシャからジトーっとした視線を感じて「なに?」と返した
「折角、二人っきりにしてあげたのに……」
「ん? ああっ!?」
そんな彼女達の会話を聞き流しながらも俺は鉄板の上でお肉を焼いていた。今回は採取途中に見つけた
今はスライスしたものを肉汁で炒めている。これを焼き上がったお肉の付け合わせにするつもり。
「もう、そんな匂いをさせられたら話し合いどころじゃないよ」
「ん、アィルが食欲を刺激する」
「ん? アィル?」
疑問に思ってエイシャの方に顔を向けると食欲を刺激する匂いを辺りに漂わせる
「すりおろしてもいい」
「今度やってみようか?」
「ん」
辛抱の堪らなくなった皆んなで夕飯にすることに。
「いただきます」
唱和した俺達は最初にお肉を口に含んで「ん、んん〜〜」と声をあげた。
塩胡椒で焼いたものとはまた違ったピリッとした刺激が脂の甘さを引き立ててお肉の旨みが増した気がする。
「これも旨いな」
「ん、美味しい」
「「美味しい」ね」
「こんな美味しいお肉を食べたのは初めてです」と口々に感想を溢した。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
俺が片付けをして、昨晩と同じ様に
俺の横を通り過ぎる時に耳元で「覗きにきてもいいわ」とエイシャが囁いていく。その言葉にハッと顔をあげるとニンマリと笑みを向けられた。
「揶揄ったな」
「ん、ほんとに来る?」
「行かないよっ!」
ヒラヒラと手を振ってエイシャは三人の後を追って行った。
「スキンシップが足りなくて寂しいのかな? 二人にも随分気を遣ってるみたいだしなぁ」
野営地でひとりになった俺の方も少し実験をすることにした。
掘った穴の壁面を固めるイメージで魔力を付与してからその中に水を生成する。熾火の中に放り込んでいた石をその中に次々とドボン。じゅわっという音を立てて幾つか放り込んでいると薄らと湯気が出始める。そう、お風呂を作れないかと思って試している。
案外うまくいきそうな感じなんだけど、どうだ?
お湯に手をつけてみたところ少し温いけど、まあ許容範囲だ。
「じゃあ、入ってみるかな」
服を脱いで湯船(?)に浸かる。身体が触れたところから
「えっ、あっ、ああっ!?」
表面的に固められていた所に触れたことでその効果が剥がされたのかどんどん濁りが強くなっていき今の俺は泥風呂の中……
「失敗した…… もう出よ……」
泥船風呂から出て、頭上に水を生成して頭からかぶった。
「冷た……」
四人が戻ってきた時、俺は焚き火の前で身体を温めていた。彼女達がもう少し早く帰って来てたら真っ裸のところを見られる所だったな。内心、ホッと胸を撫で下ろす。
天幕はすでに設営しているから当直の順番を話し合って最初は俺とエイシャ、その次にミドヴィス、最後に
程なくして
エイシャのところに戻り、隣に腰を下ろすとすぐに俺の足の間に移動してきて身体を預けてくる。俺もエイシャの身体を後ろから抱き止める。なんだかこの状態が落ち着くようになってきたな。
「リイサの具合はどう?」
「ん、すぐに眠ったよ。疲れてたんだろうね」
「そうだね。ずっとレオを探してここまで来たんだから。町に帰ったらゆっくり休んでもらお?」
「そうしよう」
特別何かが起こることもないままに俺とエイシャは小声で色々なことを話をしながら星を見上げて過ごした。
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