第10話
◇◆ ◇◆
結局、商業都市アンクロの探索者組合では
私達はポーターとして奴隷を求めていることを受付嬢に告げて、信頼の出来る奴隷商の斡旋をお願いした。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
その奴隷商の商館は一見すると豪華な屋敷で、広く手入れの行き届いた庭、煉瓦と漆喰に似た壁材のコントラストが美しい館。その庭で働いているのは手の甲や
奴隷達も想像していたような酷い扱いを受けている様子は見られず、健康で活力に満ちているようにすら見えた。
執事に来訪した目的を伝えると応接室に案内された。
応接室に向かう途中で「奴隷のイメージとしては牢に閉じ込められている姿を想像していた」と正直に執事にそう告げると笑われた。
応接室の中では四十代くらいの男性が私達を待っていた。
その男性は商館の主人で? うん、多分主人……
「アンクロの奴隷商・ネギルイエと申します」
うん、主人であってた。
結構ガチめの筋肉がついていて腕なんて
簡単に自己紹介を交わして改めて訪問した目的を告げる。
執事の人にもした話をネギルイエさんにもした。
ネギルイエさんはニヤッと笑って返答を返してきたけど、その顔はどう見ても商人という感じには見えない。どちらかというと熟練の探索者のように思えた。
「命令を聞かず暴れるような奴隷や、犯罪奴隷は暫くの間は牢に入れていますよ。ですが借金奴隷はその限りではありません」
「そうなんですね」
「はい、それで、お求めの奴隷の詳細をお伺いしても?」
「馬車の通れない道を私達に変わって荷物を運ぶ奴隷が欲しい。あ、女性限定でお願いします」
「かしこまりました。では、お待ちください」
侍女(奴隷)が持ってきたお茶に口をつける(ふりをして飲まない)。
ネギルイエさんの
この辺りは今まで受けた依頼の中にそういった案件が探索者組合だけではないが少なからずあったから警戒しても仕方がないことだと思う。
元の世界にいた頃だったら簡単に騙されていたかも。これについては指導してくれた騎士に感謝しかない。
五分程経過しただろうかネギルイエさんは三人の女性を連れてきた。
「お待たせしました。今、当商館でご要望に添えるのはこちらの三人になります。お前達、お客様に自己紹介をしなさい」
「私はユーミルと申します。礼儀作法、家事全般の心得があります。山間で育ちましたので多少荒れた道でも問題なく歩いて見せます」
ユーミルはメイドって感じでポーターじゃないな。
「カステリアです。以前探索者をしていました」
「それだけ?」
「弓が得意です」
「そっかぁ」
カステリアは口数が少ないのか情報は少ない。まあ、探索者をしてたんならそれなりに歩けるかな?
「等級は?」
「…… 真珠(E)です」
「なるほど」
この世界の探索者の等級はダイヤモンド(SS)、サファイア(S)、ルビー(A)、エメラルド(B)、アレキサンドライト(C)、オパール(D)、翡翠もしくは真珠(E)、新米(F)の順につけられていて彼女は真珠(E)。一応新米の域はでているわけか。
「次、どうぞ」
「私はミドヴィスといいます。身体は小さいですけど体力には自信があります。あと嗅覚が人より優れています」
身長は百六十センチくらいで可愛らしい感じの彼女の頭には可愛らしいケモ耳があった。
「ちょっと後ろを向いてもらえるかな?」
「はい」
目に見える形でもふもふの尻尾はない。けど、これで確信した。この子は熊獣人だ。熊はゾウほどでは無いけど犬より嗅覚は優れていたはず。
「大勢の人がいる中で
「ハッキリと
「ありがとう」
「少し考えさせてください」
私がミドヴィスと話している間に
ネギルイエさんに連れられて三人が退室したあと私達二人で話し合う。
「ミドヴィスがいいと思うんだけど、
「うん、私もそう思う。多分、彼女は熊の獣人だよね」
「でも、臭いはどうする?
「ふっふっふっ、けふっ、こ、こんなこともあろうかと
「で、
「あ、いやぁ、警察犬みたいに臭いで捜索できないかと思って持ってきてたの。ホントだよ」
若干目が泳いでいるからそれだけかは疑わしいがそれはまた今度追求しよう。
そんなコントじみたやり取りを交わしているとネギルイエさんが戻ってきた。
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