第16話エルフについてと旅の宿
「一部屋、空いてるか?」
優華が声を掛けると、少女はぽかんと優華を見ながら固まってしまった。数分待てばはっとなって、返事をした。
「はい、空いてます!」
「じゃあ一泊頼めるか?」
「はい! こちらです」
少女の案内に付いていき、宿に入る。何人か優華のことを見ていたが、優華は気にせず少女に付いていった。少女に案内されて来た部屋は普通にきれいで、人一人十分泊まれる大きさだった。
「一泊銀貨二枚です。ご飯は付きません」
銀貨一枚は日本円でだいたい千円だ。一泊二千円はだいぶ安い。それにこの宿は決してボロくなく、掃除も行き届いていて清潔だ。
「わかった。ありがとう」
いいところに泊まろうと思っていた優華だが、下手をしたらここはやわな高い宿よりよほど清潔かもしれない。優華としては正直あまり期待していなかったのだが、とてもいい宿だ。
優華を案内し終えるた少女に代金を渡すと、少女は去っていった。去り際にごゆっくりと言っていたのはポイントが高い。
一人になった優華はさっそく置いてあるベットにダイブした。
「ふふふ、ベッドの品質もいいな。ふかふかだ。さて、明日にはエルフの国に行くが……」
優華は頭の中でエルフの国の長老を思い浮かべる。エルフの長老ははっきり言ってしまえば変人だ。ただ健全な変人なので一応国は大丈夫だ。大丈夫と信じたい……
明日の朝宿を出てから転移する予定になっているが、エルフとはなにか、を少し考えてみる。
エルフとは、優華が生み出したエルフの始祖ハイエルフから生み出された存在だ。この世には属性が存在する。だが、この属性にはこの世界の根幹を担うものがある。一つは人間が使う火や風、水、雷の元である、創造を担う光で、もう一つは魔族が主に使う属性、破壊や終わりを担うする闇だ。この二つの属性を原初の属性と呼ぶとする。
この世界には天界や精霊界、魔界が存在する。天界は主に光だけでできていて、魔界はその逆の闇。精霊界はその二つ両方の性質を持つ、特殊な世界。原初の属性は世界を創造することができる。どちらも本質には創造も破壊も存在する。火が燃えるのも、風が吹き荒れるのも、光の持つ破壊の部分があるからだ。
もちろん闇にも破壊だけではなく創造の部分もあり、宇宙がその最たる例だ。星々一つ一つが闇のエネルギーからその根幹を作り、誕生した。
なぜエルフの話にこの属性が出てきたのかは、この世界に生きる人間以外の生物には光と闇のどちらかが備わっているからだ。
わかりやすいのは魔族の闇だ。魔族は主に闇を操り魔物を使役することができる。それに一番得意なのも闇の魔術だ。大罪魔王達は違うが。
そしてエルフの司る属性は光だ。厳密に言えば光から派生した植物系の魔術を得意としている。戦い方としては主に杖を使い、魔術を行使する。ここで大事なのは距離を詰めたら勝てるとは思わないことだ。エルフは普通に肉弾戦にも強く、なんなら優華が普段から使っている身体強化を使って対応できる。それに魔術自体を至近距離から放つことができる。これだけ言ったらエルフの強さがわかるだろう。
次はエルフ達のいる場所についてだ。エルフ達はエルフの国にいる。そのエルフの国の場所はかつての世界で言うアメリカだ。
そこには世界樹の森という世界の根幹を担う大樹がある。この大樹を世界樹と呼ぶ。その周りに広がる森は精霊が多く住んでいて、多種多様な生物も見られる。その森に住み、その生き物たちを守る者がエルフだ。
要は森の守り人である。ダジャレではない。
そんな彼らなのだが、実はかなりの変人の集まりである。まず彼らの長老が変人だ。
生み出した優華が頭を抱える程の変人なのだ。一応男だ。そいつは幼い体をこよなく愛し、愛し、愛し続ける変態だ。要はロリコンだ。彼はロリを愛している。ロリこそすべて。ロリこそ至高。
