第17話
三人が食事に夢中になっているうちにエイシャに二人のことを説明する。
「二人は前に話した俺の同郷」
「召喚された勇者と聖女?」
「そう、茶色の髪の短い方が
「ん、二人のうちどちらかと付き合っていたりする?」
「いやいや、そんなことないよ。二人は幼馴染で、俺が付き合ったのはエイシャが初めてだって」
「ん、そうなの。じゃあ信じてあげる」
よっぽどお腹が空いていたのか三人はもりもりお肉を食べている。この調子なら足りないかな?そろそろ魚の方もいい感じだし、声をかけるついでに聞いてみるか。
「三人とも魚の方もいい感じだから好きにとって食べて、あと、足りる?」
二人は顔を見合わせて頬を染める。ミドヴィスはその二人の様子を窺っている。
「えっと、その」
「久しぶりにまともな料理だったから」
「ついつい、夢中になって食べてただけだから」
「足りないとか、そんなことは…… ないから」
久しぶりに二人が交互に言葉を綴るのを聞いた。エイシャなんてポカンとしてるよ。まあ、初めて聞いたら驚くか。
ただ、二人がそう言ったのを聞いてミドヴィスがしょげた表情になったのを俺は見逃さなかった。
「じゃあ、二人はもういいとして、もう一枚焼こうかな」
「「えっ!?」」
「ミドヴィスさん、食べたいんでしょ?」
「えっ、あっ……」
チラリと二人の方に視線を送ると
「はい、許可が出たからね」
「あ、ありがとうございます……」
姿勢を正して膝をつき、地面に額を擦り付けるんじゃないかと思うくらいにお礼をされた。
この場合どう対応するのが良いのかわからず俺は「しっかり食べなよ」とだけ返した。
食事が終わり片付けを始めたところで
「洗い物くらい手伝うから」と言って
「ねぇ、今、どこから、お水出したの? そもそも、その桶は、鉄板は、お肉もそうだし、あの子のスープもどうなってるの!?」
「あ〜、何から説明すれば良いものか…… ひとまず洗い物済ませて
「ちゃんと説明してくれるならいい」
「じゃあ、そういうことで」
「ふぅ、さっさと済まそ」
ひとまず詰問は後回しにしてくれたようで片付けを優先することにした。
俺たちが片付けをしている間に
戻ってきたエイシャが俺の前にライパンを並べ「解体方法、見せて」と言ってきた。それを見た三人はまた驚きの表情になった。
「群れがいたの?」
「ん、ん〜、はぐれかな」
「そう、じゃあ見ててね」
このライパンの命を頂くという想いを込めて十字を切る。別にそういう慣習があるわけじゃない、ただそうしたくてしているだけ。
下腹部からナイフを入れて喉元まで切り上げてゆく。まだ生きていたんだろうビクビクと動く。
完全に死んでしまうと臭いがうつるからまだ生きているうちに解体を始める。
順番に内臓を取り出し、両足を脱骨させてゆき更にお腹を開いて肛門まで切る。そのあと動脈を切って出血させる。
「血抜きは後々の味にも影響があると俺は思っている。今回の依頼ならここまでやっといたら査定が上がるんじゃないかな」
「ん、そのライパンは私たちで食べようと思うから最後までして」
「わかった」
そのあとは外に向かって皮だけ切り離してゆき、ある程度切り離したら手で皮を引っ張ってゆくと綺麗に剥がれてくる。剥がれないところだけナイフで切り離して皮を剥ぎ、前脚を脱骨させて切り離す。そのまま頭の方に剥いでゆき、耳の骨を切り離すと顔の皮も綺麗に剥がせる。
「あとは三日程お腹に氷を入れて冷暗所で熟成期間が必要かな、そのあとで部位毎に切り分けてやればいい、骨も煮込んだら出汁も取れるからね。内臓はお好みで、その辺においとくと獣が集まるからあとで処分してもいいしね」
「ん、わかった。私もやってみるからレオ見てて」
皮を剥ぐところまで終わったライパンの血を拭って皮と本体をバッグに収納する。一応ライパンの血は桶で受けている。これはあとで処理するつもり。
そのあとエイシャは二匹のライパンを解体してみせた。手際は悪いものの手順は覚えたみたいだから今回の依頼を終える頃にはもっと上達しているだろう。
俺とエイシャの解体を眺めていた
「二人は解体してるとこ見たことない?」
「うん……」
そのうち慣れるだろう。俺もそうだったし……
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