友の章
第35話神の舞踏会
朝、私は優子の腕から抜け出した。相変わらず甘えん坊だ。優子の顔をそっと撫で、ベッドから降りる。
そのまま着替えを済ませて朝の支度をする。以前とは違い心に余裕ができたからか、すごく気分がいい。これなら何が起こっても大丈夫そうだ。
……と思っていたからかもしれない。
「優華様、主様がお呼びです」
転移の予兆を感じとり目を向けると、ヤクザメイドことイリスがいた。
とりあえず無視して優子を起こすことにする。
「優子、もう朝だぞ、起きろ」
「…うー……あと二時間……」
「早く起きないとご飯食べれないぞ」
「優華様、主人様がお呼びです」
「……え? 誰!?」
イリスの声でようやく優子が起きた。ありがとうイリス、できたらそのまま帰ってくれ。
そんなことを思いながら優子に話しかける。
「優子、そろそろ朝ご飯だ。行こう」
「いやお姉ちゃんちょっと待って。そこにいる美人のメイドさんは誰? なんでいるの?」
「優子、行こう」
「アッ、ハイ」
私は優子を連れて部屋を出た。なぜかイリスが付いてくるが気にしない。
長い廊下を歩き、食堂に着いた。イリスはまだ後ろにいる。帰ってもいいんだぞ?
食堂に入ると眠そうな顔をしたハデスと兄さんが座っていた。二人とも朝弱いから眠いんだろうな。
「兄さん。おはよう」
「優華か。おふぉよう」
「二人ともおはよう。兄さんは顔洗ってきたらどうだ?」
「んー、別にいいや」
本当に大丈夫なんだろうか?
欠伸しながら挨拶されても説得力ないんだが。しばらくすると父さん達も起きてきて、みんなで朝食を摂った。
家族との久しぶりの朝食はとてもおいしかった。
「優華様、朝食が終わりましたようですので、そろそろ主様の所へ参りましょう」
朝食を食べ終わり雑談などをしていると笑顔で青筋を立てるという器用な怒り方をしているイリスが言葉を発した。
……圧がすごい。笑顔なのに圧を感じる。すごい怒ってる。はっきり言って怖い。
「なぁ優華、そのメイドさん誰だ?」
「申し遅れました。私は最上位神の一柱であらせられるヘラ様の従者、イリスと申します。今回私がここにおります理由は、主人のヘラ様が優華様をお呼びしたからです」
「……なるほど。ではイリス殿は優華を呼びに来たのですね。」
「え、行かなくていいのかそれ」
「行きたくないから粘ってるだけだが?」
私がそう言うと、母さんが厳しい目つきをした。あ、これ怒ってるやつだ。
「優華、せっかくの誘いなんだから行きなさい。そんなではいつまで経っても友達なんてできませんよ?」
「うぐぅ……!」
母さん、その言葉はよくない。いくら私がぼっちだからってそれは酷い。私にダメージがでかすぎる。
はぁ、ここまで言われたら行くしかないか。でも私だけ地獄を味わうのは頂けない。
そうだろう? 兄さん、優子。
「……兄さん、優子。行こうか」
私は満面の笑みでそう提案する。道連れだ!
