第24話優華の糸口

俺はユウタ・カンズ。マルール帝国で唯一公爵の位を持つ貴族だ。

そして俺は数日前前世の記憶を取り戻した。前世の名は神森優太。だが記憶を取り戻したのは俺だけではなく、家族全員が、前世の記憶を取り戻した。

それも全員が前世でも家族だったのだ。

だが一人だけ足りなかった。長女の神森優華だ。あいつを見つけてまた家族になるのが今世での俺の願いだ。だから、絶対に見つけてやる!


「と意気込んだはいいが……どうやって探せばいいのか全然分からーん!」

「お兄ちゃんうるさいよ」

「いやだってよ、こんだけ探してなんで何も情報がないんだ?」

「う〜ん…もしかしたらこの国にはいないのかもね」


俺達が優華の情報を探していたのはあくまで国内のみだった。国外となると色々と面倒なことが起きるからだ。

だがそれも仕方がない。俺は絶対にあいつを連れ戻すんだ。


「よし、じゃあ国外の情報も探ろう」

「いいの? 王家に目をつけられるかもよ?」

「その時はその時だ。優華を見つけるためなら王家も怖くねぇ。それに、俺達には女神から貰ったスキルがあるだろ?」

「それもそっか。いざとなったらスキルを使えばいいよね。……じゃあスキル使って探したほうが早くない?」

「あ……そうだった」


やべぇ忘れてた。優華を探すことを意識しすぎて手段を忘れちゃだめじゃねぇか。これから気をつけよう。

気を改めてまずはスキルの確認だ。俺のスキルの魔剣招来の効果は魔剣を生み出すスキルだよな。それでその強さや属性を決めて出せると。

じゃあ優華を探すのに一番いい属性はなんだ?

ん〜、なくね?

たしか属性は全部で四つで、それぞれ火、水、雷、風だ。この中で優華を探すのに向いてる属性はないな。似たようなことならできるのかもしれないが、できたとしても帝国内の範囲だけだろう。

それじゃあ足りないんだ。少なくとも大陸一つ分はできないと。そのことを優子に説明すると、何を言ってるんだって顔をされた。


「お兄ちゃん、そういうときは自分で属性を作るんだよ? ラノベとかでよくあるじゃん」

「あ! その手があったか!」

「もう、何やってるの」


危ねえ、また可能性を自分で潰すところだった。そうだ作ればいいんだ属性を。たしか属性を自分で決める機能があったからな。

よし早速やってみよう!


「いくぜ、『魔剣招来』発動!」


………何も起きなかった。はっっっっず!

なんで何も起きねぇんだよ! 普通起きるだろう!

ほら優子も笑うの必死にこらえてるよ!


「ブフッ……お兄ちゃん、もしかしたら頭の中で発動する系なのかもよ? フフフフフwww」

「……あぁ〜それならあり得るかもな」


はぁ…じゃあ改めて。俺は右手を出してイメージする。

属性は探知と検索、形は……もしや剣だったらどんな形でもいいのでは? ということでスマホの形にする。イメージとしてはアプリを押したら剣になるスマホだ。

だから属性にはもう一つ変形を付けよう。

よし、イメージは完璧だ。こい、俺の魔剣よ!



魔剣招来『スマホ型』



右手の手のひらから魔法陣が生成される。そして眩い光を纏いながら出てきたのは、黒のシンプルなスマホだった。スマホはそのまま落ちることはなく、そのまま浮いている。

俺がスマホを手のひらに収めると、その重さがしっかりと感じられた。

俺はそれを見て、雄叫びを上げる。


「よっしゃああああ! 来たぜ、俺の魔剣!」

「えぇぇぇぇ!? ちょっと待って! 魔剣作るんじゃなかったの!? なんでスマホなのーーー!」


優子がなんか言ってるが気にしない。俺は先程創ったスマホを起動してみる。スマホを起動すると普通にホーム画面が現れた。

ホームには二つのアプリがあった。一つはよく見るマップアプリで、もう一つは剣の絵が書かれたアプリだ。おそらく変形のアプリだろう。


「よし、早速探すか!」

「ちょっと、無視しないでちゃんと答えてようーー!」


俺はマップのアプリを押して開く。マップを開くと表示されたのはこの世界ではおそらく見ることができない地図だった。

へぇ、こうなってるのか。あれ? なんか地球と同じじゃね?

地図は俺の世界のものとほとんど同じものだった。なんかめちゃくちゃ気になるが今は詮索はしない。

そして俺はマップの下側に表示されている検索を押してみる。するとこれまたよく見るキーボードが出てきた。しかも日本語だ。

めっちゃ便利だなこれ。よし、じゃあ打つか。

俺はそのキーボードで、神森優華、場所と検索した。

すると一つのピンが立つ。そのピンが立っているのは、帝国の隣の国だった。そこには巨大なダンジョンがあることで有名な国だ。名をスフィーダ王国という。

そこに、優華がいる。


「ちょっとお兄ちゃん! いきなり黙ってどうしたの!?」

「優子、優華の居場所がわかったぞ!」

「………え? それ本当!?」

「あぁ! 見てくれ!」


俺は優子にスマホを見せる。優子はしばらく画面を見つめ、次に俺を見る。


「お兄ちゃん、これ本当なの?」

「たぶんな。というか、これしか情報がないんだ。信じるしかないだろ」

「それもそっか。じゃあ急いで父さんたちに伝えよう!」

「おう!」


俺達は急いで家にある図書館を出て、父さんたちのいる書斎に向かう。走ったのでメイドや執事達には驚かれた。すまないが今は緊急事態なので許してほしい。

父さんの書斎に着くと俺はすぐさま扉を開けて声を張り上げた。


「父さん、母さん! 優華の居場所がわかったぞ!」


父さん達は突然扉を開けた俺に一瞬驚いていたが、俺の言葉の意味を理解するとすぐに食いついた。


「それは本当か!?」

「確証はないが情報はこれしかない!」


それから俺はスマホのことと優華の居場所を細かく説明した。


「なるほど。スフィーダ王国か。すぐに向かうぞ」

「あぁ、早く優華を見つけよう!」

「うん! お姉ちゃんを早く!」

「ちょっとあなた達待ちなさい!」


今にでも駆け出そうとしていた俺達を止めたのは母さんだった。


「あなた達の今の身分を考えなさい。公爵家の人間が、ましてやその中心ともなる人間がいきなり来たりしたら大騒ぎです」

「むぅ、それはそうだが…」

「あの子を心配する気持ちはよくわかります。ですが考えなしに行って逆に遠ざかってしまっては元も子もありません。今は魔族との戦争が終わり少しは落ち着いてきましたがまだ万全とは言えません。しっかりと準備を整えてから行きましょう」

「でも母さん、優華が今絶対に安全な状態かまだわからないだろう!」

「ですが私達が動くことであの子が危険に晒される可能性もあります」

「う……」


そうやって話し合っているときだった。ドタバタと廊下を走る音が聞こえ、ノックもせず扉が開けられた。入ってきたのはこの家の執事長を務める男だった。


「大変です旦那様!」

「どうしたのだ? 執事長」


執事長は父さん以外は見えていないようで、挨拶をする気配はない。普段は冷静沈着な男である執事長がこんなに取り乱す姿を見たことがない。一体何があったのだろうか。


「ファーナーテクスが…ファーナーテクスが一夜にして消滅したとの知らせが!」

「……それは事実なのか?」


宗教国家ファーナーテクスは、人間の国の中でも大国に位置付けられている国だ。帝国から二つ離れた国であり、スフィーダ王国を共に挟んでいる。


「スフィーダ王国からの報告なので信憑性は非常に高いと考えられます!」

「ふむ…スフィーダ王国は他にもなにか言っていたか?」

「はい。各国に事実を伝えるために一度見に来てほしいそうです。それもできたら身分の高い方がいいと」


普段なら信憑性がない状態でイエスなんて言うはずがない。でも優華がいる場所に合法的に行けるなら、俺達の答えは決まっていた。


「では私達が行こう。スフィーダ王国に一番近いのは私達だからな。それに、身分も充分に足りる。王に報告してくれ。私達公爵家が行くと」

「よろしいのですか? わざわざ貴方様が行く必要はないのでは?」

「少しやりたいことがあってな。なに、面倒事にはしない」

「そうですか。では私は王に報告して参ります」

「頼んだぞ」


執事長は最後まで俺達には気付かなかったが、先程よりだいぶ落ち着いたようで、報告に行く足取りには迷いがなかった。


「よし、みんな! スフィーダ王国に行く準備をするぞ!」

「でもすぐに出発はできないからゆっくりと、焦らずにね」


母さんが同意してくれたので早速俺達は準備をすることにした。



【後書き】どうも緋色です。先週からキャラクターのセリフの書き方を少し変えました。違和感を覚えた人も多かったかと思います。今後もこのような体制でいくので、ご了承ください。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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