第93話 ひとり
一週間という時間はあっという間に経ち
文化祭当日が来た
「実行委員の二人は頑張ってくれたから、当日はゆっくりしてて、」
クラスメイトから暇を与えられた
「でも、俺足やってから何もできてないよ?」
俺は申し訳なくなってクラスメイトにそういった
「けど、その前は頑張ってくれてたじゃん」
ほんの少しの間もなくそう返ってきた
「じゃあお言葉に甘えて、」
「私もー」
俺の声に優愛も意見を合わせる
俺が何もできなくなっても優愛はとても働いていた
少し前までのクラスでの雰囲気を払拭するようにクラスに溶け込んでいた
当日までに準備が終わったのは優愛のおかげと言っても過言ではないだろう
お言葉に甘えるといった手前居づらくなってしまい教室の外に出る
優愛は文化祭準備を通して再び友達ができたのだろう、クラスの色々な人と話しているようだった
カツ、カツ、カツ
松葉杖と床がぶつかる音が廊下に響く
色々な教室を通り過ぎるたびに中を横目で見てしまう
準備が終わった達成感に浸っているクラスもあれば
本番に向けてクラス全体で円陣を組んでいるクラスもある、
堅物そうな先生が担任をしているクラスは先生がありがた〜い話をしているようだが目先の文化祭に思いを馳せていて聞いている人はほとんどいないようだった
カツ、カツ、カツ
クラスメイトは善意で言ってくれたのだと思うが
こう周りが静かだと体よく仲間はずれにされたのだと錯覚してしまいそうになる
特に行くところはなかった故自然に足がとある場所に向かってしまう
「はぁ、」
何故か出てきたため息をこぼしながら
あの日裕翔と喧嘩をし、
あの日優愛と仲直りをした
空き教室に入った
「何やってんだろ、俺」
色々考えすぎてしまい出てきそうになった涙をこらえながら窓の外を眺めた
窓の外からはズラッと車が並んだ校庭が見えた
まだ受付開始一時間前だというのに校庭の半分ほどはもう埋まっていた
普段あまり親が自分に関心がないと思うことはないがこういうイベントのときは毎回親が見に来ていることを期待して探し、結局来ていなくて落ち込む
ということが小学校からの恒例行事となっている
見ていても気分が良くないので窓から離れ
てきとうに置いてあった椅子に腰掛けた
「バカバカしいな、」
突然今まで頑張ってきた自分に腹がたってきた
そして、今までの自分の頑張りを否定している自分に悲しくなってきた
「最近はだめだなぁ」
ここ最近涙腺が弱くなってしまったようで些細なことで涙が出てしまう
今回も自分の心に溜まった色々なものを吐き出すように涙が出てきてしまった
文化祭というイベントの日に空き教室に一人でいることを誰にも知られたくなかったので声を殺して
泣いた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます