第38話神の舞踏会4

「ご覧の通り先程、天使が侵攻してきました」


クレヴァーとかいう神の言葉を聞いた神々は、皆が皆驚きの声をあげていた。なぜ、どうして、早すぎる……などなど。中には急いで戻ろうとする神まで出てきた。

だけどお姉ちゃんだけは取り乱すことなく静かに構えていた。さっきあの得体の知れない神クレヴァーが突然現れた時も平然と受け答えしていたし、さすがは私のお姉ちゃんだね。

でも正直言って話についていけない。たぶん天使ってのは神達の敵で、それが突然攻めてきたって感じなんだろうね。

私が考え込んでいると、ロリ神様(ヘラ)が手を叩いた。みんなの視線がロリ神様に移る。


「皆一度落ち着け。で、この話は本当なのか?」

「私が嘘をつくとでも?」

「普通に信用できんが、まぁ信じてやろう。真実だとして、天使らが我らの世界に到達するにはまだ距離があり時間もかかる。まだ焦る時ではない。そうじゃろう、クレヴァー」

「はい。天使達が私達の世界に到達するのに必要な時間は約三日後です」

「ではまだ間に合う。舞踏会はこれでお開きじゃ。神々は即刻自分の世界に帰り、天使共との戦に備えよ。では、行け!」


ロリ神様の喝が入り、神達は一斉に行動を開始した。でもお姉ちゃんと一番話していた神達はそのまま残っていた。

私たちもお姉ちゃんと帰ろうとしたけど呼び止められて残っている。

お姉ちゃんめっちゃ嫌そうな顔してる。気持ちはわかるけど隠そうよ。まぁ表情筋死んでるから無表情とそんなに変わらないんだけどね。


「出してください」

「だめじゃ、お主はそこで天使に関する情報を吐け」


クレヴァーさんは私達と同じで帰ろうとしたんだけど、まあ天使達の情報を握っているのはクレヴァーさんしかいないから帰られるはずもなく、帰ろうとしたところで即ヘラさんに檻で捕まった。

今はその檻の中というわけ。

ちなみに私たちはヘラさんが召喚した椅子に座ってる。お菓子の乗った机を囲う形で。


「仕方ないですね、言ってあげましょう」


クレヴァーさんはやれやれといった風にポーズをする。でも顔は感情を何も表していなくて、声にも感情がない。まるで機械と話してるような不気味さがある。

この人怖い。


「なんですか、その態度は。あなたは囚われの身、私達はあなたをどうとでもすることができるんですよ。もう少し誠意を見せてください」


メガネ美女のセクメトさんがクレヴァーさんに物申す。マジで美人なんだよなセクメトさん。


「クレヴァーさん、掴んでいる情報があるなら言ってよ。僕達だって手荒な真似をしたいわけじゃないんだ。それに優華ちゃんの時間を浪費させたくない」

「そうだよ。僕らだって拷問したいわけじゃないんだ」

「お前ら物騒だな。もうちょっと殺気を抑えろよ。後イツァムナー、お前は自分の欲を抑えろ」


立て続けにイケメンだけどオタク気質なイツァムナーさん、ショタだけど物騒なエレボスさん、陽気なイケおじのアレースさんがクレヴァーさんに話しかけた。

………改めて見ると本当にこの神達キャラが濃いな。一人でも結構お腹がいっぱいなのに立て続けにこれは酷い。

お兄ちゃんとお姉ちゃんなんて虚空を見つめて黙っちゃってるからね。


「怖いですね。最上位神の肩達は。私が知っている天使の情報ですが、私たちの世界にたどり着くまでの時間と、悪魔もそうですが何かを探しているみたいですね」

「何かはわかっておらんのか?」

「おそらく神能でしょう」

「神能?」

「優子はまだ知らぬか。神能は、神が一人一つ待つ能力のことじゃ。一人一人効果が違っての。また、ランクも存在する。神能位と言っての。上から深紅しんく真紅クリムゾンスカーレットレッドとなっておる。最上位神は深紅からじゃ」