そして何を血迷ったのかそんな長老を学んだエルフは全員が全員ロリコンになり、最終的にはエルフはロリコンの集まりになってしまった。
一応被害が出ていないだけまだマシなのかもしれない。被害が出ないのは彼らが無駄に紳士的だからなのだが。彼らはYESロリNOタッチの精神で生きている。なので実害はない。邪な視線に晒されるだけで実害は………ない。ないはずだ。加えて彼らは長寿だ。一人あたり大体千年は生きることができる。そして歳を重ねるごとにロリコン具合は悪化していく。
とりあえずエルフはこんな感じだ。簡単に纏めると、広い森に住み歳を重ねるごとに悪化する変態ロリコン紳士がエルフだ。関係ないのだが、優華は彼らを厄災と呼ぶことにした。間違いではない。
そんな彼らの顔を思い浮かべて、優華はくすりと笑う。
「あの子達は元気にしてるかな…」
変態な彼らだが、悪人ではない。基本誰にでも優しく紳士的に接することができる優しい子なのだ。優華が神に飛ばされる前に会ったときは優しく迎えてくれた。なので優華はエルフ達に会えるのがとても楽しみなのだ。
「おっと、そろそろ時間だな」
空を見るともう日が沈み夜になっていた。神になってからどうも時間感覚がおかしくなるので気を付けたい。
今から優華がするのは魔導具の制作だ。魔導具は主に魔石を用いた便利な道具だ。魔石は属性を付与した石のことだ。人間は魔石の存在を認知してはいないが。ちなみに魔導具を作ることができるのはドワーフと優華だけだ。人間は魔導具をダンジョンから得られる神秘的なものと思っているが優華やドワーフがいらなくなった、または作り過ぎた魔導具を適当に宝箱などに入れているだけだ。人間が少しかわいそうな気がするが、知ったことではない。
今回優華が作るのはちょっとしたものだ。
魔導具づくりを始めて数秒で優華は魔導具を作り上げた。ちなみに魔導具を一番うまく、速く作れるのは優華だ。これを基準にしてはいけない。
優華が作ったのは光と闇から派生した独自属性の温と冷を付与した魔石を使ったものだ。見た目としてはアンティークのランプに近い。
この魔導具の効果は部屋の温度調節だ。魔石の大きさによって温度の調節をできる範囲が変わり、魔導具に取り付けているダイヤルを使うことによって細かな温度に変えることができる。要はミニエアコンみたいなものだ。
これをさらに何個か作る。ある程度できたところで魔導具作りは終わった。
今作っていた魔導具はこの宿に献上する予定だ。こんなにきれいな宿が埋もれているのはもったいないと優華が思ったからだ。なので別に宿の少女が少しでも喜んでくれたらとかそんな考えはない。ないったらない。
「とりあえず、適当に朝まで待つか」
優華は明け方まで魔石をただ作り続けることにした。魔石を作り続けること数時間、朝日が登ってきた。
優華は部屋を出て、受け付けに行く。そこには少女の母親らしき人物がいた。昨日出発する時間を教えたからだろう。
優華は代金とともに、魔導具を用途と使い方を説明して手渡した。さすがに受け取れないと拒否られたが、この宿が素晴らしかったからと言い、無理矢理でも受け取ってもらった。
ちなみにあの魔導具は一度取り付けたら取り付けた者しか外せない仕様になっている。そして何かあったときに優華が気付けるようになっているので窃盗なども防ぐことができ安心だ。
「喜んでくれるといいなぁ……」
優華が渡した魔導具の影響で注目が集まり、接客や清潔さが高く評価され、予約しても泊まれない程に人気の高級宿になることを、優華は知らない。
【後書き】
どうもみなさんこんにちは。スカーレットです。今日から後書きを書こうと思います。これからもぜひ優華の物語を見ていってください。
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