第28話天使と悪魔対策
ハデスと旅に出て半年が経った。
子供達には全員会えたのでもうやることがない状態だ。
「さて、どうしようか」
「お母さん、どうかしたの?」
「いや、もうやることないから何をやろうかなと」
「………なにしよう?」
旅が終わり傲慢の魔王城で二人いっしょに悩んでいると、時空の歪みを感知した。これは誰かが転移してくる予兆だ。
それにしても、タイミングがいい。暇だったので今回ばかりは感謝だ。
「優華様、主様が及びです」
顔を向けるとそこにはヤクザメイドことイリスがいた。
「わかった。行く」
「優華様、一つおき聞きたいのですがその方は?」
「私の子供だ」
「!?」
優華の発言にいつもは無表情なイリスの顔が驚愕に染まる。何やら驚いているようだ。
普段表情を変えないため、彼女の驚いた様子を見たのはこれが初めてだ。一体何があったのだろうか。
優華は驚いているイリスに困惑しているが今、とてつもない誤解が生じた。
「お相手は……どなたですか?」
「??」
「お相手って?」
「いえですから、どなたと結婚したんですか?」
「え? 結婚?」
「え……お母さん結婚したの? 聞いてない!」
「いなしてないが……」
「ではなぜお子さんがいるんですか?」
「あぁ、そういうことか」
優華はイリスに一から説明した。説明が終わるとイリスは納得したようで、無表情に戻った。そして本題に戻る。
「優華様、主様を待たせるわけにはいかないのでそろそろ…」
「あぁ。わかった」
「私も、行く」
「え?」
突然ハデスが付き添いを申し出た。当然なぜかわからない優華は困惑する。
「お母さんを一人にできない。私も行く」
「いや一人で行けるんだが」
「お母さんあるところに私あり。絶対に付いてく」
「優華様、ハデス様もご一緒で構いませんよ?」
「いいのか?」
「はい。優華様の娘と聞いた時の主様の顔が見たいので」
「えぇ…」
そんなこんなで優華とハデスはいっしょに神の茶会に行くことになった。
「よく来たのぉ、優華。して、その娘は誰じゃ?」
「どうやら優華様のお子さんのようです」
「「「「「え?……は?」」」」」
どうやらとても予想外の回答だったらしい。神達はとてもおもしろい顔で固まった。
「え? いやいやいやいや! 優華、お主結婚しておったのか!?」
「そんな……! 初恋だったのに!」
「おぉ…まじか。嬢ちゃんに旦那が……」
「お名前は? 年齢は? 詳細をお願いします」
「さすがに僕もびっくりだよ」
各々の反応を示す神達に、優華はまた一から説明した。納得できたのか騒ぐのは終わった。
「で、今回は何のようだ?」
「優華よ、そろそろ最上位神にならんか?」
「断る」
「うぐ……そこをなんとか」
「いやめんどくさいし」
優華がそう否定すると、ヘラは目に見えて落ち込んだ。それを見兼ねたのかハデスは優華に提案する。
「お母さん、少し理由を聞いてあげたら?」
「……わかった。じゃあ理由だけ聞く」
「おう! 感謝するぞハデスよ! では説明するぞ」
そうしてヘラはなぜ優華に最上位神になってほしいか説明した。
ヘラ曰く、今神達は争っているらしい。最上位神は今目の前にいる五人の他にあと何人かいるらしい。
「その中で最も危険な者が三人おる。数ある竜を統べる竜神ドラゴーネ、最上位神の中で最も世界を有する賢神クレヴァー、そして、三人の中でも絶対に関わってはならない、最強最悪、唯我独尊、数多の世界を壊した邪神マオ。この三人は最上位神の中で別格の強さを持っておる。特にマオはその中でも別格じゃ。あやつは既に最上位神を五人殺しておる。我らの仲間ではなかったので良かったものの、もしあやつが我らに牙を剥くならば最低でも一人は死ぬじゃろうな。……ぬ? どうした優華、顔が青くなっておるぞ? 具合でも悪いのか?」
「いや、大丈夫だ」
先程ヘラが述べた言葉に優華は内心すごく動揺していた。邪神マオ、その正体は優華だ。
