第92話 退院


「よし、もう大丈夫そうだね、」


夜が明けた次の日俺は先生に見てもらっていた


「ありがとうございます」


「酷くはなくなったはずだけど無理はしないようにね、」


「はい、」



「良かったね、退院できて」


「はい、本当良かったです」


唯さんの車に乗り家に向かっていた


酷い沈黙が続いた

いつもならこんなことはなかった

やはり唯さんも気まずいのだろう


「唯さん、文化祭来てくれますか?」


俺が唯さんに質問をし、沈黙を破った

文化祭は今週まで迫ってきている

いつかしなきゃいけないと思いずっと先延ばしにしていた


「私は行っていいの?」


この言葉にどんな意味が含まれているのか想像するのは難しくなかった

だけどあえてそのままの意味で受け取る


「保護者か、家族なら大丈夫です」


「そうなんだ、いつやるの?」


大切なことを伝え忘れていた


「今週の金曜日と日曜日です」


「分かった、行くね楽しみにしてる」


「ありがとうございます」


、、、


そこからまた少しの沈黙

その後唯さんが思い出したように聞いてきた


「準備は大丈夫そうなの?」


唐突に聞かれたのでなんのことだか分からず聞き返してしまう


「準備?」


「文化祭の準備、忙しいの?」


あぁ、文化祭か

と心の中で納得して質問に答える


「なんとか、今日からクラスの人も手伝ってくれるらしいので」


「今日からなの?間に合うの?」


唯さんが心配そうに聞いてきた


「俺も遅いなとは思いました、先生の連絡が遅れてたみたいで」


普通に考えてあんなにバタバタとなることはないと思う

先生意外と適当なんだよな、、


「なるほど、それはしょうがないね、私も文化祭やったな〜もう4.5年くらい前の記憶だけどね」


「唯さんのクラスは何をやったんですか?」


「そうだねぇ、、確か、」


そこからは先程までの沈黙が嘘だったかのように話ができた



「って感じだったよ」


話が一区切りつく頃には唯さんはいつもの唯さんだった

気まずいと思っていたのも俺の勘違いだったのかもしれない




「今日は何する?」


「学校は行かなくていいんですか?」


「退院日だから休むって連絡しちゃった、、行きたかった?まだ9時だから少し遅刻しちゃうけど行けるよ?」


「いえ、逆に嬉しいです」


「そうなの?」


「平日休むのって特別感ないですか?」


「確かにあるね、普段学校があって見られない

テレビとかやってると見ちゃうよね?」


「わかります、でも少し罪悪感感じちゃうんですよね」


「私もそうだったな〜懐かしい、じゃあ今日は家でゴロゴロしようか、」


「はい!」


「よし、そうと決まれば必要なもの買いに行こうか!」


唯さんはいつも以上の笑顔を見せいきいきとしていた

この休みが唯さんとゆっくり過ごせるお見合い前の最後の休みだった


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