「いやいや優華、俺にはこの後少し予定が……それに部外者が参加するのは良くないだろう?」
「……別にそんな事はありませんよ。あなた方は全員最上位神並の魔力を有していらっしゃいますので参加は自由です」
「で、でもでもでも! 私達にお茶会なんて向かないし。ね、お母さん」
「……いい機会です。二人とも、行ってらっしゃい」
「え!?」
「お母さん!?」
「二人とも今は一応貴族なのです。神とコネを作れる機会なんてそうそうありません。それに、優華を一人でいさせないと誓ったではありませんか。私達はハデスさんの手伝いをするのでぜひ行ってきなさい」
結果的に二人を道連れにする事はできた。すごく嫌がっていたが問題ないだろう。
私を一人にさせないと言った責任を取ってもらう。
そんなことがあって、今私はまたあの不思議な世界に来ていた。今回はヘラしかいないようだ。
「おう優華。突然呼び出してすまんかったの」
「おお! ロリババアだ! ロリババアがおわすぞ!」
「崇めー! 崇め奉れーー!!」
ヘラを目にした兄さんと優子は急に手を合わせて崇め出した。二人ともやめてほしい。恥ずかしいから。
「誰がババアじゃ! 儂はまだ9000不可思議歳じゃ!」
……数が大きすぎてよくわからないな。でも年寄りには変わりないな。
「不可思議?」
「無量大数の一つ前の単位だな」
「ババアじゃねえか!」
「たがら違うと言っておろう! 儂はまだピチピチなのじゃ!」
「ヘラ様、流石に無理があるかと」
「イリス、貴様もか!?」
完全にヘラをいじる流れになったな。まぁ事実だからいいか。
「優華そやつらはなんじゃ!? こんな失礼なやつ初めてじゃ!!」
「この二人は私の兄と妹だ。……なんかごめん」
「むむむ……優華の兄妹であったか。それならばまぁいいが……ところでロリという言葉は何の意味があるのじゃ?」
「ヘラ、そんなことよりなんの用があるのか話してくれ」
「う、うむ」
この話題は絶対に止めなければならないので本題に移る。後ろの二人がすごく恨めしそうに見ているが仕方ない。ロリネタで私をいじろうとしたってそうはいかないからな。
「おほん。今回優華を呼んだ理由を話す前に三人とも座るといい」
ヘラの指示に従い、私達は用意されていた椅子に腰を下ろした。全員が座ったのを確認してヘラは口を開いた。
「今回優華を読んだ理由は他でもない。そなたに数日後に開催される神々が集まる舞踏会に参加してもらうためじゃ」
「舞踏会?」
「そうじゃ。そなたには舞踏会に通ってもらいたいと思っておる」
「嫌なんだが」
「そう決断を急ぐでない。まだ話の途中じゃろうが」
拒否したら怒られた。
むぅ、確かに話を最後まで聞かないのは少し軽率だったか。仕方ない、最後まで聞くか。
「この舞踏会には他の神を知るという目的があり千年に一度開催される。神の茶会と似ているが神の茶会はあくまで同じ強さの神同士が行うものであり、この舞踏会は強さ関係なく自由に参加することができる」
「そうなのか」
「優華に参加してもらいたい理由としては他の神に優華を知ってもらい手を出さんようにしてもらうためじゃ。どうじゃ? そなたにもメリットがあるじゃろう?」
「……確かにメリットはあるな。ただ別に私は他の神に知ってもらいたいとは思わないがな」
「いやいや、優華を知らない神から絡まれることがあったり、自分の世界で好き勝手されてしまう可能性があるじゃろ。それを防ぐために優華の強さを知ってもらい手出しできないようにしたほうが良いのじゃ。それに今は天使と悪魔のせいで色々と荒れておるし、これ以上騒ぎになってほしくないからな」
「なるほど。そう言う理由なら参加しよう。付き添いはありか?」
「そこは自由で良いぞ。ただ舞踏会にはドレスで来てもらいたい。歴史あるものじゃからな」
「わかった。そうする」
舞踏会か。漫画やアニメとかで見たりはしたが実際に参加するのは初めてだな。
付き添いは今もヘラを崇めてる二人でいいか。
「……ところで優華や。少し聞きたいのじゃがなぜその二人は最上位神並の魔力を持っておるのじゃ? 普通儂らクラスの魔力を持つ者など普通おらんからな。ハデスの時も驚いたがまさかまた創ったなどと言わんよな?」
「いや今回は二人を神にしただけだ」
「いったいどうやったら最上位神並の魔力を持つ神ができるんじゃ! そもそもおかしいのじゃ! ハデスの時も! よくよく考えたら最上位神並の強さを持つ者がどうしてそうポンポンと出てくるのじゃ!」
「成るものは仕方ないだろ」
「えぇ……」
なぜかヘラにドン引きされた。解せぬ……。
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