優華は度重なる終わりない旅に精神が壊れ、殺人鬼になったことがある。自らをマオと名乗り、人々を残虐な方法で殺し、その世界の神も殺していた。
旅が終わった今では平常心を取り戻して大丈夫なのだが、壊した命を取り戻すことはできない。世界自体も破壊してしまったのでもう駄目なのだ。
優華はその罪を忘れることはない。
「あやつは今行方がわかってはおらん。だから不気味なのじゃが……。少し脱線したな。続きなんじゃが、儂らは今同盟を組んでおる。それは例の三人に対抗する他にも理由があるのじゃ。それは、天使と悪魔達への対抗じゃ」
「天使と悪魔?」
ハデスがそう聞くとヘラは天使と悪魔について語り出した。
天使と悪魔とは別次元に住む生物だ。それぞれ天界と魔界に住んでいる。
ここで言う次元というのは異世界や並行世界のことではない。次元とは、世界が存在する場所のことを言う。
異世界を木と例えるならば次元は空と地。位置関係的にもそうだ。神達の住むこの次元を挟むようにして天界と魔界は存在する。
昔は天界と魔界だけあり、激しい戦争が勃発していたらしい。
その影響でどちらも種としての個体数が圧倒的に減った。このままではどちらも全滅という時に天界と魔界を分かつように一つの次元ができた。それが神の住むこの次元らしい。
「最近は平和じゃったんじゃがな。そうもいかんくなった」
「というと?」
「考えてもみよ。あやつらは戦争中じゃったのじゃ。その憎しみと野心を抑えることはできぬじゃろうて。故に今天使と悪魔は戦争を再開させるため、準備をしておった。そしてもうあやつらも準備が整ったじゃろう。戦争を再開させるためにまず消すのはこの次元じゃろうな」
「なるほど。それで戦力を集めていると」
「そういうことじゃ。一応先程言った最上位神のドラゴーネとクレヴァーにもその事を伝え要請を頼んだんじゃが返事は来ておらん。どうやら個人で戦うようじゃの」
「そうか。君達は個人では戦わないのか?」
「儂らはあまり強くないからな。敵の強さは未知数故、固まっていた方が得策なのじゃ。して優華、お主はどうする? 天使と悪魔の戦力は未知数。お主だけで勝てるかはわからぬぞ」
「ふむ……戦力的にはおそらく問題ない。それより私は君達の方が心配だな」
優華がそう言うと神達は首を傾げた。優華が他人を心配するのはとても珍しいからだ。ハデスも驚きながら優華を見ている。
「お主が儂らの心配をするのは初めてじゃな」
「まぁ、たしかにな。この前私は天使と戦った。たしか最上位天使と名乗っていたな」
「は?」
優華の発言にヘラはまた固まった。他の神も同じような感じだ。
「え? ちょっと待て。最上位天使? おそらく我らと同じような存在なんじゃろうが…そやつと戦ったと?」
「あぁ。とある神が呼び出した」
優華はヘラ達に最上位天使イェレミエルの事について話した。ヘラ達は聞き終わった後少し考え込み、考えが纏まっとのか顔を上げる。
「優華よ、おそらくお主の世界、天使に狙われておるぞ」
「やっぱりか」
優華自身先程の話を聞いて考えていた。天使が最初にどこを攻撃してくるのか。それは魂の質がいい、自分の世界で間違いないだろう、と。
「よし、これで天使への対策が取れるのぅ。優華、状況提供感謝するぞ」
「別にいい。代わりと言ってはなんだが、私もこの計画に参加させてくれ」
「お!? やっと最上位神になる気が起きたか!? もちろんよいぞ!」
こうして優華はヘラ達とともに天使と悪魔の対策をすることになった。
【後書き】どうも緋色です。小説が面白すぎて書くのを疎かにしていたつけが来ました。これからはもう少し計画的に行きます。
今回からストーリーを進めて行く予定です。最近は停滞してましたからね。
ではここまで読んでくださりありがとうございました。
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