「へぇー」

「で、クレヴァー、天使と悪魔になぜ神能が関係するんじゃ?」


ヘラさんからの質問にクレヴァーさんは腕を組んで手を顎に持っていき推理するようなポーズをする。

……顔はずっと無表情だからシュールだな。でも美人がやると様になるんだよねぇ。後この人面白いな。


「私が仕入れた情報によれば、二つ程特別な神能があるようです」

「特別な神能?」

「ええ。神能位はヘラさんが先ほど言った通り四つに分けられますがその二つは例外なのです」

「勿体ぶってないで結論から言ってよ」

「優華ちゃんを眺める時間が延びるからいいけど、あまり待たせるのも悪いから手短にお願い」


ショタと変態の文句にクレヴァーさんはやれやれとアピールして、口を開いた。もちろん無表情で。


「二つの特別な神能の名は『創造』と『破壊』、五つ目の位を冠する神能です」

「「「「「!?」」」」」


クレヴァーさんの言葉に最上位神の人達はみんな動揺したようだった。まぁそれもそっか。今まで信じてた常識が覆されるんだから無理もない。

でも一つ言いたい。お姉ちゃんなんか顔色悪いよ?

お姉ちゃんが顔色悪い時は時内心かなり動揺してる時。つまり、お姉ちゃんはなんか知っているということ!

でも流石に今の状況で問いただすのはいただけない。話してお姉ちゃんが不利になる可能性があるからね。だから今は成り行きを見守ろう。


「それは本当なのか?」

「適当なことは言ってませんよね?」

「私は真実しか語りませんので」

「僕は今最も信用できない言葉を聞いた気がする」

「エレボスさん、僕もです」

「酷い言われようですね」

「日頃の行いじゃ」


クレヴァーさん、扱い雑いな。めちゃくちゃ怖くて得体の知れない、底が見えない感じがするのに。もうこれじゃあ狼少年みたいなもんだよ。

嘘じゃないのに普段の行いのせいで信用されない。うん、狼少年だね。


「では話の続きをしましょう。私の調べによれば五つ目の神能位が存在することがわかりました。位の名前は臙脂えんじ。どんな効果があるのかは流石にわかりませんが、どうやら戦争の切り札になるほどの力を持つみたいです」

「うげぇ……まさかそんなものがあるとはのぅ」


あれ? なんかお姉ちゃんが少しホッとしてるな。これはどういうこと?

たしか創造と破壊の部分を聞いた後は動揺していた。でも神能位に対してはホッとしている。神能位に何かあるに違いない。


「どうやら天使は二つの神能位がこの次元にあると踏んでいるようですね。だから滅ぼして見つけようとしているみたいでます」

「馬鹿なのか?」

「言い過ぎですよ」


もうちょっとちゃんと探して欲しかったよ。でも聞いている限り敵対しているみたいだからどの道攻めてきたんだろうね。はぁ嫌だわぁ、お姉ちゃんをずっと着飾っていたい。


「私がつかんだ情報は以上です。後はあなた方で話し合ってください。私は帰ります」


そう言ってクレヴァーさんは檻を破壊した。

……なんで今破壊したんだろう。もしかして監禁されているのに興奮していたのかな?


「最後に質問じゃクレヴァー」

「なんでしょう?」

「なぜ我らに天使の情報を話した? 我らとの協力を拒否したお主が」


ヘラさんの問いにクレヴァーさんは何の感情も見せずに返事をした。


「一方的に蹂躙されるのは面白くありませんから」

「はぁ、そうか」

「では私はこれで」


クレヴァーさんは跡形もなく消えた。たぶん転移だね。


「では、天使に対する対策を話し合おうか」


クレヴァーさんが去っても会議は続くみたい。いや、ここからが本番なのかも。だからお姉ちゃん、お兄ちゃん、そんな嫌そうな顔しないの。

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