第12話

◇◆ ◇◆ 礼央れお Side. ◇◆ ◇◆


 ウエストバッグやエイシャの背嚢はいのうに収納魔術を付与してから暫く日が過ぎた。


 二人で話し合って収納魔術のことは秘密にしておくことにした。

 騒ぎの元だし、狙われること間違い無しだからなぁ。


 エイシャとの考察で分かったのは俺はイメージすることで魔術を創造することができるようだということ。そして膨大な魔力量があった為に鑑定装置の許容量を超えていて総量を図ることが出来なかったのではないかというのがエイシャの推測だった。

 それでも推測が出来なかったのが俺の魔力の回復量。自然に回復するにしては俺の回復量は多過ぎるらしい。

 どっかに外部バッテリーみたいな物があるのかも。なんてことを考えたりした。まあ、その考えは荒唐無稽で有り得ないだろうけどな。


◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆


 そういった考察を終えて、そろそろ働こうという結論になってエイシャと二人で探索者組合にやって来ていた。

「なあ、相変わらず視線がキツイんだが……」

「ん〜〜、口付けする?」

 ザワッ、ガタガタッと音が響く。それと同時に一部から殺気が立ち上る。

「そんなに煽るなよ」

「ん、わかった?」

「まあ、エイシャのことだからな」

「ん、そんなこと、言われたら照れるじゃない。レオも嬉しいことを言う」

 頬を朱に染め照れている彼女は相変わらず可愛い、破壊力が凄いんだが! エイシャの表情を見ていると言った俺の方も心臓がバクバクと暴れてきた。


 そんな俺達を生温かい目でエルネスさんが見ていた。

「もういいかい、二人とも?」

「あ、はい。お待たせしました?」

「エルネスさん、ごめんなさい。昼から飲んでる壁際のに見せつけてやろうと思って」

「「「「「「うぐっ……」」」」」」


 チラッと音のした方を見ると項垂れて椅子から落ちたり、テーブルに突っ伏したりしていたがスルーする。(なかなかいい反応するな、あの人達……)

「それでどの依頼を受けるんだい?」

「エイシャはどれがいいと思う?」

「ん、私、これがいい」

 エイシャが手にしていた依頼書は二枚。一つは治療薬の素材になる薬草を籠一杯採取、もう一つはライパンの肉を三十体分採取するというもの。

「大丈夫かい、ライパンの肉をその数集めるのに二人じゃあきついんじゃ無いかい?」

「ん、大丈夫。前にライパンの群集地を見つけてるから」

「そうかい…… でも、気をつけて行くんだよ」

「はい」

「ありがとう、エルネスさん」


 探索者組合を出てすぐに俺達はライパンの群集地に向かうことにした。

 必要な物資は二人とも背嚢はいのうとバッグに入っているから準備も問題なしだ。

 途中まではアンクロに向かう街道沿いに乗合馬車に揺られて進むことにした。問題も無くのんびりと馬車に揺られて進んで行くと、最初の休息地点に乗合馬車は停まった。

 御者のおじさんに採取依頼でここから森に入ることは事前に告げているのでここまでの運賃を支払った。


 乗合馬車が休憩している間に携行食を口にして少しだけ休憩を取ることにして少しの間休憩を取ることにした。


◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆


 乗合馬車が目的地に向けて移動を始めたのを見送ってから俺達は森に入って獣道を進んで行くと開けた場所に出た。

「ここを拠点にしようか」

「ん、もう少し行くと川がある。どうする?」

「じゃあ、獣避けの仕掛けをしてから魚を獲りに行こう。俺、魚食べたい」

「ん、そうしようか」

 慣れた手つきで獣避けの仕掛けを設置していく。それを見てエイシャが感嘆の声をあげる。

「すごい、あっという間に仕掛けができていく」

「これもルゥビスで習ったんだよ」

「それだけでこんなに手際良く出来ないでしょ? やっぱり器用なんだねレオは」

「ありがと、あ、石と木を集めてかまど作らなきゃ」

「ん、それなら私が行こうか?」

「ん〜、もうすぐ終わるから、待ってて。一緒に行こう」

「ん、そうする」

 ポッと音がしそうな勢いでエイシャの頬が朱に染まった。

 なんで? と思わないでもなかったけど、どこか照れたエイシャのその表情はやっぱり可愛い。

「可愛いな、エイシャは」

「もう、……照れるじゃない、ばか」


 二人でかまど用の石や薪を集めている途中で食べることができる山菜や果物もちらほらと見かけたのでついでに集めていく。

 山菜の方はアク抜きが必要だからすぐには食べられないけど果物の方はその必要はないから食後に出してもいいかも。なんて考えながら茂みを掻き分けていたら大きな繭に手を突っ込んでしまった。

 俺が膝を抱えて蹲ったら入っちゃいそうなくらい巨大な繭…… どう考えてもヤバイヤツだよコレ……

「なぁ、エイシャ…… この森って人喰い蜘蛛いる?」

「ん? 森の奥に行けば大きいのがいる」

「そっかぁ、奥に行ったらいるのかぁ…… なら、これなんだと思う?」


 ガサガサと茂みを掻き分けて俺の隣に顔を出したエイシャは真剣な表情で撤退を進言してきた。

「レオ、戻ろ。この大きさの繭を作るのはグロッサアレンニだと思う」

「グロッサアレンニって大きいのに敏捷性が高くて少人数での討伐は厳禁な魔物だっけ?」

「ん、だから早くここを離れよ」

「あ、ああ」


 来た道を引き返していると森の奥から微かにメキメキとかズズンとか音が聞こえて来た。もしかしたらグロッサアレンニと何かが戦っているのかもしれない。

「これも報告しないとな」

「ん、そうだね」


 エイシャと相談して野営場所はグロッサアレンニの繭(推測)を発見した場所から離れた場所とする事にした。

 野営の準備は意外にも早く終わったので警戒しつつ川に向かった。

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